河野太郎

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脱「脱原発のセクト化」

投稿日: 2013年08月30日 11時32分

ヨーロッパの政治家、ジャーナリスト、オピニオンリーダーと話をすると、必ずと言っていいほど、なぜ、福島第一原発の事故が起きた日本で脱原発が政治的な争点にならないのかと聞かれる。

明確にこれだという答えはないのだが、と答えつつも、やはりこれが一番問題だと思っていると挙げるのが、日本における脱原発運動の、なんというか「セクト化」ではないかということ。

かつて福島以前にも、「反原発」運動があったが、その中には何かを実現させるための運動というよりも、「反原発」を利用して自分たちの勢力を強くするためにやっていたようなグループもあったようだ。

福島第一原発の事故以後、「脱原発」を真剣に、あるいは現実的に目指す人が飛躍的に増えたのは事実だ。

現実的に脱原発を実現しようとするならば、同じ方向を向いている人を結集し、最大公約数の目標を多くの人で共有していくことが大切なはずだ。

しかし、ネット上の様々な書き込みを見てわかるように、そうした動きに対して逆行しているものも多い。

原発を推進しようとする勢力、原子力村の利権を可能な限り守っていこうとする声と戦うのではなく、脱原発を主張している人たちの間の細かな主張の違いを取り上げて、あいつはだからダメだ、このグループはまやかしだ、こんな主張はとんでもない等と、本来、脱原発という共通の目標を持っているはずの人を盛んに非難する人がいる。

再稼働なんて絶対に認められない。いや、将来的には脱原発するにしろこのまま原発を全く動かさないなんて非現実的だ。

今すぐ脱原発と言わないのは子供の未来を考えていないからだ。2030年までに段階的に原発依存を減らしていくのが現実的だ。

がれき処理に賛成なんて脱原発派じゃない。何を言ってる、被災地のことを考えない脱原発なんか自分だけ良ければいいのか。

脱原発のためには電気代がいくら高くなったって仕方がない。馬鹿なことを言うな、エネルギー安全保障を考えた現実的な脱原発のシナリオが必要だ。

共産党なんか非現実的だ。自民党なんか原発推進じゃないか。原発ゼロだけど再処理は継続という民主党なんかわけわからない云々。

たとえば原発ゼロの会は、なるべく共有できる目標を一緒に共有しようとしてスタートした。

再処理はやめよう。再生可能エネルギーを増やしていこう。どこかの時点で脱原発を実現しよう。

これならかなりの人が思いを共有できる。

本当に脱原発を実現しようというならば、敵は推進派であり、まだ残る原子力村・電力村である。

脱原発という同じ方向を向いている他人の悪口を言っても脱原発は進まない。

大きな現実的な目標を共有して運動をすると、自分のグループがその中に埋没してしまうと危惧する人たちは、それを嫌がる。

自分たちが一番正しい、他のグループはいい加減だということをことさら強調することにあくせくしている人たちがいる。

そういう人たちは、事細かな違いを取りあげて、努力している人でも批判する。

インターネットの書き込みを見ていると、そういう人が少なくないのに驚く。

そういう人たちの揚げ足取りのような批判を聞いているうちに、脱原発にかかわることに幻滅して離れていく人たちもいる。

後ろから鉄砲を打つような人を相手にするのはやめよう。

脱原発という同じ方向を向いて、なるべく多くの目標を共有していきながら、現実的に、一歩ずつ歩いていこう。

相手はいまだに闇の中でうごめく原子力村だ。


(※この記事は、2013年8月30日の「 河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり」より転載しました)

 

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人気コメント
10分前 (16時28分)
諸外国で福島のような事例が事故として扱われるであろうかと疑問に感じています。
潔癖な建前論に対し、あのような未曽有の大災害なのだから
やむを得なかったのではないかと本音では思っている人が多いのではないかと思います。
もちろん既得権で太ってきた原発村に対しての反発は大いにあるでしょうが
いくら嫌いな原発ムラであっても、では他の誰なら事故を未然に防げたのか
と言う疑問を誰となく持っているかたが多いのではないでしょうか。
現実に同じような状況でも耐えた女川や福島第二の原発に対して
あまり大きな声にはなっていませんが逆に信頼感を深めた方も多いかもしれません。
反対している方々にはとんでもない考えかもしれませんが
当事者でない方々は自身の身に直接降りかかる電力不足や料金値上げの方が
問題なのではないかと感じています。
4時間前 (12時51分)
大きな目標に向かってお互いに協力していくことが必要ですね。細部の違いを見つけて、揚げ足どりをしてもキリがありませんからね。
2時間前 (14時11分)
最近は、言葉尻を取るのは、揚げ足を取るのはよそうとか、細かい事をつくのは止めよう、大きな目標に、という言葉を見る事が多くなってきた。

