日銀会合は政策据え置き、量的・質的緩和の効果見極め-景気判断前進
9月5日(ブルームバーグ):日本銀行は5日開いた金融政策決定会合で、政策方針の現状維持を全員一致で決定した。足元の景気については「緩やかに回復している」として、2カ月ぶりに判断を前進させた。日銀は当面、4月に打ち出した量的・質的金融緩和を着実に進め、その効果を見極める構えだ。
会合では「マネタリーベースが年間約60兆-70兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う」方針を据え置いた。資産の買い入れ額も、長期国債はじめ、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)、コマーシャル・ペーパー(CP)、社債など、いずれも据え置いた。ブルームバーグ・ニュースがエコノミスト32人を対象に行った事前調査では、全員が現状維持を予想していた。
7月の消費者物価指数(生鮮食品を除いたコアCPI)は前年比0.7%上昇と2カ月連続プラスとなり、上昇幅も事前予想を上回った。シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは決定会合前、「コアCPIは年末にかけて1%程度まで加速する公算が大きい」と指摘。「景気・物価が大枠で日銀のシナリオに沿って推移しているほか、長期金利も安定しているため、政策据え置きが予想される」としていた。
追加緩和予想時期は年内が1人、来年1-3月が9人、来年4-6月が13人と最多。来年7月以降、ないし追加緩和なしとの回答が9人だった。日銀は来年4月末に「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を策定し、2016年度までの経済・物価の見通しを示す。
2%実現を強弁し続けられるかSMBC日興証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは「追加緩和のタイミングは異次元緩和決定から1年経過時が鬼門。予定通り消費税引き上げが実施されれば、補正予算とともに金融緩和のサポートが必要との見方もされやすい」と指摘。さらに、来年4月の展望リポートで「15年度以降のコアCPIで良い物価高を描けなければ、追加緩和を検討すべきとの意見が強まろう」という。
東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは「来年1月の中間レビューから4月の展望リポートにかけて、15年度までの残り時間が徐々に短くなってくるため、インフレ目標達成を強弁し続けられるか、危うさが出てくる」と指摘。「消費税が4月から引き上げられる場合、駆け込み消費の反動減が4月以降に現れると政府が警戒するため、日銀は追加緩和を求められる可能性がある」とみる。
マネタリーベースの伸び率の変化に注目する向きもある。ソシエテジェネラル証券の会田卓司チーフエコノミストは「マネタリーベースの伸び率は現在の40%程度から来年2、3月に60%程度まで高まる。しかし、そこでピークアウトしてしまい、来年12月末に向け30%程度へ逓減していくことになる。消費税率引き上げによる景気下押しが懸念される局面でもある」と指摘。
その上で「マネタリーベースの伸び率の逓減が始まる2014年4-6月期か、それに前もって備えるため、1-3月に14年末のコミットメントを強くするのか、15年まで長期化するのか、日銀は対応を迫られる可能性がある」としている。
木内委員は独自提案木内登英審議委員は前会合に続き、2%の物価安定目標の実現は「中長期的に目指す」とした上で、量的・質的金融緩和を「2年間程度の集中対応措置と位置付ける」提案を行ったが、8対1の反対多数で否決された。日銀は4月4日の会合で、目標実現については2年程度を念頭に置いて「できるだけ早期に」、緩和期間では、目標を安定的に持続するために「必要な時点まで継続する」と表明した。
黒田東彦総裁は午後3時半に定例記者会見を行う。議事要旨は10月9日に公表される。決定会合や金融経済月報などの予定は日銀がウェブサイトで公表している。
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更新日時: 2013/09/05 11:45 JST