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借地人が地主から底地を購入する場合の注意点
ライター:yc_yokosuka_kawamuraさん(最終更新日時:2011/9/2)投稿日:2011/9/2
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借地と底地との併合のチャンス
我が国では借地の多くは賃借権であり、地主との契約によって成り立っています。借地人は、借地法又は借地借家法による保護を受けていますが、それは裏を返せば地主の影響力が強すぎるからです。借地人が地主から底地を購入するチャンスがあれば、そのような地主との人間関係を解消するチャンスでもあるので、あなたに資金的な余裕があり、将来も住み続けたいと思っているのであれば前向きに考えるべきだと思います。
借地には歴史的な背景もあり、法制度も複雑です。このような借地に係る取引について、どのようにすればスマートに行えるでしょうか?
借地の歴史的背景
我が国の借地法制は、建物保護二関スル法律(明治42年~平成3年)、借地法(大正10年~平成3年)、借地借家法(平成4年8月1日~)によってなされてきました。昭和16年の戦時下における借地法改正により「正当事由制度」が導入、「法定更新制度」とともに、借地は実質的に地主に土地を返還しなくてよい制度となりました。その結果、その後の土地価格の上昇と地代値上げの困難性とともに、借地は資産的価値を有するようになったのです。(詳細については、国土交通省HP参照)
借地政策は戦後の農地解放と同様に土地(財産)の再分配という側面があります。地主からすれば、国によって財産(借地権相当額)を収奪されたと見ることもできる一方で、借地人からすれば、借地は法によって認められた権利となります。このギャップが、借地によるトラブルを招く根底の大きな要因となっているのです。
しかしながら、制度が確立してから年月が経ち、借地や底地(借地権の付着した宅地)も相続や売買により世代交代がなされています。相続にあたっては、国税庁が定める借地権割合によって借地も底地も一定割合で評価され、その財産的価値にもとづいて相続がなされています。借地について借地人も地主もしっかりと理解すれば、合理的な解決方法を見いだすことが出来るはずです。
取引のための準備
スマートな取引を行うためには、まずしっかりとした情報収集と分析が必要です。分析については専門家の知識と経験が必要ですが、まずは情報収集を行いましょう。
取引にあたって後のトラブルを防止するために、対象となる底地を明確に確定する必要があります。ここでは、取引に当たって最低限チェックしておきたい事項に限って述べたいと思います。最低限調査、収集、整理しておきたい事項は下記の通りです。
- 土地の登記事項証明書・公図(法務局)
- (あれば)土地の地積測量図(法務局)
- 地積測量図がなければ、おおよそ実際に計測してみた面積と賃貸面積・登記面積との異同
- 隣地境界の確定の有無
- 土地の公課証明書(各市町村の資産税課)
- 土地賃貸借契約書
- 過去の地代の推移、更新料・権利金・保証金等の一時金、その他承諾料等の支払履歴
範囲と面積の確定
まずは法務局において、土地の登記事項証明書と公図を取得しましょう。誰でも手数料を支払えば取得できます。登記事項証明書と公図を用いて、地番・面積・所有者・公図上の位置等を確認します。さらに、自らが居住する土地であることで見逃しがちなのが、隣地との境界が確定しているか否か?実際の面積(実測面積)はどのくらいか?です。まずは借地のおおよその範囲を実際に計ってみて計算し、賃貸面積や登記面積と比較をしてみましょう。特に賃貸面積や登記面積より実際に計測した面積が小さい場合には注意が必要です。取引にあたっては、地主の協力を得てこれらを確定してから取引を行う方が安心でしょう。
現在のコストと底地取得後のコストの比較
現在借地にどのくらいのコストを支払っていて、底地取得後にはそれがどの様に変化するかを大まかでよいので把握しておくと良いでしょう。
具体的には、現在支払っているコストとしては、地代・更新料等があると思います(更新料については地主に法的な請求権がないので原則として支払う必要がないものなのですが、将来の更新時に支払いに応じる可能性がある場合に計算に入れます)。年額の地代に、将来支払いに応じる可能性のある更新料の額を賃貸借の期間(20年とする場合が多い)で除して年額にして加算し求めます(ここでは簡略化のため利回りは考慮しない)。一方、底地取得後のコストは、土地の固定資産税・都市計画税となります。
現在のコスト=年額地代+将来の更新料/契約期間
底地取得後のコスト=固定資産税と都市計画税の合計額
なお、土地の固定資産税・都市計画税は、各市町村の資産税課に問い合わせて、借地人であることを証する書面(契約書等)を提示すれば、税額の記載された公課証明書を発行してもらえます。過去5年~10年分は出してもらえると思います。多年度に渡って出してもらえれば、今後の税額の推移の参考にもなります。
借地による地主側の手取額の計算
土地の公課証明書を用いて地主の手取額を計算してみましょう。交渉を行う上で相手方の借地収入を把握しておくことは重要です。
地代による手取額=年額地代-固定資産税・都市計画税の合計額
借地による手取額=現在のコスト-固定資産税・都市計画税の合計額
借地による手取額が極端に少ない場合、地主が底地を第三者に売却しようと思っても安くしか売れません。交渉は借地人に有利となります。
譲渡承諾と増改築承諾
