米国の通信大手ベライゾン(ティッカーシンボル:VZ)が英国のボーダフォン(ティッカーシンボル:VOD)の所有するベライゾン・ワイヤレスの45%株式を1300億ドルで買い取ることが、ほぼ決まりました。
このディールは両社の取締役会の承認が必要ですが、早ければ月曜日にも正式に発表されると思われます。
現在、ボーダフォンの取締役会が招集されており、そこでの承認があればベライゾンは速やかに取締役会を招集する予定です。
今回のディールは世界の歴代のM&Aで第2位の規模です。第1位は1999年のボーダフォンによるドイツのマンネスマンAGの買収(1720億ドル)でした。
さて、今回、ボーダフォンが売り渡すと決めたベライゾン・ワイヤレスの45%はボーダフォンにとって「虎の子」の資産です。例えば成長率で言えば下のグラフのようにベライゾン・ワイヤレスはボーダフォンのその他の先進国の市場より高い成長率を誇っていました。
ベライゾン・ワイヤレスの45%を含めたときのボーダフォンの全社サービス収入成長率は+1.2%なのですが、ベライゾン・ワイヤレスの45%を除くと、成長率は-1.9%に落ちます。
このディールは両社の取締役会の承認が必要ですが、早ければ月曜日にも正式に発表されると思われます。
現在、ボーダフォンの取締役会が招集されており、そこでの承認があればベライゾンは速やかに取締役会を招集する予定です。
今回のディールは世界の歴代のM&Aで第2位の規模です。第1位は1999年のボーダフォンによるドイツのマンネスマンAGの買収(1720億ドル)でした。
歴代のトップ20M&A
ボーダフォン→マンネスマンAG 1720億ドル 1999年
ベライゾン→ボーダフォン所有のベライゾン・ワイヤレス(45%) 1300億ドル 2013年
ファイザー→ワーナーランバード 956億ドル 2000年
アメリカオンライン→タイムワーナー 942億ドル 2001年
AT&T→ベルサウス 851億ドル 2006年
エクソン→モービル 816億ドル 1999年
グラクソウエルカム→スミスクライン 772億ドル 2000年
SBC→アメリテック 731億ドル 1999年
ファイザー→ワイエス 683億ドル 2009年
サノフィ→アヴェンティス 669億ドル 2004年
東京三菱→UFJ 629億ドル 2005年
ボーダフォン→エアタッチ 615億ドル 1999年
ベルアトランティック→GTE 604億ドル 2000年
BP→アモコ 604億ドル 1998年
P&G→ジレット 583億ドル 2005年
トタール→エルフ 579億ドル 2000年
ファイザー→ファルマシア 578億ドル 2003年
JPモルガン→バンクワン 568億ドル 2004年
ロスネフチ→TNKBP 553億ドル 2013年
スエズ→GdF 552億ドル 2008年
さて、今回、ボーダフォンが売り渡すと決めたベライゾン・ワイヤレスの45%はボーダフォンにとって「虎の子」の資産です。例えば成長率で言えば下のグラフのようにベライゾン・ワイヤレスはボーダフォンのその他の先進国の市場より高い成長率を誇っていました。
ベライゾン・ワイヤレスの45%を含めたときのボーダフォンの全社サービス収入成長率は+1.2%なのですが、ベライゾン・ワイヤレスの45%を除くと、成長率は-1.9%に落ちます。
またベライゾン・ワイヤレスの45%がボーダフォンの売上高および営業利益にどれだけ貢献していたかを示すと下のようになります。(「その他」の大部分はベライゾン・ワイヤレス)
つまり営業利益の半分以上を稼ぎ出してきたわけです。
それほど大事な資産なのに、なぜボーダフォンはこれを手放すのか? というのはじっくり考えてみるに値する問題です。
まずベライゾンが支払う、1300億ドルという価格は、ボーダフォンにとって魅力的な値段だということが指摘できるでしょう。
次に金利の問題があります。今回のディールをやり遂げるために、ベライゾンは少なくとも500億ドルほど新規に借り入れる必要があります。FRBの量的緩和政策が終わり、今後、金利が高くなると、企業の借入金利のコストも上昇するリスクがあります。だから今、借りてしまう方が良いという考えが出るわけです。
