G20、米緩和縮小への対応で共通認識醸成に苦慮
[サンクトペテルブルク 5日 ロイター] - ロシアのサンクトペテルブルクで5日から2日間の日程で開幕した20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)では、米量的緩和縮小観測の高まりに伴う世界的な金融市場の動揺への対応について、先進国と新興国は立場の相違から共通認識の醸成に苦慮している。
G20は2009年の世界的な金融危機への対処で主導的な役割を発揮。ただ現在は、米国で景気回復の勢いが加速する一方、欧州の回復の足取りは鈍く、新興国からは緩和縮小観測のあおりを受け資金が流出するなど、経済情勢は一様でなく、G20各国の間で立場の食い違いが出ている。
主催国ロシアのプーチン大統領はサミットの席上、「世界経済を安定的かつ均衡のとれた成長に回帰させることがわれわれの主要課題だ」とし、「この課題はまだ解決されていないため、システミックリスクや危機が一気に再発しかねない状況が残っている」と述べた。
<緩和縮小の負の波及効果>
プーチン大統領は、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策に起因するリスクに直接言及することは避けたものの、G20サミットに合わせて首脳会議を開いたブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5カ国(BRICS)は、「金融政策の最終的な正常化は、効果的かつ慎重に調整し、明確に意思を伝達した上で行われる必要がある」との声明を発表、米緩和縮小に対する懸念を表明した。
BRICS首脳はこの日、5カ国が為替相場の安定を目的に創設する外貨準備基金の規模を1000億ドルに設定することで合意。拠出金の内訳は、中国が410億ドル、ブラジル、インド、ロシアがそれぞれ180億ドル、南アフリカが50億ドルとした。
ただ基金の規模は想定の2400億ドルより小さく、稼働開始までしばらく時間がかかると見られている。
BRICS首脳の声明の文言は、7月にモスクワで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議での合意内容を踏襲。ロシアのストルチャク財務次官は、サミット終了後に採択される声明でも、「負の波及効果」に関する部分の文言はモスクワG20の合意内容が踏襲されるとの見通しを示している。
中国は、緩和縮小の影響について米国に対し「波及する影響に気を配り、世界的な金融市場の安定と世界経済の安定的な回復に貢献する」よう要請。中国財政省の朱光耀次官は、欧州諸国に対しても経済成長回復に向け一段の努力を行うよう訴えた。
同財政次官は記者団に対し「構造問題は解決から程遠く、今傲慢になる時ではない」と述べた。
一方米国は、新興国は内需を拡大させる必要があるとの立場を示した。
欧州中央銀行(ECB)はこの日、主要政策金利であるリファイナンス金利を過去最低水準の0.5%に据え置くことを決定。景気回復支援に向け、必要なら追加利下げや流動性供給を行う用意があるとの立場も表明した。
ECBの決定発表後、ドイツのメルケル首相は、緩和的な金融政策は経済に混乱を招くことなく段階的に調整される必要があるとの見解を示している。
<債務削減へのコミットメント>
先進国が抱える膨大な公的債務に対しても、新興国の間から削減を求める声が相次いだ。
プーチン大統領は、「白熱した議論の末、財政緊縮と成長支援との間の最適なバランスを模索する必要があるとの共通認識が生まれてきた」と述べ、水面下で激しい議論が行われていることを示唆した。
<規制問題>
このほかG20首脳は、国境を越えた税逃れ阻止に向けた措置や、金融監督の強化、デリバティブ(金融派生商品)の規制などに関する取り組みで合意する見通し。
ただG20関係筋は、シャドーバンキング(影の銀行)の規制強化に対する全体的な意思は後退しているとしている。
<シリア懸念>
今回のサミットは、化学兵器使用疑惑が持たれているシリアに対する軍事介入の是非が討議されるなかでの開催となった。G20首脳は夕食会の席上、安全保障問題について話し合う。
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先進国と新興国の立場に相違
ロシアで開幕したG20サミットでは、米緩和縮小への対応について、先進国と新興国が共通認識の醸成に苦慮している。
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