焦点:中国で「暴力辞さぬ」地上げ横行、地方債務の重圧で
[無錫(中国) 3日 ロイター] - 中国・江蘇省の無錫市に住むXu Haifengさんは3年前に自宅から立ち退かされた時、北京に出向いて家の取り壊しを命じた地方政府への不満を訴えた。それ以降、家族は少なくとも18回誘拐され、不法拘置所の窓なしの狭い部屋に何週間も拘束されたという。
Xuさんの話は、時に暴力に訴える強引な土地収用が珍しくない中国でも衝撃的であり、多額の負債を抱える中国の地方政府があらゆる手段を使って資金集めに奔走し、市民生活にまで踏み込んでいる姿を浮き彫りにする。
「無錫市は借金まみれだ。市は住民の財産を奪い、土地を盗むことを生き残りの策としている」。こう憤るXuさんには74歳になる母親がいるが、その母親は10回以上も誘拐され、1年近くも不法に拘束されていたという。その背後には、適正な補償を求める家族の声を黙らせようとする圧力が見え隠れする。
世界第2位の経済大国となった中国では、土地収用は社会不安の最大要因の1つとなっており、急速な都市化の負の側面をあぶり出している。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは昨年、中国の経済成長が鈍化し、地方政府が債務返済資金に苦労するに伴い、土地の強制接収が増えているとの報告書を発表した。ただ同報告書の内容には異議を唱える専門家もおり、土地接収に関する公式な統計も存在しない。
<借金で火の車>
無錫市は、地方政府の中で最も多額の債務を抱える江蘇省の南部に位置する。公式統計によると、江蘇省の省政府や市政府は、大型建設プロジェクトや投資のために銀行などからの借り入れを膨らませている。
政府系シンクタンクの中国社会科学院・農村発展研究所の副所長を務める李国祥氏は、土地収用の背景には財政の圧迫があると指摘。「ロジックは単純だ。財政の健全さがない場合、地方政府はどうやって公正な補償を払えるだろうか」と述べた。 続く...