自然エネルギーで脱原発をというスローガンを声高に主張してきたブロガーが言い始めているのに気が付くだろう。

これは最近、識者を含めて多くの人達がその矛盾を指摘して広く理解されてきたからだ。

細かい事は指摘しないで! 確かにこれは正論である。
でも不可能な事を主張して、国の政治の方向を曲げて国民を奈落に突き落としてしまう重要な事である。

「自然エネで脱原発を」この夢想性と矛盾をつかれて、合理性・可能性を説明できなくて、ここにきて細かい話はよそう、細部をつくのはよそう、は全く笑止である。
2013年09月01日 00時37分
この記事はもう正に言いたい事を言ったくれた、という感があります。エネルギー政策の話をするときには私は必ず、「私は反原発派でも推進派でもありません」と前置きして始めます。それでも他資源のデメリットを口にしただけで、「お前は原発推進派だ!」から始まって、極端な場合ですとカルトじみた陰謀論にまで飛躍します。こうなるともうお手上げです。逃げ出す以外にありません。

イデオロギー闘争に明け暮れた団塊の世代が隠居の年齢を迎え、ようやく子供も立派な中年になり孫も成長して安泰、ということで時間的に余裕ができました。はて、この世代がノスタルジーに駆られて何か活動しているのかな、などとも思いましたが、実際は若い方々が殆どのようですね。心情的に人間は二世代上の文化・思想に傾倒する傾向があると聞きますから、そういう意味では孫の世代が祖父母の影響で思想闘争に憧れてしまっているのかもしれません。

ヨーロッパのメディアで行われている議論も玉石混合で、素晴らしいと言えるかは首を傾げます。ただ少なくとも経済(コスト)・科学(安全性)・政治(推進力)の観点から実現性を見極めようじゃないか、という基本的コンセンサスは明確で、分かりやすい議論にはなっていると思います。最後に政治的というか政局的(選挙)争点にならないという意味では、どこも似たり寄ったりでは?突っ走ったのはメルケル氏くらいではないですか?「脱原発だ!」とぶち上げたはいいが、梯子を外された形になって今にっちもさっちも行かなくなり叩かれてます。CDUはそれでも選挙には勝つとは思いますが。そういう意味では、日本の政治家は利口、賢明、慎重だ、というだけの事なのではないでしょうか。

一つ話が逸れますが、ひと頃は影を潜めた悪質なデマがまた蔓延し始めています。放射能のリスクを広く世間に知らせるという事と、科学的根拠の無いデマを流布するという事には雲泥の差があること、そして後者は戒められるべき行為であると、良心あるメディアから発信して頂きたく願うものです。
2013年08月31日 16時25分
脱原発の活動なんてもう完全に中核派(もしかしたら革マルなのかもしれないですが)に食い尽くされてるでしょ
去年の今頃、新宿ヨドバシカメラの前を反原発のデモ隊が練り歩いてましたが
原発を今すぐゼロに
打倒日帝
を一緒に叫んでましたよ
2013年09月01日 03時46分
笑うに笑えないですね。ふと、このコメントを拝見したあと記事を読み直したら、本文中の「敵は…云々」という部分が気になりました。「敵」と「戦う」はイデオロギー闘争時代のレトリックを想起させつい闘争戦士として意気高揚してしまう人もいるかも?「論破すべきは」と丁寧に表現した方が良いかもしれません。つい煽ってしまうのはやはり政治家だからでしょうか。
2013年08月31日 10時11分
「逆らわない者は味方」
「内輪で争う家は立たず」

どちらもキリストの言葉ですが真実ですなぁ……。
2013年08月31日 00時38分
とりあえず「脱原発」というのが広すぎてよくわからない。
「即時廃炉!」「百年後に原発やめます!」でも脱原発でしょ。

