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政治
【主張】民主党と憲法 改正案は再生の試金石だ
党再生を模索中の民主党が、政策部門に6つの総合調査会を設け、重要政策への取り組みを強化するという。注目したいのは、海江田万里代表直属の憲法総合調査会で、憲法改正条文を作成するとした点だ。
国のかたちを示す憲法をめぐり、民主党は本格的な議論を避けてきた。護憲派勢力を抱え、党が分裂するのを避けるためだが、これでは政党としての明確な国家ビジョンを持たないに等しい。
憲法を「党再生の基礎」と位置付けたのは妥当だが、海江田氏には条文化をやりとげる覚悟を問いたい。執行部責任を回避するため目先を変えたつもりなら、もはやこの党に明日はない。
組織再編とあわせてまとめられた参院選の総括文書では、自らを「拒否されている政党」と位置付け、党代表らトップの発信力の弱さも指摘した。
必要なのは、言葉ではなく、欠けていた主要政策の論議に取り組み、結論を出すことだ。民主党政権が迷走し、国益を大きく損なった原因を取り除かなければ、受け皿を目指すことは困難だ。
民主党は平成17年に「憲法提言」をまとめて以降、党内の憲法論議は停滞し、改正への具体的な方針も定めてこなかった。条文化により、すでに憲法改正草案をまとめている自民党などとの突っ込んだ論戦も可能になる。
議論にあたり民主党議員に留意してほしい点がある。「憲法提言」を出した当時と現在までの間に、軍拡を進める中国の海洋進出など安全保障環境が急激に悪化したことだ。東日本大震災の発生も加味しなければならない。
国民の生命・財産や、領土・領海・領空など国の主権を守るため、防衛力の充実や日米同盟の強化は切実な課題だ。その実現には、集団的自衛権の行使など憲法問題が密接にかかわっている。
「憲法提言」は「制約された自衛権」を強調している。集団的自衛権の行使どころか、個別的自衛権まで極力抑制する考え方で、抑止力強化という問題意識はない。これで国を守れるのか。
東日本大震災で、現憲法に緊急事態条項がない欠陥が改めて浮き彫りとなった。危機管理の視点も「憲法提言」には欠けている。
憲法も主要政策も、危機に対処できる現実的な議論の積み重ねが民主党に最も必要なものだ。
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