浅野秀弥の未来創案

【竹山修身・堺市長に聞く】

2013年9月2日

堺のことは堺で決める

 29日投開票の堺市長選が15日告示される。4年前は当時大阪府知事であった橋下徹大阪市長の応援を受け、自公民社4党相乗りの現職を下し、今年再選を目指す竹山修身市長(63)に、今度は「大阪維新の会」所属の西林克敏・前堺市議(43)が挑む。一般有権者から見れば「橋下さんが応援した竹山さんに、なぜ維新が対抗馬を?」と映る。このコラム開始以来、一貫して橋下氏の政治手法を追及検証してきた私が、直接竹山氏と会って話を聞いた。

 −2009年に府幹部職員から、堺市長選に出馬した経緯は。

 始まりは25年前。府から当時の美原町(現在の堺市美原区)助役に出向していた時に、直接住民生活と関わる基礎自治体での仕事のやりがいや大切さを感じたのがきっかけ。

 −随分前から、堺市政に関心が?

 12年前の堺市長選の際、「出馬の意思はないか?」と打診されたが出馬は見送った。60歳近くになり、ふるさと堺に恩返しをしたい思いが強くなり、出馬を決意し、当時の上司である橋下知事にあいさつに行ったら知事から「それなら応援しますよ」といわれた。

 −では「知事に送り込まれた」とはいえない。

 橋下氏が大阪都構想を提唱したのは私の当選後。堺の自治に対する考えの違いで、橋下氏と袂(たもと)を分かった。大阪都構想に組み込まれると、堺は自治の権限と財源を失う。堺を大阪都の植民地にはさせない。堺のことは堺で決める。

 −府と大阪市は、堺市の健全な財政を狙っている?

 道州制の基本は、市町村である基礎自治体。堺市は行財政改革を着実に進めながら健全財政でやっている。堺市の税収1300億円のうち、460億円が都に吸収され、堺のことが堺で決めることができなくなる。大阪都構想は、地方分権の流れに反している。

 −大阪都構想の基本は「二重行政の解消」だが?

 堺市と大阪府との間にはない。松井知事も「堺市との間に二重行政は見いだしがたい」と言っている。公立幼稚園の民営化など行財政改革も、他市より先進的にやっており、堺市が廃止される大阪都構想は堺市民にとって「百害あって一利なし」。大阪都構想の1丁目1番地の水道事業統合をはじめ、二重行政の解消がほとんど進んでいない。大阪都構想の効果に加えられている民営化推進も単なる行革の一つで、二重行政の解消とは本来関係ないもの。

 −橋下氏の文化行政に関する考え方に対して。

 文楽など「古典芸能とは何ぞや」という議論もなしに、「採算性がない」と、市場原理を重視した補助金削減はいかがなものか。堺市は伝統文化の脈々たる流れがあり、それがまちの品格につながっている。私たちは、まちの歴史文化を次世代につなぐ責任がある。「一度失われたら、取り返しのつかないものもある」ということを知るべき。