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文部科学省が4月に実施した「全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)」の結果が8月27日に発表され、テスト実施の是非をめぐって議論が活発化しています。
全国学力テストは、子どもの学力低下が指摘された2007年から、学校教育の成果の検証や指導の改善に役立てることを目的に始められたもので、今年で6回目を数えます。4年ぶりに小学校6年生と中学校3年生の全員を対象に、国語と算数・数学で実施されました。
学校別の成績公表につながるか
その結果、都道府県別でこれまで上位を占めてきた秋田県や福井県などが好成績を収めた一方で、小学校では、最も正答率が低い都道府県と全国平均の差が、初めて5ポイント以内に縮まりました。結果だけを見れば、低迷していた地域の取り組みが功を奏し、学力はある程度、底上げされたと言えるのかもしれません。しかし、テスト実施については、従来からさまざまな問題点が指摘されており、メディアの中でも賛否が分かれています。
問題の1つは、成績の扱い方です。文科省は都道府県や市町村の教育委員会に対し、学校別に公表することを禁じていますが、公表を希望している自治体もあります。文科省は自治体の裁量に委ねることも検討しており、そうなれば公表に踏み切る可能性が出てきます。全国学力テストは1960年代にも実施されていましたが、学校や地域間の競争と序列化が過熱して廃止された経緯があり、「“学力低下批判”をきっかけに復活した近年の学力調査が、同じ轍を踏まない保証はない」と、東京新聞(8/28付)では懸念を伝えています。
全員参加が必要か
2つめは、全員参加方式の是非です。学力の全体傾向をつかむには一部の抽出調査で十分と言われ、民主党政権時には抽出方式が採用されました。今回のテストは、55億円の巨費を投じて全員参加方式で実施されましたが、「基礎知識の問題はできるが、応用が苦手」という傾向は従来と変わらず、毎日新聞は、「毎回同様の傾向を確認するためのような連続調査が必要か。一定年の間隔で抽出調査することで的確な把握は可能だろう」と、全員参加方式を批判しています(8/28付)。
一方で、テスト結果は学力向上に生かせるとして、読売新聞社説では「成績が振るわなかった学校に教師を手厚く配置するなど、自治体はテスト結果を教育施策に活用できる。今後も全員参加方式を継続し、学力を検証していきたい」と、評価しています(8/29付)。
賛否両論ある中で、文科省は、全国学力テストが「一人ひとりの子どもたちの指導資料になる」と評価し、来年も全員調査を実施するとしています。