UPDATE 2-予定通りの消費増税で景気腰折れリスク顕在化なら対応=黒田日銀総裁
(内容を追加しました)
[東京 5日 ロイター] - 黒田東彦日銀総裁は5日の金融政策決定会合後の記者会見で、来年4月に消費税を予定通り3%引き上げた結果、2%の物価目標を達成が難しくなるリスクが顕在化した場合は、追加緩和を辞さない姿勢を明確にした。増税先送りなどで金利が急上昇すれば財政・金融政策による対応が難しいとして、財政の信認に傷がつくリスクを強調した。
<国債下落・金利上昇なら対応困難>
黒田総裁は安倍晋三首相が10月初旬に決める消費増税をめぐり、予定通りに2014年4月に8%、15年に10%に引き上げても、設備投資や所得が増える「景気の前向きの循環メカニズムは維持される」との立場を強調した。
ただ、増税の結果「今の時点では景気が腰折れるとは思っていないものの、(景気が下振れる)リスクが顕在化するなら対応する」とし、追加緩和に対して柔軟な姿勢を示した。2年程度で2%の物価上昇率を目指す目標を実現するうえで、物価が目標に届きにくい「下方リスクが顕在化すれば、当然適切な対応を取る」との政策姿勢も繰り返した。
黒田総裁は4月にマネタリーベース(資金供給量)を倍増させる未曽有の金融緩和を打ち出した際、「戦力の逐次投入はしない」として、多少景気が下振れても追加緩和に動かない姿勢を強調していたが、消費増税の影響が不透明ななかで、柔軟姿勢に方針転換したようにみられる。
一方、総裁は「消費増税の実施を先送りした場合、国債や株式市場への影響は不確実性が大きい」と指摘。政府が先週開催した「集中点検会合」で、「先送りにより国債価格が大幅に下落(金利は上昇)するリスクは、それほど大きくないかもしれないが、リスクが顕現化すれば対応は非常に難しくなる」と警告したことも明らかにした。財政への信認が低下し金利が急上昇すれば「財政出動、金融政策ともに対応余地が極めて限られる」と強調した。
「財政への信認失われれば、国として極めて困難な状況に陥りかねない」とし、政府に対し、持続的な財政構造を確立するための取り組みを期待した。
首相のブレーンや点検会合の出席者らの間で浮上している毎年1%ずつの増税など法改正を伴う、異なる増税案の変更については、「私の意見という訳ではない」としつつも「一度決めたことと違うことをやる場合、市場が信認するかわからない」と慎重な見解を披露した。
<景気に前向きのメカニズム、シリア情勢注視>
日銀は同日の決定会合で景気の判断を従来の「緩やかに回復しつつある」から「緩やかに回復している」に上方修正、リーマン・ショック以降もっとも強い表現とした。
黒田総裁は「所得から支出など家計・企業双方で前向きの循環メカニズムが次第にしっかり働き始めている」と説明。4─6月期の法人企業統計で設備投資の持ち直しが明らかになったことや失業率の低下やボーナス・残業代の上昇などを反映した格好だ。また 「企業収益の改善はかなり続くとみられる」とし「生産・支出・所得の循環メカニズムは働いていくだろう」と指摘した。
7月の消費者物価指数が生鮮食品を除くベースで前年比0.7%上昇し、4年8カ月ぶりの水準となっており、「われわれが考えているテンポで物価は徐々に上昇している」と指摘した。
海外経済のリスクについては、欧州と中国がやや改善、他の新興国などがやや悪化、合わせて大きく変わらないとの見立てだ。その中で「シリア情勢の国際金融市場への影響は十分注視していきたい」と述べた。
黒田総裁は8月末に米ワイオミング州ジャクソンホールでの講演で、金融緩和が自然利子率(潜在成長率)の引き上げにも効果をもたらすと述べ、市場関係者の間で話題になっていた。白川方明前総裁の体制で日銀は、金融緩和により潜在成長率を引き上げるのは難しいとの立場を取っていたためだ。黒田総裁はこの点について、「金融緩和は、自然利子率にも働きかける効果が若干ある」としつつ、期待インフレ率の引き上げと名目金利の押し下げで実質金利を引き下げ投資や消費を促進するのが主たる効果と説明した。
© Thomson Reuters 2013 All rights reserved.
TPPの年内妥結で一致
日米首脳会談が開かれ、TPPの年内妥結で一致。シリア問題に関して安倍首相は、米大統領と協力していく考えを示した。
記事の全文 | 特集ページ