黒田日銀総裁が増税対応に柔軟姿勢、初夏にかけてヤマ場か
[東京 5日 ロイター] - 10月上旬に迫った安倍晋三首相による消費増税判断を控え、黒田東彦日銀総裁は、増税の影響で経済・物価が下振れた場合、柔軟に政策対応する姿勢をあらためて示した。事前に政策余地を示すことで、予定通りの消費増税決断を促した格好だ。
増税が実施された場合、経済・物価情勢によっては、来年の初夏にかけて金融政策対応を判断する可能性も出てきそうだ。
消費増税の先送りで財政への信認が揺らぎ、国債価格が下落すれば財政政策でも金融政策でも対応は極めて困難になる--。黒田総裁はこの日の記者会見で、消費増税が先送りされた場合のリスクについて、連日出席した政府関係者と有識者による「集中点検会合」での発言内容を自ら紹介し、こう力説した。増税先送りの影響は「見通し難い」ものの、財政の信認低下に伴う長期金利急騰という制御不能なリスクが存在するとの指摘だ。
一方、予定通りの消費増税に伴う景気の下振れリスクには「財政政策で対応できる」と述べるとともに、金融政策についても「2%の物価安定目標に対する下方リスクが顕在化すれば適切な対応をとる」と言及。あくまで2%の物価目標の実現性との関係で判断すると繰り返したが、予定通りの増税によって想定を上回る経済・物価への悪影響が生じた場合には、追加緩和も辞さない姿勢をにじませた。
日銀では、消費増税を予定通り実施しても、所得から支出へという景気の前向きな循環メカニズムは維持されるとともに、潜在成長率を上回る成長が確保できると見込んでいる。このため、需給ギャップ改善などで物価は目標の2%に向かって上昇していくとみている。
黒田総裁は消費増税の是非について「政府が経済状況を勘案して判断すること」と明言を避けたが、予定通りの増税で想定されるリスクシナリオにあえて言及し、その場合の政策余地にも踏み込んだ。
国債の大規模な買い入れで金利に低下圧力をかけ続ける現行の異次元緩和は、財政の信認維持が生命線。金融緩和の効果持続のためにも予定通りの消費増税を安倍首相に求めたかたちだが、「戦力の逐次投入はしない」としてきた黒田総裁の柔軟発言は、来年4月以降、早い時期での金融政策対応の可能性を含んでいる、との受け止めもできる。
(伊藤純夫 編集 橋本浩)
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