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相次ぐ盗難、なぜ山元だけ 人口減、届かぬ監視の目

津波の犠牲となった園児3人を供養する地蔵や塔婆が持ち去られた献花台

 東日本大震災で大きな被害が出た宮城県山元町の津波浸水地域で、公共物や犠牲者を弔うための供養物が何者かに持ち去られる事件が相次いでいる。現場は被災住民の転居などで人口が減り、監視の目が届きにくい。被災地を狙った卑劣な行為に、周辺住民からは憤りの声が出ている。

 被災して取り壊された町東保育所跡では、津波の犠牲となった園児3人を追悼する献花台に置いた地蔵3体と塔婆7本がなくなった。設置した復興支援のボランティア団体が3日、亘理署に被害届を出した。近くの橋でも、ひもで結んでいた塔婆1本がなくなった。
 同団体によると、地蔵は白磁製で1体が高さ約20センチ、残る2体が約15センチで親子を表現。会津若松市の僧侶が制作し、近所の江湖浩樹さん(48)方に置いていたのを先月23日に移した。
 同団体の鹿野比登美代表理事(43)は「犠牲となった子どもを供養するものを持ち去る考えられない行為」と憤る。江湖さんも「何が目的なのか。怒る気すら起きない」とあきれ返る。
 ことし5月には、同町山寺の普門寺で観音像が盗まれた。津波で境内の墓の中から流出した遺骨を土と一緒に集めて築いた高さ約5メートルの骨塚の上に供養のため置いていた。骨塚には重さ約30キロの像を引きずり下ろした跡があった。発覚から6日後、何者かによって境内に戻された。
 先月は町内の県道の側溝から鋼製のふた149枚が2度にわたって持ち去られた。県仙台土木事務所の担当者は「鉄くずとして業者に売っているのではないか」と話す。
 いずれの現場も住宅が損壊して住民の転出が相次ぎ、夜間の人通りはほとんどない。町は震災後、浸水域を中心に防犯灯160基を設置するなど対策を講じている。
 住民の無職男性(52)は「人口が減り、震災前のコミュニティーが再生できていない。今度は放火されないか心配だ」と不安を口にする。
 亘理署は各被害を窃盗事件として捜査する一方、住民に注意喚起や情報提供を呼び掛ける。捜査幹部は「亘理町で同様の被害がなく、なぜ山元だけ続くのか分からない。被災者や遺族の感情を逆なでする非人道的な行為だ」と強く非難する。


2013年09月04日水曜日


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