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02 Sep 2013 11:19

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カジノ解禁へ向け 「地固め」進めるパチンコ業界

WEDGE 8月29日(木)12時50分配信

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カジノ解禁へ向け 「地固め」進めるパチンコ業界

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カジノ解禁へ向け 「地固め」進めるパチンコ業界
マカオのカジノ。日本ではカジノ解禁へ向けパチンコ業界各社が様々な動きを見せる

 「ねじれ国会」解消により今後成立する可能性が高まった法案がある。IR(統合型リゾート)推進法案、通称「カジノ法案」だ。産業競争力会議などで議論が進んでいる他、安倍首相はカジノを推進する超党派の国会議員による国際観光産業振興議員連盟(IR議連)の最高顧問を務める。いよいよカジノ解禁が現実味を帯びてきた状況だ。

 カジノを議論する上で、外せないのが、遊技人口1260万人、市場規模18兆円を誇るパチンコ業界の存在である。カジノ解禁の暁には企業に運営を委託することになるが、現時点で国内に運営ノウハウをもつ企業は存在しない。比較的業態の近いパチンコ業界にとっては好機であり、実際幾つかの企業が動きを見せる。

シーガイア買収やマカオ企業への出資

 パチンコメーカーを傘下にもつセガサミーホールディングスは複合施設運営のノウハウ習得のため、2012年に宮崎県の「シーガイア」運営企業を子会社化した。韓国パラダイスグループと仁川市エリアにおけるカジノを含む複合型リゾート施設の開発事業に関する合弁会社も設立したが、加えて安倍首相や国家公安委員長と会合を重ねるなど、ロビー活動も活発化させてきた。

 メーカー主体の同社だが、スロット機の納入でなく、オペレーターの座を狙っている。カジノでのスロット機納入は多くて1000台。ヒットすれば10万台販売できるパチンコホール向けとは比較にならない。

 パチンコホール運営企業では、12年香港証券取引所へホール運営企業として世界初の上場を果たしたダイナムジャパンホールディングスの動きが目立つ。100%子会社のダイナム香港は、マカオでカジノ施設を保有するマカオ・レジェンド社に出資し、カジノ事業のノウハウ吸収を図っている。

 仮にダイナムが日本版カジノのオペレーターになったとすると、同一グループが運営する娯楽施設の片方が合法、片方がグレーゾーンという奇妙な状態となる。

 1つの議論として出てくるのが「パチンコ換金合法化」である。パチンコホールにおける換金行為は違法という声も強く、限りなく「クロ」に近いグレーゾーンで営業をしているに過ぎない。これを合法化しようという動きだ。

 合法化へは様々な障壁があるが、平等性の確保が最低条件の1つと言われる。パチンコ機はパチンコホールが釘調整(厳密には違法)で利益をコントロールしているのが現状であり平等とは言えない。

 そこで考案されているのが、ECO遊技機(封入式パチンコ機)である。玉は機械内を循環する仕組みで、封入密閉であることから釘の調整や基盤変更が物理的にできない。客観的な透明性が確保され、合法化に一歩近づくというわけだ。

 パチンコメーカーSANKYOは遊技機の特許を最も多く保有し、関係者は「毎年50億円程度の特許使用料収入がある模様」と話す。封入式パチンコ機に関する数多くの特許も10年以上前から出願し、取得している。

 12年末時点の全国のパチンコ機台数は約300万台。合法化の流れが加速し、規則改正となれば、パチンコホールは封入式パチンコ機に入れ替えなければならなくなる可能性がある。封入式パチンコは「1台100万円程度」(関係者)と言われており、すべて置き換えられると、3兆円規模の金銭がホール側からメーカー側に流れることになる。封入式の多くの特許を有するSANKYOは他社が作った封入式パチンコ機が売れたとしても特許使用料が入る。SANKYOにとってはカジノ解禁そのものより、パチンコ合法化に関心がある。

 「グレーゾーンだから儲けることができる。ヘタに動いて目立つことはむしろマイナス」と話すパチンコ業界関係者も多く、今のところ各社の動きに統一感はない。

WEDGE編集部

最終更新:8月29日(木)12時50分

WEDGE

 

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