将来のエネルギーと既存原発の再稼動の問題をわけてもらいたい。
2013年08月30日 18時04分
脱原発を本気で主張する政治家がいない。選挙の時はいたのに。「セクト(宗派)化」となっても致し方ない。核(中心)となる人物がいないのだから。
2013年08月30日 17時26分
河野議員の「活動のセクト化」という指摘は反原発の活動家のみならず、政治家やひいては日本人全体のセクト化と言うことにもつながるのではないだろうか。
「大きな現実的な目標を共有して運動をすると、自分のグループがその中に埋没してしまうと危惧する人たち」は「自分の存在感を示したい」、「目立ちたい」、「自分は特別である」ということが自分にとって最大の命題であり、その時々の自己の立場を都合よく論理化し、スイッチの切り替えを繰り返す。政治の世界でもよく「政策の一致」と言うが、「政策の一致」というスイッチは案外あてにならない。反原発運動における持続可能性と実現可能性とは入り口の議論で決して大きな声をだしたり、過激な発言を繰り返すことではない。重要なのは人類史上未曾有の事態に対して運動が一過性で終わらず、明けても暮れても自らの未来や子供達の未来にこだわることである。日本人一人一人の「やりぬく力」が問われている。
2013年08月30日 17時24分
いかに実現するか、に全力を注ぐべきなんですよね。

いかに自分が正しいかを証明するのではなく。
2013年08月30日 15時01分
正しい選択をするためには、正確な情報の開示と共有が必要です。
こまぎれの、不正確な情報が入り乱れ、それらが各個人や団体のなかにあるのでは、
実りある議論は出来ません。
各団体の利益を最大化するために、有利な情報を提示し、不利な情報をかくすからです。

まずは、圧力に負けずに情報公開をお願いします。
「特別秘密」の名の下に、しまわれてしまうことの無いように。

福島の廃炉が完了するまでに、何人の作業員が必要で、
作業員の総被爆量はどのくらいか。

プルサーマルが3号機で行われていたために、
行わなかった場合と、被害の広がりがどう違ったか。

原発の「ボイスレコーダー」のような、詳細データベースの分析結果は?

原発の通常運転でどのくらいの放射性物質が、海や空中に放出されているのか。

などなど、闇の中で意見が飛び交えば、
ヘイトスピーチばかり出てきて、前に進めません。

利害関係者からの圧力に負けないで、
正式な報告書類も、内部告発を検証した結果も、
専門家の意見が分かれたら、そのすべての意見も、
わけへだてなく公開して欲しいです。
2013年08月30日 14時54分
「原発の発電コスト計算に誤魔化しがあって、本当は非常に高いのではないか。」という意見には賛同しますが、それを言う人が、「化石燃料を焚くコストは安い、地球温暖化対策費は考慮しない。」ってな事を言っているのは、困ったもんだと思います。

化石燃料枯渇後も、原発の発電コストが高いままなのか議論しないで、原発の発電コストが高いというのが永久の真理であるかの様な主張には、無責任な印象を受けます。

「放射能の危険」には賛同しますが、昨今のゲリラ豪雨・洪水・竜巻等の被害状況を見ても、「化石燃料を焚く危険」を認めない人々は、「『健康の為なら死んでも良い。』と云う健康オタク。」と同類に見えます。

太陽光・風力・波力といった自然エネルギーの推進には賛同しますが、火山の大噴火・隕石落下等の、地球の歴史上何度もあった事で、太陽光・風力・波力が全滅する事態を考慮しない、即ち、エネルギー安全保障を無視した御意見には、とてもついて行けません。

結局、ベストミックスを追求する様な現実的議論が脇に追いやられて、感情論・イデオロギー論を振りかざす極端な意見が大手を振っているのが問題なのだと思います。
2013年08月30日 14時18分
中核派など警察のブラックリストに載ってるような人々を取り除くだけでも少しは正常化できると思うけど、もう遅いでしょう。
イメージってのは定着してしまうと変えるのが難しい。
2013年08月30日 12時39分
エネルギー需要と、エネルギー生産技術の発展、核廃棄物の量的臨界点を
グラフにして見れば、原発0が歴史的必然なのは解ると思いますが。
本来なら、プロセスを議論すべき所が、何時も違う方向に向いている様に
思いますね。
まあ、賛成派も反対派も真面に議論するなら勉強した方が良いと思いますね。