次に競争の問題があります。ソフトバンクがスプリントを買収したことでスプリントは財務的な後ろ盾を得ました。このことは今後、設備投資競争が起きるのではないか? と業界関係者は予想しています。その場合、AT&Tやベライゾンなどのリーダー企業も、もう一段と設備投資を積み増し、競争力を維持する必要があります。これは負担になります。またそれだけの先行投資をしても、リターンはいままでほどは良くなく、投資効率が下がるという懸念もあります。
さらにテクノロジーのサイクルから言えば、スマホ・ブームによるサービス収入の増加はスマホの普及とともに一巡し、今後はメッセージング収入などに悪影響を与える、LINEに代表される様々なIPサービスの登場で、通信会社のマージンが圧迫されるリスクもあります。
加えてスマホの買い替えに際して、通信会社が実質的な割賦の信用供与をすることでプロモーションする営業の仕方が、中古スマホ市場の登場や、新製品の魅力の相対的低下などからいままで以上にリスキーになる危険性もあります。
ボーダフォンの今回の決定は、それらを勘案した上で(そろそろ潮時だろう)という判断になったのでしょう。
問題は1300億ドルのキャッシュを、ボーダフォンがどう使うかです。市場関係者はボーダフォンが欧州大陸のケーブル会社を買収し、いわゆるバンドル・サービスを強化するのではないか? と考えています。勿論、それは一番自然なシナリオです。
ただ欧州市場は成長率が低いので、むしろ長期的な視点に立てば、事業ポーフォリオを今後のスマホの普及が見込まれる新興国に大きくシフトする可能性も無いとは言えません。
(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack)
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つまり営業利益の半分以上を稼ぎ出してきたわけです。
それほど大事な資産なのに、なぜボーダフォンはこれを手放すのか? というのはじっくり考えてみるに値する問題です。
まずベライゾンが支払う、1300億ドルという価格は、ボーダフォンにとって魅力的な値段だということが指摘できるでしょう。
次に金利の問題があります。今回のディールをやり遂げるために、ベライゾンは少なくとも500億ドルほど新規に借り入れる必要があります。FRBの量的緩和政策が終わり、今後、金利が高くなると、企業の借入金利のコストも上昇するリスクがあります。だから今、借りてしまう方が良いという考えが出るわけです。
次に競争の問題があります。ソフトバンクがスプリントを買収したことでスプリントは財務的な後ろ盾を得ました。このことは今後、設備投資競争が起きるのではないか? と業界関係者は予想しています。その場合、AT&Tやベライゾンなどのリーダー企業も、もう一段と設備投資を積み増し、競争力を維持する必要があります。これは負担になります。またそれだけの先行投資をしても、リターンはいままでほどは良くなく、投資効率が下がるという懸念もあります。
さらにテクノロジーのサイクルから言えば、スマホ・ブームによるサービス収入の増加はスマホの普及とともに一巡し、今後はメッセージング収入などに悪影響を与える、LINEに代表される様々なIPサービスの登場で、通信会社のマージンが圧迫されるリスクもあります。
加えてスマホの買い替えに際して、通信会社が実質的な割賦の信用供与をすることでプロモーションする営業の仕方が、中古スマホ市場の登場や、新製品の魅力の相対的低下などからいままで以上にリスキーになる危険性もあります。
ボーダフォンの今回の決定は、それらを勘案した上で(そろそろ潮時だろう)という判断になったのでしょう。
問題は1300億ドルのキャッシュを、ボーダフォンがどう使うかです。市場関係者はボーダフォンが欧州大陸のケーブル会社を買収し、いわゆるバンドル・サービスを強化するのではないか? と考えています。勿論、それは一番自然なシナリオです。
ただ欧州市場は成長率が低いので、むしろ長期的な視点に立てば、事業ポーフォリオを今後のスマホの普及が見込まれる新興国に大きくシフトする可能性も無いとは言えません。
【略号の見方】
DPS一株当たり配当
EPS一株当たり利益
CFPS一株当たりキャッシュフロー
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