フランス:ナチスが虐殺の村、独大統領が訪問
毎日新聞 2013年09月04日 23時18分(最終更新 09月05日 00時17分)
【パリ宮川裕章、ベルリン篠田航一】第二次世界大戦中のドイツ占領下で、ナチス親衛隊が住民642人を虐殺する事件があったフランス中部オラドゥール村を、ドイツのガウク大統領が4日、独首脳として戦後初めて訪問し、オランド仏大統領とともに現存する当時の廃虚で犠牲者を追悼した。1963年に締結された独仏友好条約(エリゼ条約)50周年の節目に、住民感情からこれまで独首脳の訪問を拒否していた村が受け入れた。両国メディアは戦後和解を象徴する「歴史的な旅」と位置付けている。
両大統領は事件の生存者の手を取って廃虚を歩き、花を手向けた。ガウク大統領は「この罪はドイツによってなされた。ドイツ大統領として、それがフランス国民、そして生存者にどのような意味を持つのかを痛切に感じる。あなたたちが、和解への意思をもって共に前進してくれることに、すべてのドイツ人の名において感謝したい」と述べた。そのうえで「私たちはオラドゥール、そして他の蛮行の地の名を決して忘れない」と約束した。
オランド大統領は「あなたが今日ここにいることこそが、過去のドイツの残酷な行為を直視する現在のドイツの尊厳だ」と語った。 事件は1944年6月10日、ナチス親衛隊120人が村の住民を食料倉庫や教会に誘導して閉じ込め、機関銃の一斉射撃と放火で虐殺した。犠牲者642人は当時の村の全人口に近く、生存者は6人だった。ナチス抵抗運動レジスタンスのメンバーが武器を隠しているなどの誤った情報が原因とみられている。