書籍「はじめたばかりの浄土真宗」にいい指摘があったのでご共有。このシリーズ、名著です。Kindleでも読めるので「いきなりはじめる仏教入門」と合わせてぜひ。
時間感覚を伸ばす
釈:人間は、内蔵されている時間意識が長いと、ちょっとした凸凹があんまり気にならなくなる。逆に、短い人はニキビみたいなものでもイライラして辛抱できない。機嫌よく暮らすためには、内蔵されている時間を伸ばしていかないとだめです。前に内田先生がご指摘なさったように、今の社会は時間意識を短くする装置ばかりがどんどん発達して、長くする文化装置は無くなってきている。
内田:効率ばかりを優先する社会ですからね。効率って、要するに単位時間あたりの仕事量だから、かける時間は短ければ短いほどいい、ということになる。
釈:社会がイライラする原因の一端はここにある気がします。
内田;今後はもう「スピード感」や「まったなし」とかいうような言葉は死語にしない?
この話、ブロガーとしては大変よくわかります。何を隠そう、ぼくはしょっちゅう「ヤバい、最近ヒット記事が出ていない…」という焦りに駆られていたからです。
現に、ここ1ヶ月はいまいちヒット記事に恵まれておらず、PVが停滞しています。あー、ヤバいぞ、一発そろそろホームランを打たないと…。え、炎上マーケティングに手を出すしかないのか…?
…という焦りを人は感じてしまうものですが、では果たして、そういう焦りが自分にとってプラスの影響を与えるかというと、やっぱりそうではないとぼくは感じています。「ヤバい、何かやらなきゃ…」と思い、焦って何か新しいことをやり始めると、経験上、だいたい失敗します。さすがに4年間もやっているので、もういい加減に学びました。
そんなわけで最近は考え方を変えて、「ま、そのうちホームラン記事も出るだろうし、今まで通り淡々とやっていくしかありませんな」と自分に言い聞かせ、納得するようにしています。
実際、ブログのヒットを自分の力でコントロールするのは無理なんです。これはぼくの実力不足も一因ですが、コントロールできない外部要因も、強い影響を与えるのです。平常心を保ちながら運用しつづけていくと、忘れた頃にヒットする、というのがぼくの経験してきたブログ運営の実相です。
時間感覚を長く取るようにしたら、それだけで気が楽になり、変に焦ることはなくなりました。すぐにお金にはならない長期的な活動にもじっくり時間を割けるので、こういう態度のほうが、結局は「効率的」になるのでしょう。
時間感覚を伸ばすためには、「自分では何もコントロールできないから、時勢に流されて、できることをやっていくしかない」という健全な諦めを抱くことでしょう。
紹介している本の主旨に沿うのなら、「これまで培ってきたものが一瞬で壊されるのは当然のことだ。諸行無常だ」「感情に支配されるのは愚かなことである」という仏教的な考えを導入することも、助けになると思われます。
釈:仏教って、もともととてもクールな宗教です。ヒューマニズムなんか消し飛んでしまうくらいクール。喜びにも悲しみにも支配されるな、そこにこそ安住がある、と教えるわけですから。植物のように生きろと言っている気がする時があるくらい。かなり非近代自我的。
植物のように生きろ、というのは言いえて妙ですね。ブロガーも、まさに植物に似ていると思います。Googleというお天道様のご機嫌次第では、サイト価値が一瞬に下落するという意味で…。でも、ここでぼくらは頑張りつづけるのです。
というわけで、本書は資本主義的な文化のなかで忘れてしまいがちな、宗教性に基づく精神に立ち帰らせてくれる、良質なライフハック本です。…と、ライフハックという言葉で理解しちゃうあたりも、短期的でよくないんでしょうねぇ。まぁ、とにかく良い本です。