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2013/08/30 02:03
国立遺伝学研究所の小林武彦教授らの研究チームは、老化抑制遺伝子として知られる「SIR2」の働きを解明し、酵母菌を使った実験で寿命を操作することに成功した。同様の遺伝子はヒトやマウスにもあり、老化の仕組み解明に役立つことが期待される。論文は30日付の米科学誌カレントバイオロジー電子版に掲載される。
SIR2遺伝子は、破壊すると寿命が半減し、逆に働きを増やすと寿命が伸びるため、「長寿遺伝子」とも呼ばれる。細胞の寿命は、全遺伝情報(ゲノム)の安定化とも関連があり、SIR2はゲノムの安定化を通じて老化を抑制していることまでは分かっていたが、具体的な仕組みは未解明だった。
小林教授らはゲノムのうち、不安定化しやすい増幅遺伝子の一つ、リボソームRNA遺伝子(rDNA)に着目。SIR2が、E―proという遺伝子の働きを抑えることで、rDNAを安定化させていることを見いだした。
さらに、遺伝子操作で、酵母菌のE―proの働きを人為的にオン・オフできるものに置き換えたところ、E―proの働きを活発にさせた酵母菌ではrDNAが不安定になり短寿命化。逆にE―proを抑制すると長寿になった。
小林教授は「今回、rDNAの安定性に関わる仕組みが分かったので、安定性を維持できるようなものがあれば、重要なターゲットになる。ただ、老化はゲノムの健全性を守る仕組みでもあるので、細胞の機能を損なわずに維持するメカニズムの研究も必要だ」と話している。
[時事通信社]
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