米携帯合弁会社ベライゾン・ワイヤレスの提携先の持ち分を約1300億ドル(約12兆8000億円)で買い取るという米電話会社ベライゾン・コミュニケーションズの計画は、競争が激化しスマートフォン(高機能携帯電話)の需要が伸び悩んでいるものの米携帯電話市場になお拡大の余地があると同社がみていることの表れだ。
14年前に英ボーダフォン・グループと設立したベライゾン・ワイヤレスを完全子会社化することでベライゾンは収益の全てを手にできるようになるが、経費削減や新たな製品・サービスの追加にはつながらない。今後の収益の伸びが高額な支払いを補ってあまりあることをローウェル・マッカダム最高経営責任者(CEO)は投資家に説得しなければならないだろう。
ベライゾンの大きな賭けは、米国より高いリターンを見込める海外で買収先を物色している米電話会社AT&Tと対照的だ。マッカダムCEOは就任後、業界全体の収入拡大が勢いを失う中で米国の携帯電話事業への投資に50億ドルを注ぎ込んだ。今回の計画は幅広い通信サービスの需要急増につながるとの同CEOの期待に沿う事業の基盤を築くことになる。
ベライゾンの元マネジャーで現在はSGテレコム・コンサルタンツ(メリーランド州ウェストミンスター)に勤務するサム・グリーンホルツ氏は「マッカダムCEOの戦略は従来型の電話会社から脱却することだ」とし、「ベライゾンをクラウドサービスや放送の手段を提供するモバイル・ファイバー企業に変えたい考えだ」と話した。
事情に詳しい関係者によると、ベライゾンはボーダフォンからベライゾン・ワイヤレスの持ち分45%を約1300億ドルで買い取る合意に達した。複数の関係者は、2日にも合意が発表されるとしている。(ブルームバーグ Crayton Harrison、Scott Moritz)