中国:石油閥汚職、拡大か 背景に指導部内権力闘争も
毎日新聞 2013年09月03日 東京朝刊
【北京・井出晋平】中国で、大手国有石油企業「中国石油天然ガス集団(CNPC)」の汚職事件が拡大の様相を見せている。汚職を取り締まる中国共産党中央規律検査委員会は1日、前CNPC会長で国有資産監督管理委員会(国資委)の蒋潔敏(しょうけつびん)主任(閣僚級)について「重大な規律違反」で調査を開始したと発表した。現職の閣僚級幹部が汚職調査の対象となるのは異例。石油閥の重鎮で前党政治局常務委員の周永康(しゅうえいこう)氏が取り調べを受けているとの報道もあり、事件の行方が注目されている。
蒋主任は、1972年に油田で技師として働き始め、2000〜04年に青海省副省長を務めたのを除き、一貫して石油畑を歩んだ。CNPC副社長、社長を経て11年に会長に就任。約200人いる党中央委員の一人で、3月に国資委主任に転じたばかりだった。現役閣僚級幹部が取り調べを受けるのは、11年に摘発され執行猶予付き死刑判決を受けた劉志軍(りゅうしぐん)元鉄道相以来。
一連の汚職事件は、先月26日に発覚。CNPCの副社長ら幹部4人が「重大な規律違反」で規律検査委の取り調べを受けている。4人は、いずれも蒋主任がCNPC在任中に幹部に登用されていた。
今回の汚職事件は、指導部内の権力闘争の側面も見え隠れする。取り調べを受けていると報道があった周氏は、CNPC出身で石油閥の重鎮。収賄罪などに問われている元重慶市党委書記の薄熙来(はくきらい)被告の後ろ盾だった。
薄被告は元側近が米総領事館に駆け込んだ事件の隠蔽(いんぺい)工作について、公判で「上層部の指示があった」と発言。公開された公判記録からは削除されているが、「上層部」は周氏を指すと取りざたされている。周氏は江沢民(こうたくみん)元国家主席と近く、「習近平(しゅうきんぺい)国家主席が江氏の影響力排除を狙っている」(外交筋)との見方も出ている。周氏に連なる人脈では蒋主任のほか、周氏のCNPC時代の腹心、郭永祥(かくえいしょう)元四川省副省長も取り調べを受けている。
中国では、市場を独占して巨大な利権を持つ国有企業は、党幹部らと結びつき、既得権益集団になっていると指摘されている。中でも石油閥は、資源開発や軍への燃料供給を通じてエネルギー政策や国防政策に大きな影響力を持っている。