特集ワイド:続報真相 どないなんねん「堺の乱」 「大阪都構想」命運かけ来月市長選
毎日新聞 2013年08月23日 東京夕刊
だが輝かしい歴史があるまちなのに、散策するといま一つ雰囲気に欠けると感じるのはなぜだろう。堺の玄関口、南海堺東駅でタクシーに乗り「君死にたもうことなかれ」で有名な歌人・与謝野晶子生家跡を訪ねた。生家の菓子屋が現存しないのは致し方ないとして、あるのは晶子の写真と句碑だけ。千利休の屋敷跡には利休が使った井戸があるというのだが、柵に遮られて中には入れなかった。それぞれ他の場所に展示施設があるとはいえ、「ここに利休や晶子がいたんだ」と想像力を働かせるのが歴史ファンの楽しみ方でもあるのだが。
「宝の持ち腐れです」。研究者らが集う「与謝野晶子倶楽部」会長でもある難波さんは残念がる。「他の都市が驚くほどの歴史的な財産があるのだから、どう見てもらうかという配慮がもっとほしい。仁徳天皇陵を案内しても玄関口しか見せられない」
仁徳天皇陵(大山古墳)を中心とした一帯の古墳は「百舌鳥(もず)古墳群」と呼ばれ、大阪府や堺市などが世界遺産登録を目指している。「仮に成就したとしても、市外からのお客さんに満足してもらえる現状でしょうか」
その仁徳天皇陵が見られないものかと堺市役所本庁舎の21階にある地上80メートルの展望ロビーに上がってみた。付き合っていただいたのは関西を中心に活動する文化プロデューサーの河内厚郎さん(60)。「堺まつり見直し懇話会」で活性化の議論をしてきた人だ。
だが、古墳の方角には大きな森があるだけだった。「ここからはカギ穴の形は見えませんね。それより、ほら」。河内さんが指さした先には超高層ビル。大阪市阿倍野区にオープンした地上300メートルの複合商業施設「あべのハルカス」だ。大阪市では近年、大規模施設が相次いでオープンしている。「うかうかしていると堺は大阪への通り道になってしまう。世界遺産登録に向かっている今こそ、堺の個性をつくり上げるラストチャンスと言いたいですね」
「重要な政治決戦になる」。橋下市長は先月下旬、堺市長選への意気込みをそう語った。前回、現職の竹山氏を推したことについては「堺市民の皆さんに謝る。こういう人だと読み切れていなかった」と本音も。ただ、西林氏が勝っても市議会には都構想に反対する議員が多く、承認を得るのは容易ではない。
堺市長選でありながら、実態は「大阪の橋下VS堺の竹山」という構図。秀吉に自治権を奪われた過去の記憶と重ならないだろうか。