借地であることにより土地利用について様々な制約があります。ここでは借地権の譲渡と建物の増改築について考えてみます。
借地の権利が賃借権である場合、借地権の譲渡(売買)には地主の承諾が必要です。地主の承諾が取れない場合には、裁判所に地主の承諾に代わる許可を取ることが出来ます(借地非訟事件)。その場合、地主に対して一定の金銭的給付を支払う代わりに許可を出すケースが多いです。過去の借地非訟事件では、借地権価格の10%程度が一般的です。地主側から譲渡承諾料として一定の金額を請求されることが多いですが、この金額を参考に承諾料が高いか安いかを判断します。
土地賃貸借契約書に建物の増改築禁止の特約が付されているケースが多いですが、この特約は有効です。したがって、増改築禁止特約が付されている場合、無断で増改築を行うと最悪の場合には賃貸借契約を解除される恐れがあります(なお、修繕は承諾がなくとも可能です)。この特約が付されている場合、建物の大規模のリフォームや建替を行う場合には、地主の承諾が必要となります。増改築の承諾についても譲渡承諾と同様に裁判所に地主の承諾に代わる許可を取ることができます。この場合は建替で更地価格の3%程度が一般的です。リフォームの場合にはその程度に応じて調整されます。なお、増改築禁止の特約がない場合には、増改築承諾料は不要です。
承諾料は、あくまで借地非訟事件として裁判所に許可を求めた場合の金額の目安です。実際には地主との交渉となるので高額な承諾料を要求されるケースもあります。
借地と所有権の比較
以上のような調査で、底地を買うことでどのようなメリットがあるか具体的になってきたと思います。
取引価格の検討
売買で最も関心があるのが取引価格です。しかし、借地に係る取引においては、その価値を把握することは不動産業者であっても困難と言えます。参考として、相続税の路線価を調べてみてください。(国税庁 路線価図)
あなたの借地の前面道路に付された数字とアルファベットがあるはずです。これは、国税庁が定めた相続税を計算する場合の指標となる土地の㎡単価と借地権割合になります。アルファベットが「D」であるならば、借地権割合は「60%」となり、底地の割合は1-60%=40%と計算出来ます。しかしながら、この路線価はあくまで国税庁が相続税課税のために公的評価として公表しているもので、実際の時価とは本来性質が異なるものなのです。公的評価にはこのほか、地価公示標準地価格、固定資産評価額等があります。
実際の時価を求めるなら不動産の鑑定評価
不動産の鑑定評価における理論的な価格の求め方をご紹介します。
借地権価格も底地価格も、本来個別的に価格が形成されます。鑑定評価においては現実の取引事例との比較や収益分析をおこなってそれぞれ価格を求めます。ここでは、下記のように求められたとします。
更地価格(100)>借地権価格(50)+底地価格(30)
この場合、借地人が底地を購入する金額は30~50(100-50)であれば妥当な範囲となりますが、さらに突き詰めて考えてみます。
100-(50+30)=20…借地契約による減価
借地契約による減価とは、借地契約を結んでいることによる市場性の減少、担保価値の減少、その他土地利用上の制限等があげられます。問題はこの減価をどう配分するかにあります。ここでは分かり易くするために、総額比によって配分してみます。
20×30/(50+30)+30=37.5
つまり、この場合には更地価格の37.5%が相当となります。
取引交渉
取引交渉は相手があることですから、全てこちらの思う通りには進みません。自分の立場と相手の立場とをしっかり理解することが重要です。その上で、納得がいかないこと、疑問に思うことははっきりということが必要となります。
また、地主と直接交渉するのか、間に地主側の不動産業者や第三者が介在するのかによっても、交渉の進め方は異なります。もし、地主側から売買の話を持ちかけてきた場合には、その動機がなんであるのかを見抜く必要もあります。
地主の中には、思想的に所有権を絶対視している人や駆け引きの強い方もいます。地主との交渉では、一度感情的なトラブルになると何年間か時間をかけないと前へ進まない場合もあるので、注意が必要です。
ADR(裁判外紛争解決)に準ずる方法の活用
平成13年6月12日司法改革審議会意見が公表され、「Ⅱ 国民の期待に応える 司法制度の「第1、8.裁判外の紛争解決手段(ADR)の拡充・活性化」を通じて、ADR(裁判外紛争解決)法が制定されました(ADRの紹介)。不動産に係る紛争について最も専門的知識を有する専門家である不動産鑑定士は、これらの代理権の授与を受けるべきであると思うのですが、現段階では残念ながら「将来検討する」という方向性にとどまっています。
今回のような取引の場合には「紛争」ではありませんが、双方の調整が難しい場合には間に不動産の価格に関する専門家である不動産鑑定士が入ることにより、ADRに準ずる方法により問題の解決を図ることができます。この方式を利用する場合の最も有利な事は、ワンストップで紛争前に紛争となり得る可能性のあるものを、感情的になる前に、当事者が調整役を通じて円満に解決が出来る事です。
私は裁判所の調停委員を長く務めてきた経験も生かして、同様の手法で借地に関係する案件を数件解決してまいりました。このような借地に係る取引では、専門的知識を有し利害調整の手法に長けている不動産鑑定士にご相談なされるのも、合理的な解決のためには有効であると思います。
以 上
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