そんなある日彼が学校を休んだ。
あまり学校を休まない人だから「どうしたんだろう？」って。

先生に聞いたら「叔父さんに殴られて、鼻の骨が折れた」って。
心配になった私は、男友達と3人で、彼の家にお見舞いに行く事にした。

私もDVを受けていたから、彼のことが単純に心配って気持ちはあったけど、
それよりも、彼の冷めた気持ちを少しでもつなぎ止めたいって気持ちがあったのかもしれない。

家に到着すると鼻にガーゼをした彼が出てきた。
普通にいつも通り、髪の毛はセットされてて、鼻以外はいつも通り。
「いやー、叔父さんに殴られちゃってさ」という彼の話し方も明るくて、
ちょっと安心したのを覚えてる。

私と友達は、お部屋に上がらせてもらった。
殴られた事については、多くを語りたがらない彼に、私は自分自身を重ね合わせてしまい、それ以上は追求しなかった。

そこには触れずに、しばらくは普通に話してたんだ。

そのうち、一緒に来た男友達が、隣の部屋にあったギターを見つけて
「あ、ギターひいていい？」って。
部屋を出て行ってしまったんだ。

実は、彼とふたりっきりになるのは初めてで。
いつも仲間同士で皆で一緒にいたから。

だから、突如として訪れた二人っきりの空間に
私は、何を話せばいいか分からなくて。
仲間と一緒にいると考える間もなくするすると出てくる言葉が、全然出てこない。
時間にしたら5分とか10分とかその程度なのかもしれないけど、
沈黙がしばらく続いたんだ。

とにかく気まずくて・・・

隣の部屋で男友達が弾いてるギターの音だけが聞こえてくるの。

どうしよう・・って沈黙に耐えきれなくなったとき、
彼が急に私に抱きついてきた。

彼と二人っきりにのあるのが初めてなら、
こうして彼の体温を感じるのも初めて。

彼が私のこと好きじゃないのかも、ってずっと不安だったから
初めて感じた彼の体温の温かさに「私のこと好きでいてくれてるのかな」って嬉しくて久しぶりに心が満たされた気持ちになってしまった。

単純かな？今だったら、体目的、って疑いもあるのかもしれないけど、
その時は、求めてくれる＝自分のことが好きって思っちゃってたのかもしれない。


けど、その時は、彼が殴られているという事実と自分が重なって
「私なら彼を癒してあげられる」って何か思っちゃったんだよね。笑

彼になら何をされてもいい、って思った。

隣の部屋に男友達がいて、彼の弾くギターの音が聞こえてくる。

でも彼はそんなのおかまい無しなのか、
私をゆっくり押し倒して、小学生がするように拙いキスをした。

それが私のファーストキス。

もちろん、そこで終わるはずがなく、彼の手は、ゆっくり私の胸にのびていった。