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いわき市長選、8日投票 避難者流入、あつれきも
 | 除染作業や復旧工事に向かう車が連なるいわき市内の幹線道。朝夕の渋滞が慢性化している=福島県いわき市四倉町 |
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福島県いわき市長選は8日、投票が行われる。いずれも無所属で、再選を目指す現職の渡辺敬夫氏(67)=維新・公明推薦=、新人の元福島県議清水敏男氏(50)、新人の元衆院議員宇佐美登氏(46)、新人の牧師五十嵐義隆氏(35)が立候補した。東北2位の32万8000人が住む都市には福島第1原発事故で2万4000人が避難する。不動産需要の高まりで一時的な活況に沸く一方、事故収束の行方は不透明。住宅不足や市民と避難者との摩擦など課題は多い。(いわき支局・野内貴史)
◎空き部屋なし
JR常磐線に近い同市内郷地区の住宅地では4月からアパートの着工が相次いでいる。市道沿いの約300メートルの間には3棟のアパートが工事中だ。
地元の不動産業者は「原発避難者の入居を見込み、それまで遊んでいた空き地に建てるケースが目立つ」と言う。
賃貸住宅業レオパレス21の物件も、市内には空き部屋がほぼない。広報担当者は「未完成の物件でも既に入居契約が結ばれている」と話す。
低落傾向の地価も上昇に転じた。1月時点の公示地価で、地価上昇率は同市泉もえぎ台が全国6位、中央台が8位と上位に入った。ともに中心部に近いニュータウンで原発避難者が中心となって購入しているとみられる。
避難区域の福島県富岡町の無職山田広さん(78)は避難先の郡山市の借り上げ住宅を引き払い、いわき市に移る考えだ。「墓参りに行くにも郡山は遠く、いわきの方がいいが、物件が見つからない」と嘆く。
市は県内市町村で最も多くの原発避難者を受け入れている。復旧や新築工事、原発事故収束、除染に携わる作業員も流入する。小売店や飲食店、医療、福祉への需要が高まり、「ミニバブル」(市幹部)の様相を示す。
市内の有効求人倍率は震災前の2010年度の平均は0.48。震災後に求人が増え、ことし2月には1.46となった。7月現在でも1.31と「高止まりの状態」(市商工労政課)が続く。
◎商機の裏返し
だが、原発事故収束の兆しは見えず、将来への不安は消えていない。企業進出も用地不足で限定的だ。いわき明星大(同市)は市外から入学者が集まらず、科学技術学部の廃止を決めた。
原発避難者の大量流入に市民感情は複雑だ。「放射性物質を拡散する風の向きが違っていれば私たちも避難者になる可能性があった」と同情する市民がいる一方、建物に「被災者帰れ」などと心ない落書きがされる事件も後を絶たない。
避難者の流入は消費需要が伸びて地元には商機となるが、生活面では渋滞や住宅不足を引き起こしている。避難者が東京電力から賠償金を得ていることをやっかむ声もある。雇用情勢が悪化すれば、避難者への反発につながりかねない。
6月には避難者が長期移住する「仮の町」構想をめぐる市の協議が浪江、双葉、大熊、富岡の4町と始まった。市行政経営市民会議の委員の一人は「対応を誤ると反対運動が起こる可能性がある」と懸念を示す。
2013年09月04日水曜日
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