クローズアップ2013:婚外子差別、違憲判断 家族観の多様化、反映

毎日新聞 2013年09月05日 東京朝刊

未婚のシングルマザー数の推移=2013年9月5日
未婚のシングルマザー数の推移=2013年9月5日
父の遺産が1200万円だった時の母子の法定相続分(イメージ)=2013年9月5日
父の遺産が1200万円だった時の母子の法定相続分(イメージ)=2013年9月5日

 一方で、決定は違憲判断による他の相続への影響にも配慮し、「違憲判断は確定した裁判や調停などに影響は及ぼさない」と線引きした。今回違憲と判断されたのは01年7月と11月に被相続人が死亡した遺産分割。この時期以降に現行の規定に沿って既に相続を決着させた婚外子側が、新たな判断に沿う形で改めて遺産分割をやり直すよう求める可能性があり、混乱も予想されるため、法的安定性を重視したと言える。金築誠志(かねつきせいし)裁判官は補足意見で「過去にさかのぼって(他の裁判などに)影響するのが原則だが、法や法適用の安定性を害するときは例外が許されてよい」と付言した。

 最高裁家庭局によると、12年末現在、遺産分割を巡り全国の家裁に係属中の審判や調停は計1万1224件。このうち婚外子の格差規定が問題となっているのは176件だ。

 ある婚外子の50代女性は最高裁の示した線引きについて「混乱回避のためには仕方ないが、不満に感じる人はいると思う」と話す。混乱回避の判断は、新たな不公平感を生む可能性もありそうだ。【和田武士】

 ◇民法改正、腰重い自民 保守系議員、高い壁

 最高裁の違憲判断を受け、政府は民法改正に着手する。菅義偉官房長官は4日の記者会見で「できる限り早く対応する」と述べ、秋の臨時国会への法案提出に前向きな考えを示した。谷垣禎一法相も「いたずらな混乱を生じさせてはいけない」と改正に意欲を見せた。だが「伝統的な家族観」を重視する自民党の腰は重く、改正が早期に実現するかはなお見通せない。

 同党の高市早苗政調会長は「政府と緊密に連携し、十分な法案審査等を通じて真摯(しんし)に対応したい」との談話を発表した。談話は「『一夫一婦制』や『法律婚主義』を危うくしかねない」という党内の批判的意見をあえて盛り込み、党政調で法案の「事前審査」を慎重に行う意向をにじませた。安倍政権には、支持基盤の保守層への配慮が欠かせないという事情がある。

 一方、婚外子の相続差別撤廃を掲げる公明党の山口那津男代表は「すばやく対応するのが国会の務め」と強調。「自民党にも働きかけてコンセンサスを作る努力をしたい」と述べた。

 法相の諮問機関「法制審議会」は1996年、相続差別の撤廃と選択的夫婦別姓制度の導入を答申し、法務省は民法改正案の提出をうかがってきたが、保守系議員の反発で断念させられた経緯がある。今年4月には、民主、みんな、社民の3党が、相続規定を撤廃する民法改正案を議員立法で参院に提出したが、廃案になっている。

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