婚外子裁判:「差別を法が保証する怖さ」落合恵子さん
毎日新聞 2013年09月03日 15時53分(最終更新 09月03日 16時57分)
結婚していない男女間の子(婚外子)の相続分を、結婚した夫婦の子の半分とした民法の規定について、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允=ひろのぶ=長官)は4日、初の違憲判断を示す見通しだ。最高裁決定を前に、自らも婚外子で母子家庭に育った作家の落合恵子さん(68)に、規定の問題点を聞いた。【聞き手・和田武士】
規定は婚外子の存在を「他の子どもの2分の1」と言っているに等しく、そのことを法が保証している怖さに気付く必要があります。子どもは生まれる国も家族も選択できません。「子」であることだけをもって、社会がどれだけ尊ぶことができるかが人権の成熟度を示すと思います。
幼い頃、「(父親がいなくて)かわいそう」という周囲の言葉に居心地の悪さを感じていました。子ども同士でけんかして「お父さんがいないくせに」と言われたこともありました。大人の話を耳に挟んだのでしょう。差別は世代間で再生産、再助長するのです。
母はつらい思いをしていました。周囲の目などが負担になったのでしょう。そのこともあって、長い間、神経症を患いました。
アナウンサーだった20代のとき、私が婚外子だということが週刊誌の記事になりました。仕事以外のことを持ち出され、快いことではありませんでした。母は「娘を傷付けてしまった」と自分を責めていたようです。7年前に母が亡くなる日の朝、私は「あなたの娘で良かった」と声を掛けました。
法改正されないのは、「婚外子の人権など後回しでいい」という感覚が多くの国会議員にあるのでしょう。そうした議員たちは今もって戦前の家族制度が「ちゃんとした家族」の姿なのです。「ちゃんとした家族」がその人たちにとって幸せなら、それを心から祝福します。でも、それを選びたくない人や、選べなかった人のこともセンシティブに考えていただきたい。最高裁の違憲判断によって、差別される側の子どもに対する大人側からのアプローチの仕方が変わり、皆が差別について考えるきっかけになればと願っています。
◇価値観の変化重視し判断か
違憲判断にあたって最高裁大法廷は、「家族や結婚に対する価値観の変化」を重視するとみられる。社会情勢の変化に伴い、かつては合憲だった規定が違憲になったという理屈だが、既に決着済みの他の相続にも影響を与えそうだ。