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【社会】

「風立ちぬ」で脚光 レトロ菓子「シベリア」 横浜の老舗 注文、上映後5倍に

シベリア作りを続ける馬中俊夫さん(左)と、妻のいつ子さん=横浜市中区で

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 明治時代から作られている菓子パンの人気が急上昇している。名前は「シベリア」。6日に引退表明する映画監督、宮崎駿(はやお)さん(72)の最後の監督作品として公開中のアニメ映画「風立ちぬ」に登場することから、今も作り続けている店の一つ、横浜の老舗パン屋には、遠方からも注文が相次いでいる。 (新開浩)

 「風立ちぬ」は大正末期から昭和初期の名古屋市などが舞台で、旧日本軍の戦闘機、零戦(ぜろせん)を設計した堀越二郎(ほりこしじろう)(一九〇三〜八二年)が主人公。劇中では、二郎が帰宅途中、パン屋でシベリアを買い求め、同僚と一緒に食べる場面がある。

 それを販売している店の一つが、一九一六(大正五)年の創業以来、JR桜木町駅近くに店を構える「コテイベーカリー」(横浜市中区)。ようかんをカステラで挟み、三角形にカットした菓子パンで、一個三百三十円。

 店によると、名前の由来は(1)カステラに挟まれたようかんが、雪原を走るシベリア鉄道に見える(2)日露戦争(一九〇四〜〇五年)に従軍した菓子職人が考案した−など、諸説ある。

 同店が創業した大正初期は、他にも多くの店がシベリアを扱っていたが、製造に手間がかかるためか、ふだんから提供している店は少ない。

 「固まったようかんをカステラで挟んでも、はがれる。軟らかすぎると、カステラに染み込んでしまう。ようかんを流し込むタイミングが難しい」。三代目店長の馬中俊夫(まなかとしお)さん(64)は、そう説明する。

 カステラを焼き、ようかんを固めるのに、それぞれ二時間ほどかかる。「生産量も調整しにくい。売れ残るのを嫌って、やめた店が多いのではないか」。馬中さんの店には根強いファンがいて、今も作り続けている。

 同店は客が三人も入れば満員になる小さな店で、以前からインターネット販売を行っていた。「風立ちぬ」の公開後、「シベリアを食べたい」という問い合わせ電話や電子メールが急増。店のホームページを見た人から注文が相次ぎ、八月は四十件に達し、上映前の五倍に増えた。

 映画の舞台となった名古屋市のほか、大阪市などの西日本に住む人からの注文が多い。記者の取材中にも、香川県に住む女性が電話で「シベリア十五個」を注文した。

 「体力が落ち、パンの生産量は減らしているが、シベリアは今後も作り続ける」と馬中さん。自身も子育ての時期に、宮崎アニメに親しんだと言い、「宮崎さんも長編は無理でも、短編や絵コンテは作り続けてほしい」と話した。

 問い合わせは同店=電045(231)2944=へ。

 

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