ドラギ総裁:ECBに行動の用意-上昇する市場金利を厳重警戒
9月5日(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は5日、当局者らには「行動する用意がある」と言明した。政策金利を低水準で維持するとの中銀ガイダンスにもかかわらず短期金融市場で上昇する金利への警戒姿勢を鮮明にした。
総裁は政策決定後の記者会見で、「このような展開が金融政策姿勢に及ぼし得る影響を特に注視していく」と述べた。ECBは政策金利 を過去最低の0.5%で据え置いた。「景気回復について私は極度に慎重な見方をしている。熱狂する気にはなれない。回復は始まったばかりでその芽はあまりにも青い」と、市場金利を押し上げる回復への過剰な期待にくぎを刺した。
ドラギ総裁は政策金利を長期にわたり低水準に据え置くとの中銀の約束を市場に信用させようと努めているものの、市場見通しを反映する金利は同総裁が先月に「妥当でない」と指摘した水準付近まで上昇している。
コメルツ銀行の金利戦略責任者、クリストフ・リーガー氏は「会見内容は予想よりもややハト派的だった。ECBはフォワードレート上昇に立ち向かうための利下げに近づいている」とコメントした。
ユーロ圏無担保翌日物平均金利(EONIA)のフォワードレート が示す2014年8月のECB会合時点の銀行間翌日物金利の市場見通しはフランクフルト時間午後5時45分現在、0.31%と総裁が低金利維持を言明した7月4日より前の水準に戻っている。ガイダンスを受けて同月8日には0.09%まで下がっていた。ドラギ総裁の発言を受け、ユーロの対ドル相場はこの日一時0.3%下落した。
過剰流動性ECBが3年物リファイナンスオペ(LTRO)で供給した資金を銀行が返済するのに伴い、ユーロ圏の銀行システム内の過剰流動性は減っている。ドラギ総裁は、返済は「金融市場の信頼感回復や市場分断の一部解消、レバレッジを下げる域内銀行の動きを反映している」とし、「現時点では流動性の水準は十分だと考えているが、行動する用意は常にある」と述べた。
利下げについては議論したものの、一部委員は景気回復がそのような議論を正当化しないだろうとの見解を示し、他の委員らは回復はまだ芽生えたばかりだと指摘したとして、意見が分かれていることを示唆した。
ECBはこの日最新の景気予想を公表。今年の成長率をマイナス0.4%と予想し、従来見通しのマイナス0.6%から上方修正した。14年の予想はプラス1%成長と、6月時点予想の1.1%から引き下げた。インフレ率は今年の予想が1.5%(従来1.4%)に引き上げられ、来年については1.3%で据え置かれた。
BNPパリバのユーロ圏市場エコノミスト、ケン・ワトレット氏は、政策委員の間で意見の相違があるようだが「ハト派的な見方の委員の方が多いようだ」と述べた。
ドラギ総裁は会見で、景気は「緩慢なペースで」回復するとの見通しを示し、「7月のガイダンスで示した通り、ECBの金融政策は必要な限り緩和的にとどまる。リスクは引き続き下方向だ」と慎重姿勢を崩さなかった。
原題:Draghi Says ECB Officials Ready to Act as Market RatesRise (3)(抜粋)
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更新日時: 2013/09/06 01:53 JST