「捜査報告書に防犯カメラのタイムラグを補正して明記するのは、『いろはのい』です。これが書かれない捜査報告書など見たことはない。直轄警察隊の捜査指揮を取るのは署の刑事課長か課長代理、つまり警部ですから、そんな常識を知らないはずはない。もし見逃していたなら、これほど恥ずかしい凡ミスはないでしょう。再逮捕までして、無実の人を3ヵ月近くも勾留しているのですから、罪は重いと言わざるをえない」
Aさんは当初、公開の法廷で大阪府警と対決することを望んでいたが、起訴が取り消され、それはかなわなかった。Aさんが言う。
「どうして、自分が捕まらなければならなかったのかを知りたかった。そのうえで、裁判所から『無罪』と認めてほしかった。公訴を取り消されると、私がなぜ85日間も警察署に勾留されることになったか、もう知ることはできません」
警察は反省しない
大阪府警は昨年8月、PCなりすまし事件で無実のアニメ演出家を誤認逮捕する失態を犯している。
さらにこの1ヵ月間だけでも、Aさんの事件を含め4件の誤認逮捕が発覚する異常事態となっている。他の3件の内容は以下だ。
・泉南署が日本国内で運転できる台湾の免許証を持っていた台湾人女性を無免許だと勘違いし、道交法違反で現行犯逮捕
・高槻署が少女のスカートがめくられた痴漢事件で、無関係の男性を現行犯逮捕
・浪速署が、路上で女性の身体を触ったとして、無関係の男性を迷惑防止条令違反で逮捕
この3件に共通する点がある。それは、すべて「現行犯逮捕」であるというところだ。前出の元府警幹部が解説する。
「警察官のほとんどは、習性としてゲンタイ(現行犯逮捕)したがります。なぜなら、そのほうが楽だからです。通常逮捕だと、署に呼んで事情を聞き、容疑を固める証拠も集めた上で、裁判所に逮捕状を請求しなければならない。それだと面倒だし、時間がかかる。事件が温々のうちにやりたい、というのは警察官の本能とも言えます。
その結果、高槻署のケースも浪速署のケースも、被害者の女性や少女の母親の証言に頼りすぎて、少し似ているだけの無関係の男性を逮捕しているわけです。
さらにいえば、誤認逮捕は警察内部ではそれほど失点にならないという風潮もある。取り逃がすよりはマシだ、と。誤認逮捕によって無実の人を苦しめてしまっても、それは犯人逮捕のための『必要経費』と考える幹部もいます」
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