2006 / 11 / 13
  バレーボールの国際大会がいつも日本で行われる理由

BSの悪い評判を、ここのところ耳にする。「亀田の次は女子バレーボールか」などと、タレントを中心とした競技そっちのけの報道や、ワケのわからない選手のニックネームの押し付けに、不満が漏れ聞こえるのだ。

特に反論をしたいわけではないが、タレントやアーティストと競演することは、スポーツイベントでは個人的にはそれほど違和感はない。フィギュアスケートのアイスショーなどはその最たるものと言えるかも知れないし、スーパーボウルのハーフタイムショーなども好例と言える。

何より、もっと本質的な問題は、TBSやらフジテレビやらの中継スタイルにあるワケではない、ということを考えねばなるまい。本当の問題は、こういった日本のテレビ局に依存しきっている、国際バレーボール連盟(FIVB)を中心とする世界のバレーボール界全体にある。

0月31日から日本で開催されているバレーボール世界選手権(世界バレー)はもちろん、日本ではバレーボールがわりとテレビ中継され、話題も集めている。だが世界的には、バレーボール人気は危機的に低い。

世界選手権と同じく4年に一度開催されるワールドカップは、’77年大会から毎回日本で開催されている。表向きには「治安が良いから」などとされるが、日本以外で開催しても観客が集まらず、テレビ中継もされないため、収益が得られないからだ。

日本では、テレビ局がアイドル事務所と提携し、タレントの売り出しを兼ねてバレーボールを中継し必死に盛り上げる。世界のバレーボールが、そんな日本で得られる放映権料などの収益に頼り切っているのだ。サイドアウト制からラリーポイント制にルールが変わったのも、日本のテレビ局の思惑が影響している。放送時間を計算しやすくするためだ。

世界選手権は、ワールドカップとは違い、毎回違う国で開催していた。だがついに、今回の日本大会に続き、次の2010年も日本開催(女子)が決定。グランドチャンピオンズカップ(グラチャン)という大会に至っては、「日本が世界に挑戦する大会」として始まったもので、もちろん毎回日本開催だ。バレーボールの世界4大大会と呼ばれる大会のうち、五輪を除く3つが、全て日本開催になろうとしているのだ。そして、それぞれを日本の民放テレビ局が分担して盛り上げているのである(ワールドカップはフジテレビ、世界選手権はTBS、グラチャンは日本テレビ)。

回のワールドカップ男子、ブラジルがセルビア・モンテネグロを破り優勝を決めた一戦を観たのだが、観客席が半分ほどしか埋まっていなかった。世界の頂点を決するゲームに、狭い体育館の半分しか観客が集まらない。世界最高峰リーグ・イタリアのセリエAも、観客席はガラガラ(試合じゃなくて練習か?、と思ってしまうようなゲームもある)。それが世界のバレーボールの現状だ。日本でも少年少女バレー大会のスポンサーが次々と撤退するなど、バレーボール離れが進んでいる。

タレントを前面に押し出すバレーボール中継に嫌悪感を持つファンも多い。視聴率を稼ぐため、競技自体の魅力を伝えることが疎かになり、ファンが離れる悪循環。バレーボール界は、このスパイラルから本腰で脱却すべきである。

まず、競技の改革はどうだろう。たとえばサイドアウト制に戻し、大逆転を可能すること。スパイクを打てるエリアを制限するなどして、ラリーを増やすこと。こうして手に汗握る展開を演出するのも一案だ。また、身長がモノをいい過ぎる競技特性を改善するために、身長別の大会も世界的にもっと開催するべきではないか。柔道の階級別のような身長別大会を増やせば、体格に劣る少年少女達にも裾野を広げることになる。

本のタレント事務所に依存することなく自立するため、こういった抜本的な改革が必要な時期であろう。日本代表も、大きな大会をいつもホームで戦い、開催国だからと毎回予選を免除されているようでは、五輪で勝てる真の強豪にはなれないのだから――。

    稲見純也 JunYa Inami

<この記事は、10月24日発売『週刊漫画サンデー』に掲載された内容に加筆したものです>


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