放射能汚染水の海洋流出は報じられなかったのか


<以下、引用>
上杉  あの時東京電力の本店の記者会見にずっと通ってたんですよ。2年前の2011年3月から4月。でね、その時に指摘してたのが、汚染水、これが海洋にリークされてるから、何とかしなくちゃいけません、ゆうことをずっと言ってたんですが、

中尾ミエ  あの時誰も言わなかったですよね。

上杉   言わなかったですね。言ってデマ扱いされてね。デマ野郎と

福島第一原発の放射能汚染水の処理については、自由報道協会所属のフリーランス記者らが、発災直後の3月半ばから、国産・外国産を問わず装置導入を訴え続けてきた。

その際、日経新聞はじめ、日本のメディアが報じたことは、 「放射能汚染水の海洋流出は認められない」 という東京電力の発表そのままを信じ、そこまでの対応は不要だという論陣を張ったものだった。

「海に汚染水一日300トン」(朝日新聞)

きのう、きょうとメディアは一斉にこのニュースを報じた。海外でも大ニュースになっている。その様子を見て、昨夜、思わず私は「何を今更」と吐いてしまった。東京FM『タイムライン』、生放送中のことである。

2011年3月、故・日隅一雄氏を先頭に、わたしたち自由報道協会のフリージャーナリスト(一部)が東京電力本店で追及していたのはまさにこのことだ。同じ時期、国際NGOのグリーンピースが具体的なデータを持って、長期の海洋汚染への警告を発していたのもまさしくこのことである。日本が海洋汚染国家に成り下がり、 3・11の被害国から加害国に変わってしまうと警告した のもこのことだ。

〔中略〕

生放送で「何を今更」と言ったのは、その頃から少しも状況が変わっていないにも関わらず、 あたかもいま初めて「海洋汚染の真実」を知ったかのようなメディア報道 、さらにそれを無意識に許してしまう日本社会(政治、行政、産業、報道各界)の未熟さにあきれてしまったからだ。


検証結果:放射性物質流出による海洋汚染は2011年3月当時から報じられている。

  • 上杉氏は、あたかもこれまで海洋汚染について報道がなされず、自らが唯一人訴えてきたというような印象を広めようと試みているが、実際には、放射性物質による海洋汚染はそれが発覚した2011年3月以降継続的に報じられている。


目次


海洋汚染をめぐる報道はなされなかったのか

放射性物質による海洋汚染は、それが発覚した2011月3月下旬から報じられている。



以下は、福島原発沖海水からの放射性物質検出が明らかになった2011年3月下旬から、4月の低濃度汚染水放出直後までの各紙関連報道である。
※()内は頁数(夕)は夕刊
朝日新聞 読売新聞 毎日新聞 日経新聞
3月22日 「原発 海側も異常値」(夕2) 「海水から放射性物質」(夕1) 「福島第1 海水から放射性物質」(夕1)
「放射性物質の監視強化」(夕3)
23日 「原発から16キロの海でも 安全基準の16~80倍」(1)
26日 「海水から1250倍ヨウ素」(夕1) 「海水に1250倍放射性物質」(夕1) 「海水から1250倍ヨウ素」(夕1)
27日 「海水に基準値超す放射能」(2) 「放射性ヨウ素 海産物「影響なし」」(3)
28日 「海水中の放射能「基準以下」続く」(30) 「海水1150倍ヨウ素」(夕1)
30日 「汚染 緊張の海」(2)
「海水 放射性ヨウ素3300倍」(夕1)
「海水の放射性物質薄まらず」(2)
「海水から濃度3355倍ヨウ素」(夕1)
「放射性ヨウ素 福島市で2万3000ベクレル」(2)
「南放水口 ヨウ素最高の3355倍」(夕1)
「海水、ヨウ素濃度3355倍」(夕3)
31日 「海水、4300倍のヨウ素」(夕1) 「海水から4385倍ヨウ素」(夕1) 「海水のヨウ素4385倍」(夕1) 「海中海底も汚染」(2)
「海水、ヨウ素4385倍」(3)
4月2日 「汚染水 外に拡大 海への経路不明」(2)
「福島第一から40キロの海 ヨウ素 基準の2倍」(夕1)
「放射性物質 東電、海洋生物調査へ」(2)
3日 「汚染水、亀裂から海へ」(1)
「放射能広がる海域」(2)
「放射線量横這い 福島上空は平常」(5)
「汚染水 海に直接流出」(1)
「海中のヨウ素1000倍」(3)
「汚染水、直接海に」(1)
「茨城の近海魚規制値下回る」(4)
「汚染水、海に流出確認」(1)
「海洋の汚染対策急務に」(3)
4日 「放射能漏出防止に数カ月 海へ汚染水続く」(1) 「汚染水流出止まらず」(1)
「海中深くでも放射性物質」(29)
「樹枝流し込み 汚染水流量変化なく」(2) 「汚染水流出続く」(夕1)
5日 「汚染水1.1万トン海へ放出」「コウナゴにヨウ素」(1)
「茨城のコウナゴ 出荷停止指示へ」(夕1)
「低濃度汚染水 海へ放出」「小魚から放射性ヨウ素」(1)
「海面の水ヨウ素 37.5ベクレル」(29)
「汚染水放 出魚介類検査を強化」(夕1)
「低濃度汚染水 海に放出」(1)
「ヨウ素 茨城産コウナゴ4080ベクレル」(4)
「低濃度汚染水、海に放出」(1)
6日 「茨城のコウナゴ漁停止(1)
「高濃度汚水 流出止まる」(夕1)
「茨城のコウナゴ漁自粛」(1)
「放射性物質検出 「魚受け取り拒否も」」(11)
「茨城産コウナゴ セシウムも検出」(3) 「コウナゴ漁当面自粛」(30)

参考:


「海洋汚染国家」をめぐる当時の上杉氏の発言

上杉氏は上記メルマガで「 被害国から加害国に 変わってしまうと警告した 」と述べている。しかし上杉氏が実際に行っていたのは以下の発言である。

(動画該当箇所はこちら
〔2011年4月〕4日を境に日本は「被害者」から「加害者」になりました。 世界中のメディアが これまで可哀想な日本だという論調から一転して、放射能を公共の財産、世界の財産である海洋にまき散らす 『海洋犯罪テロ国家』になった と。大げさじゃないんですこれは。 どの新聞でも 、英語読める方はご覧になってください。 もうここ2、3日は酷い状況です

つまり、日本は放射能を公共の財産、世界の財産である海洋に撒き散らす 海洋犯罪テロ国家になった 。大げさじゃない。海外メディアに触れられる方は海外メディアをご覧になってください。
『週刊金曜日』2011年4月15日 20頁

すなわち、2011年4月当時、 世界中のメディアが日本について『海洋犯罪テロ国家』という表現を用いて報じていた 、というのが上杉氏の実際の発言である。これが虚偽であったことは既に明らかになっている。(⇒ 詳細:海洋犯罪テロ国家


また上杉氏は放射能汚染水の問題に関連して、東京電力会見で他の記者らから罵声を浴びせられ質問を妨害された海産物の調査が行われていないストロンチウムの検査で意図的に数値を低くするために魚の頭や内蔵が除去されている、といった発言をしており、これらも虚偽であったことが判明している。


参考:


更新
2013.09.04 『5時に夢中!』及びメルマガvol.72からの引用を追加