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三 年 と う げ

                 李錦玉 (リクムオギ) 作  朴民宜(パクミニ) 絵

1 の 場 面

 ある所に、三年とうげとよばれるとうげがありました。
 あまり高くない、なだらかなとうげでした。 
 春には、すみれ、たんぽぽ、ふでりんどう。とうげからふもとまでさきみだれました。
れんげつつじのさくころは、だれだってため息の出るほど、よいながめでした。
 秋には、かえで、がまずみ、ぬるでの葉。とうげからふもとまで美しく色づきました。
白いすすきの光るころは、だれだってため息の出るほど、よいながめでした。
 三年とうげには、昔から、こんな言いつたえがありました。
「三年とうげで 転ぶでない。
 三年とうげで 転んだならば、
 三年きりしか 生きられぬ。
 長生きしたけりゃ、
 転ぶでないぞ。
 三年とうげで 転んだならば、
 長生きしたくも 生きられぬ。」
 ですから、三年とうげをこえるときは、みんな、転ばないように、おそるおそる歩きました。

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2 の 場 面


 ある秋の日のことでした。一人のおじいさんが、となり村へ、反物(たんもの)を売りに行きました。
そして、帰り道、三年とうげにさしかかりました。白いすすきの光るころでした。おじいさんは、こしを下ろしてひと息入れながら、美しいながめにうっとりしていました。しばらくして、
「こうしちゃおれぬ。日がくれる。」
おじいさんは、あわてて立ち上がると、 
「三年とうげで 転ぶでないぞ。
 三年とうげで 転んだならば、
 三年きりしか 生きられぬ。」
と、足を急がせました。
 お日さまが西にかたむき、夕やけ空がだんだん暗くなりました。
 ところがたいへん。あんなに気をつけて歩いていたのに、おじいさんは、石につまずいて転んでしまいました。おじいさんは真っ青になり、がたがたふるえました。
 家にすっとんでいき、おばあさんにしがみつき、おいおいなきました。
 「ああ、どうしよう、どうしよう。わしのじゅみょうは、あと三年じゃ。三年しか生きられぬのじゃあ。」
 その日から、おじいさんは、ごはんも食べずに、ふとんにもぐりこみ、とうとう病気になってしまいました。お医者をよぶやら、薬を飲ませるやら、おばあさんはつきっきりでかん病しました。けれども、おじいさんの病気はどんどん重くなるばかり。村の人たちもみんな心配しました。

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3 の 場 面


 そんなある日のこと、水車屋のトルトリが、みまいに来ました。
「おいらの言うとおりにすれば、おじいさんの病気はきっとなおるよ。」
「どうすればなおるんじゃ。」
 おじいさんは、ふとんから顔を出しました。
「なおるとも。三年とうげで、もう一度転ぶんだよ。」
「ばかな。わしに、もっと早く死ねと言うのか。」
「そうじゃないんだよ。一度転ぶと、三年生きるんだろ。二度転べば六年、三度転べば九年、四度転べば十二年。このように、何度も転べば、ううんと長生きできるはずだよ。」
  おじいさんは、しばらく考えていましたが、うなずきました。
「うん、なるほど、なるほど。」

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4 の 場 面

 そして、ふとんからはね起きると、三年とうげに行き、わざとひっくり返り、転びました。
 このときです。ぬるでの木のかげから、おもしろい歌が聞こえてきました。
「えいやら えいやら えいやらや。
 一ぺん転べば 三年で、
 十ぺん転べば 三十年、
 百ぺん転べば 三百年。
 こけて 転んで ひざついて、 しりもちついて でんぐり返り、
 長生きするとは、こりゃ めでたい。」
 おじいさんは、すっかりうれしくなりました。
 ころりん、ころりん、すってんころり、ぺったんころりん、ひょいころ、ころりんと、転びました。あんまりうれしくなったので、しまいに、とうげからふもとまで、ころころころりんと、転がり落ちてしまいました。そして、けろけろけろっとした顔をして、
「もう、わしの病気はなおった。百年も、二百年も、長生きができるわい。」
と、にこにこわらいました。
 こうして、おじいさんは、すっかり元気になり、おばあさんと二人なかよく、幸せに、長生きしたということです。

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5 の 場 面


 ところで、三年とうげのぬるでの木のかげで、
「えいやら えいやら えいやらや。
 一ぺん転べば 三年で、
 十ぺん転べば 三十年、
 百ぺん転べば 三百年。
 こけて 転んで ひざついて、 しりもちついて でんぐり返り、
 長生きするとは、こりゃ めでたい。」
と歌ったのは、だれだったのでしょうね。

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「三年とうげ」を、一回読んだらまずこちらを見てください。


「三年とうげ」を、くわしく気持ちを読む学習をすませたら、こちらを見てください。


出典 光村図書出版株式会社「国語三上 わかば」


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