鈍る海外マネー流入、アベノミクス先行期待のはく落「鮮明に」
[東京 5日 ロイター] - 今年7月の参院選以降、海外マネーの日本市場への流入が鈍ってきた。財務省が発表した対外体内証券投資によると、8月末にかけた1週間の海外勢による日本株買いは、連休などを除く5営業日ベースでは今年2月以来半年ぶりの低水準だった。
市場では「先行期待のはく落が鮮明になってきた」(邦銀)と、今後の動きを警戒する声が出ている。
5日午前の東京市場は小動きが続いた。日経平均は、外為市場で1ドル99円台後半と円安水準で推移していることを手掛かりに、買いが先行したが、「週初からの上昇ピッチが速く上値を買う投資家は少ない」(準大手証券トレーダー)といい、戻り待ちの売りや利益確定売りに押された。
心理的節目の1万4000円を維持し、値動きそのものは底堅い展開が続いた。「日銀の当座預金残高がお盆明けから再び増加し始め、足元で過去最高を更新している。異次元緩和の効果が再評価されており、ドル高/円安の進行が日本株の下値を支えている。
ドル100円回復となれば雰囲気が変わり、株価も戻りを一段と試す展開が期待される」(東海東京調査センター・チーフストラテジストの隅谷俊夫氏)と、市場では一段高を期待する声も出ている。
もっともこれまでの急ピッチな株高を主導した海外勢の動きはなお鈍い。
財務省が5日発表した8月25日─31日の対外及び対内証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース)によると、海外勢の国内株式取得は6兆円を下回り、祝日で営業日が少ない週を除いた5営業日ベースでは半年ぶりの低水準となった。
取得は5兆8017億円、処分は5兆9767億円にとどまり、取得、処分ともに5営業日ベースでは2月17─23日の週以来の低水準となり、海外勢の間ではアベノミクスへの熱が冷めつつあり、それが数字にも表れた、との見方が市場では出ている。
「参議院選挙以降、アベノミクスに大きな動きがないため海外勢による資金流入が細っている。臨時国会で法人税引き下げや成長戦略などを上乗せしないと海外資金は戻ってこない」と、東海東京調査センターの隅谷氏は言う。
「アベノミクスへの先行期待がはげ落ちてきた。参院選以降は債券市場への資金流入も細っており、取引自体が膨らまない状況が続いている」と、別の邦銀関係者は言う。
<日銀会合は材料視せず>
日銀は4、5日の金融政策決定会合で現行の金融政策を据え置いた。「景気は緩やかに回復している」と景気判断を上方修正したことで、円がやや売られる場面もあったが、市場全体としては材料視する雰囲気はない。
目先の注目材料は黒田日銀総裁が消費増税と金融緩和の関係についてどのような見解を示すか。JPモルガン・チェース銀チーフFXストラテジストの棚瀬順哉氏は「日銀は予想通り金融政策を据え置いた。この後の会見で消費税増税と金融緩和の関係について、黒田総裁がどのような見解を表明するかに注目したい。
ここ2―3カ月、世界の市場参加者は新興国市場に注目する一方で、日本の材料にはあまり反応しなくなっていたが、今週は、若干日本の材料に反応がみられるようになっている」と話す。
(山口 貴也 編集:内田慎一)
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