クローズアップ2013:婚外子差別、違憲判断 家族観の多様化、反映
毎日新聞 2013年09月05日 東京朝刊
「婚外子に対する差別意識を助長する」と批判されてきた民法の相続格差規定について、最高裁大法廷が4日、裁判官全員一致で違憲判断を示した。家族や結婚に対する価値観の多様化などを踏まえた結論だが、与党内には、法律婚を中心とする「伝統的な家族観」を重んじる保守系議員も少なくない。早期の法改正には不透明感も漂う。
◇「未婚の母」増加 国民意識に変化
「現状を放っておけないから早く対応せよ、ということ」。全員一致の決定を受け、東京都内で記者会見した婚外子側の代理人、岡本浩弁護士は違憲判断をそう分析し、「少数者の声を多数意見を代表する国会で反映するのは難しい。その時は司法がやるしかない」と強調した。
規定は、1898年施行の明治民法で設けられた。正妻の産んだ子とそれ以外の女性との間の子を区別し、原則的には正妻の子に「家」を継がせ、亡くなった場合などにはそれ以外の子に継がせようとしたことから、婚外子に「2分の1」という一定の相続権を保障した。いわば「家の存続」のための規定だった。
戦後に現行憲法が制定され、法の下の平等を定めた14条で社会的身分による差別を禁じたことに伴い、相続分の平等化も議論されたが、「法律婚の尊重」の観点から規定は維持された。
しかし、時代の移り変わりに伴い家族や結婚の形は多様化し、国民の意識は変化。国勢調査などによると、「未婚の母親」は2000年の6万3000人から10年間でほぼ倍増し13万2000人(10年)に。全出生数に占める婚外子も1990年の1・1%(1万3000人)から2011年には2・2%(2万3000人)まで増えた。一方、国の世論調査では、規定について「現在の制度を変えない方がよい」と答えた人は94年の49・4%から昨年35・6%に減少した。
大法廷はそうした変化について「いずれか一つをとらえて規定を不合理とすべき決定的理由にならない」としながらも、「総合的に考察すれば家族の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らかだ」と指摘した。