荒野の中、続く長蛇の列。
気温40度を超える中、シリア国内の戦闘から逃れてきた人たちです。
シリアとの国境近く、イラク北部にある難民キャンプ。
ほとんどが、シリアから来たクルド人です。
国連によると、難民の数はすでに4万人以上。
このままでは10万人を突破するとみられています。
これは、クルド人たちが多く暮らしていたシリア北部の町の映像です。
銃で応戦しているのは、クルド人。
激しい銃撃を加えているのは、イスラム過激派の武装勢力です。
この1年ほどは、イスラム過激派の武装勢力、「ヌスラ戦線」が特に激しい攻撃を仕掛け、犠牲者を増やしています。
背景には、世俗的なクルド人をイスラムの敵と見なすなど、宗教をめぐる対立があると指摘されています。
シリアのクルド人組織 サレハ・ムスリム氏
「アサド政権からの攻撃後、今度は過激派から攻撃してきたのです。」
イラク北部の難民キャンプに逃れてきた、アフメドさんとシンダーさんの夫妻です。
2週間前に待望の長男が生まれたばかりですが、突然、イスラム過激派の武装勢力の襲撃を受け、2日間かけて、難民キャンプにたどり着きました。
アフメドさん
「クルド人と分かればすぐ殺されます。
逃げるしかありませんでした。」
シンダーさん
「なんとかここまで来られて、少し安心しています。」
この日、難民キャンプを訪れたのは、イラク北部のクルド人自治政府のトップです。
シリアから来た同胞を全面的に支援することを表明しています。
イラク北部の街アルビル。
クルド人自治区の中心都市です。
イラクでは、旧フセイン政権のもと、クルド人はさまざまな弾圧を受けてきましたが、イラク戦争開戦後、国際社会の支援を得て自治区は大きく発展しました。
豊富な石油資源をバックに「第2のドバイ」と称されるまでになりました。
男性
「ここは中東で一番の大都会さ。」
男性
「街の発展はみんなの誇りだよ。」
イラクのクルド人自治政府は、隣国シリアのクルド人を守るためなら、あらゆる手段をとると警告しています。
クルド人自治区アルビル ハーディー知事
「もしシリアでクルド人大量殺りくが起きれば、彼らには身を守る手段がない。
我々は必ずシリアのクルド人を支援し、テロリストに応戦する。」
かつてフセイン政権の部隊との戦闘も経験した、イラクのクルド人武装組織は精鋭です。
すでに少数の工作員がシリア側に送り込まれ、偵察活動などを行っていると指摘されています。
今後、本格的な派兵となれば、外国の武装組織による、シリア内戦への新たな介入という事態になり、シリア情勢の行方はますます混迷を深めることも予想されます。