なんか最近、情報商材のメールがたくさん来ます。ちょっと興味があったので、彼らについて調べてみました。
不思議なほど似ている彼ら
彼らって不思議なほど「似ている」んですよね。一種の様式美すら感じるほどです。
たとえば、彼らは「月収」「日収」を強調します。プロフィール検索ツール「twpro」で「起業家 万円」と検索すると、170件ほど見つかりました。
18歳から自営業を始め、栄光と挫折を経験し19歳で抱えた借金は800万円超え。しかし、そこからネットビジネスの世界に参入し、8ヶ月で月収1200万円を達成する。「一生金髪宣言」という型破りな金髪の起業家。2012年10月、現在のコンサル生は200人を超え、稼がせることを第1に考えたメルマガを発信している。
起業家コンサルタント 鈴木英広(@suzuki_hidehiro)さん。
日米で3社管理。サラリーマンを辞めて1週間で利益508万円。元東電マン。上場企業勤務中に輸入ビジネスを始め、1年であっさり独立。インターネットを利用し、輸出入、起業家支援、副業コンサルなどのサービスを展開中。ネットショップも7店舗管理。起業家万歳!
Tweetライダー@中田ゆうだい(@yudai_nakata)さん。
25歳。ネット起業家。NYC代表。 月収22万円のリーマンなんて11ヶ月で辞めてやりました。時給はようやく昔の30倍を達成。 友人に『見た目良い人そうやのにめっちゃ口悪い』と言われますが、素直なだけです(笑)あ、来年に世界一周行ってきまーす。
成功習慣メソッドコーチ二宮健治(@Music_kenken)さん。
29歳の時にホームレスになり、人生のどん底を経験し、 その後わずか半年で、ホームレスから起業家に転身。 起業準備わずか75日、資金・時間・人脈ほとんどなく、見込み客0人でわずか75日でクライアント7人、収益40万円を達成した、目標達成の為の、成功習慣メソッドをサポートしています!!
元電通マンの起業家。組織に縛られずに、自由とお金を手にする個人を育成し、日本をより良くしていきたいと考えております。共に、日本を変えましょう!! ※月収300万円ノウハウを無料で公開しています ⇒ http://t.co/g7XHhMYAIW
超ブラックなアパレル会社で働き将来がないことに不安を感じネットと自宅で出来る副業を探す。働きながらも月5万円稼げたのでそれを機に退職。本気で取り組みその後1年半で株式会社を設立。今はノートPC片手に旅行しながら会社運営していま~す! プロフィールの詳細⇒http://t.co/Zfs6NbDU
・・・まじかよ。元金融機関社畜24歳。リストラを目の当たりにし、減らされるボーナス、安定はどこにもないと体感。そしてネット起業に出会い没頭。日給13万円稼ぐところまで来た。胡散臭いでは切り捨てれない世界だと痛感。ぜひ興味あったらブログ見てください!
http://goo.gl/SV2qn
という感じで、共通性が見えてきますね。さらにサイトやツイートを見ていくと、
・「どん底」からの成功というストーリーを強調する
・「起業」「自由」を強調する
・amebloユーザーが多い
・改行が多い
・メルマガへ誘導する
・名言を引用する
・業界の著名人を師事している旨を強調する
・ITリテラシーが低そう
・動画で語る
などなどの様式が浮き上がってきます。
ヤンキー的様式美と小さなカタルシス
ぼくは情報商材ビジネスについてはこれといって強い意見を持っているわけではないですが、なんというか、彼らには抗えない不思議な魅力があるように感じるんですよね。
いや、彼らのビジネスが魅力的で自分も取り組んでみたい!とかそういう話ではありません。その「奇矯さ」をつい楽しんでしまうのです。情報商材のメールが来ると、一瞬「またか…」とうんざりする反面、つい「どれどれ」とリンク先を踏んでしまう自分がいるんです。クリックして、与沢翼氏がどどーんと出てきたり、「決断して下さい」とか煽られると、なんとも言えない楽しさに襲われます。
タイトルに戻ると、この感じって、「ヤンキー」を見る気分となんか似ているんですよね。あれもまた、奇矯さに惹かれて、つい見てしまうじゃないですか。情報商材系の人もまた、似たような奇矯さがあるように思うのです。
ヤンキーの特徴はまさに「様式美」にあると言われます。彼らは野放図な存在に見えますが、その実、文化的な規範意識に非常に強く縛られています。
誰を見ても同じような格好や言葉遣いをしていることからも、それは明白です。自由なようで、まったく自由ではない。だから、「氣志團」のようなパロディが成立するわけですね。
で、こういった「様式美」というものは、人の心を落ち着かせる効果があると思うんですよね。「異質な集団を目の前にしているのに、誰を見ても似ている」という状況は、言語化されることはないですが、観察するものに、「あぁ、予想を裏切らないな…!」という小さなカタルシスを与えるように感じるのです。何でしょうね、人はやっぱり予想を裏切らないものを見ると、安心するのかもしれません。
少なくとも、ぼくがヤンキー的なものに魅力を感じるあり方と、情報商材系の方々に魅力を感じるあり方は、その様式美という点で、共通しているように感じます。「あぁ、やっぱり…!」というカタルシス。それは難解な推理小説の読みが当たった時の、1000分の1くらいのごくごく小さなカタルシスです。
さらに言うと、ヤンキー的・様式美と情報商材的・様式美の間には、「末端の肥大化」という美意識も見られます。
ヤンキー的センスは「何事も極端」として知られていますが、そのあらわれの一つとして、「末端を肥大化する」という行為があります。(酒井)
ヤンキーにおいては、物理的・外観的な側面で「末端を肥大化」させます。リーゼントとか、改造マフラーとか。
情報商材においては、金銭的・内面的な側面で「末端を肥大化」させます。「人生のどん底」とか、「PCを立ち上げるだけで日給10万円」とか。
この「末端の肥大化」は、「おいおい、そこまでやっちゃっていいのか!?」というかたちで、観客を「煽る」効果をもたらします。
しかし、彼らはその様式美を打ち破ることはありません。暴走するヤンキーたちは、何の改造もしていないプリウスに乗ることはないでしょう。情報商材系の人々が、ぼくのようなまどろっこしいブログを書くことはないでしょう。
彼らは「末端を肥大化」させ、観客を煽ってはいれど、つねに観客の予想の範囲にしっかりと収まるので、やっぱり小さなカタルシスを与えてくれるのです。動的なのに静的、静的なのに動的というパラドックスを含んでいるともいえます。
「悪いこと」をしている
また、ヤンキーと情報商材の共通点としては、この双方が「一般的には悪いと考えられていることに手を染めている」という点にもあるでしょう。
「情報商材が悪いと思われている」という命題には異論もあるとは思いますが、少なくともぼくの知る範囲では、「詐欺」「マルチ」といったイメージを結びついている印象があります。Googleのサジェストでも一番上に「詐欺」が出てきますし、それなりに流布している印象といってもよいでしょう。
悪漢小説(ピカレスク)というジャンルがあるように、ぼくらは他人が悪事を犯すことに対して、やはり強い魅力を感じてしまいます。ヤンキーも情報商材も、生きるピカレスクとしての機能を果たしているのかもしれません。
…というわけで、情報商材の人たちに感じる不思議な魅力について分析してみました。ふー、なんとなくすっきりした。みなさんのご高察もぜひ拝聴したいです。