しかし、民主主義が徹底した国であればあるほど、反国家事犯に対しては少しの寛容もないことを、我々は最近のスノーデン事件や米軍機密が大量リークされたマニング事件で目撃している。反テロ作戦の一環として、多くの市民を監視していた当局の活動を暴露したスノーデン氏は、永遠に米国の土を踏めないであろうし、米政府は彼を受け入れたロシアと外交的な摩擦または不和が生じることを甘受している。マニング氏の階級は一等兵にすぎないが、35年の懲役刑を受けた。
李石基議員は少なくとも表面上は直ちに政権勢力に挑戦するような政敵ではない。これまで韓国の進歩的傾向の知識人がそうであったように、政治的抑圧、民主主義の抹殺など憲法に反するような状況に耐えられず、立ち上がった抵抗運動家でもない。彼はいかなる論理も妥当性もなく、大韓民国を嫌い、北朝鮮を好み、北朝鮮に有利になり、韓国には不利になることばかりを行う極めて低質な北朝鮮追従者にすぎない。そんな李石基議員は今、勝者のように笑いながら騒ぎ立てており、メディアもそれを垂れ流している。最大野党・民主党も及び腰で、統合進歩党を国会に進出させたことへの責任逃れにきゅうきゅうとしている。統合進歩党は自分たちがいつ大韓民国を認めたのかと言わんばかりに、堂々と国会で国家情報院の「買収」「諜報活動」「でっち上げ」があったと叫んでいる。事件の発表がなぜこの時期なのかと、その恣意(しい)性を疑う人もいる。ここまで来れば、もはや健全な国ではない。
「李石基事件」を受け、我々にはすべきことが一つある。我々は南北に分断され、激しく対立する状況にあるとはいえ、多元化した社会である以上、一つの論理だけで国を率いていくことはできない。韓国社会には多くの異なる声があってしかるべきだ。しかし、「異なるもの」に押し切られてはならない。それは憲法という垣根であり、「大韓民国」という本質だ。それは我々全てが国を建て、出発する前に合意したことだ。李石基議員の類がその垣根を壊し、本質の座に就こうとすることをこれ以上容認してはならない。李石基議員の怪しげな笑いと図太さは、これまで日々の生活に忙しく、足元を見つめることができなかった我々を目覚めさせようとしている。