医学的に見て助かりそうな人が突然亡くなり、死にそうな人が奇跡的に回復し、肉体的には死んでいるはずなのに何日も生き続けている人がいる---こうした事例を数多く見るにつけ、私は次第に、人間の生死には我々の理解を超えた「何か」が働いているのではないかと考えざるを得なくなったのです。
臨死体験をした人々
その結果、私は「寿命が来れば肉体は朽ち果てるが、霊魂は生き続ける。その意味で、人は死なない」という考えに至りました。つまり、人間というのは肉体とエネルギー体、いわゆる「霊魂」に分かれているとしか思えなくなったのです。このことをふまえて考えれば、不可思議な遺体も理解ができます。本来ならとうに亡くなっていてもおかしくないような遺体と対面した時、私は「もうこの人は、肉体の中にいなかったのだ」と、理屈抜きに直感で感じることがありました。それはつまり、死を目前にして霊魂が肉体から離れつつあったということではないでしょうか。人が住まなくなった家はすぐに傷むと言います。それと同様に、人の肉体は魂を宿すための「器」であり「入れ物」だから、魂が抜けかけた体はどんどんボロボロになってしまうのだと理解したのです。
一体、人の生死とは何なのでしょうか。私はこれまで入院中の患者から臨死体験(本人は臨死体験と認識していない場合もある)を告白されたことが何度かあります。また、臨死体験をした人の話を詳しく聞いたこともあります。それを聞いた時、まさに人には霊魂が存在するという私の考えの裏付けになるものだと確信しました。
50代男性のAさんは、今から28年前、妹を乗せた車で事故を起こし、その直後に臨死体験をしました。ふと気がつくとAさんは妹と2人、大破した自分の車を空中から見下ろしていたといいます。すると隣にいた妹が突然、「お兄ちゃんは戻りなよ」と言い、その言葉を聞いた瞬間、Aさんは車の運転席に横たわったままの状態で目が覚めたそうです。「戻りなよ」と言った妹は即死状態でした。現場検証した警察官からAさんが聞いた現場状況は、臨死体験中に見た光景そのままだったそうです。
また、私は知人の医師から興味深い話を聞いたことがあります。彼は担当する患者から夢で別れを告げられることがあるというのです。それも、一度や二度ではなく、数年の間に何度もそうした夢を見たという。
こうした夢は正夢だったということが多く、その場合、患者が彼に別れを告げた時間と、病院で息を引き取った時間がほぼ一致していたそうです。別に彼に限ったことではなく、担当していた患者が夢枕に立ってお別れを言われたという経験をした医療関係者は、他にも何人もいます。
これは一般的に「予知夢」と呼ばれるものですが、私はこうした現象は、霊魂が生きている人の意識と繋がることができる、という事実を示していると思います。つまり、人は亡くなると肉体という枷が外れ、霊魂は自由になり、他者の意識にも共鳴できるようになるのではないでしょうか。
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