従軍慰安婦問題:見えぬ糸口 民主党政権「提案」拒まれ 「日韓両国がもう少し真剣に検討していれば」
毎日新聞 2013年09月02日 東京朝刊
韓国外務省は8月30日、報道官声明を発表。韓国が慰安婦問題で要求している請求権協定に基づく協議に日本が早く応じるよう求めた。日本に対し「被害者の痛みを癒やすことのできる責任ある行動を示さねばならない」と訴えた。
陳昌洙(チンチャンス)世宗研究所日本研究センター長は「日韓両国が昨年の提案をもう少し真剣に検討していれば、現在のような厳しい状況にはならなかっただろう」と指摘。その上で「自民党政権が民主党政権と同じ案を出すことはないだろうし、韓国側もさらにハードルが上がっている」と述べ、状況はさらに厳しくなっているという見方を示している。
◇悲劇理由に関係停滞、誤りだ マケイン米上院議員が苦言
「恐ろしい悲劇を理由に国家間の関係を改善させないことは正しいアプローチではない」
8月26日、ソウルで講演した米共和党重鎮のマケイン上院議員は、歴史認識問題を巡って日韓関係が停滞していることに苦言を呈した。
マケイン氏は「日本の憲法が制定された時とは国際情勢が大きく変化している」と指摘し、集団的自衛権行使に関する日本国内の動きにも理解を示した。
ただ、慰安婦問題については「言葉で表現できないほど残虐な行為に苦しんだ女性たち」に対する「許しがたく、残虐な行為だった」と語った。
マケイン氏の発言について、井口治夫名古屋大教授(米国政治外交史)は「日米韓の連携が米国の国益なので、米国は中立的な立場を取りながら、日韓にうまくやってほしいということだ」と指摘する。ただ、慰安婦問題については「米国は、今の価値観を過去に適用して考える傾向がある。今の感覚なら慰安婦問題をおかしいと思うのは当然だ」と話す。
外交政策に携わる日本政府高官は、慰安婦問題での日本に対する視線が厳しいことを認め「21世紀の女性たちに受け入れられる説明でなければ、慰安婦問題について日本の言い分を聞いてくれる国はない」と語った。