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敦賀原発断層審査、信頼性に課題 調査団も不備認める

(2013年5月23日午前7時05分)

 日本原電敦賀原発2号機をめぐり半年近く行われた規制当局の断層調査は十分だったのか。地元自治体や電力業界が「拙速」と反発するだけでなく、敦賀を担当した専門家自身も調査や審議のあり方の不十分さを認めている。原子力規制委員会の田中俊一委員長は22日の会合で「ほかの原発でどう判断するか、あらためて検討する必要がある」と言及し、手法の見直しを検討する考えを示した。審査の在り方、信頼性には課題を残している。

 先週16日の報告書をまとめた評価会合では、4人の専門家全員が審査のあり方に疑問を呈していた。

 堤浩之京都大大学院准教授は「変動地形(の専門家)に偏っている。何らかの形で外部の方に入ってもらい、その分野のコメントをもらうなどすれば、より良い評価になる」と人選を含めた根本的な問題提起を行った。

 こうした指摘は以前からあり、現地調査に参加していない専門家の意見を聞くピアレビューを3月に実施した。堤氏の発言は「ピアレビューは報告書の論理の組み方と表現を議論する場で、破砕帯の評価ではなかった」(濱田康男原電社長)との見方を暗に認めたとも取れる。

 4人の中で唯一地質学を専門とする藤本光一郎東京学芸大准教授は「論文に活断層であると書けるようなものではないが、否定はできない」と説明。地層が削り取られた原発敷地内での調査の難しさを物語った。宮内崇裕千葉大大学院教授は「いろいろな圧力もあった」と語り、活断層の根拠としたK断層について鈴木康弘名古屋大教授は「詳細な情報は十分出てきていない」と認めた。

 評価会合の報告書を了承した22日の規制委の会合で、調査団を取りまとめる島崎邦彦委員長代理は「K断層が見つかっていなければ結論が変わっていた」と発言。これに対し更田豊志委員は「十分な調査がなされていないと(活断層が)見過ごされてしまう」との懸念を示し、必要なデータを得るための調査を事業者側に強く要求する必要性を訴えた。

 「(昨年12月の)1回目の評価会合でほとんど結論が決まってしまい、データに基づく議論ができる状況ではなくなった」。旧原子力安全・保安院の専門家会合メンバーとして現地調査に加わった東北大の遠田(とおだ)晋次教授は審議の流れそのものに問題があったとみる。6月末まで原電が行う追加調査の結果を待たずに議論を打ち切るのも不公平としている。

 規制側と事業者側が対立する構図の中で進んだ今回の審議では、さまざまな課題が浮き彫りとなった。

 敦賀のほか県内の美浜、大飯、高速増殖炉もんじゅ、青森県の東通、石川県の志賀の5原発でも調査を実施または計画中だ。田中委員長は「いくつかの課題が提示された。今後の活動に反映させたい」としているが、納得の得られる審査の手法を確立しなければ、断層調査をめぐる規制当局の信頼は高まらない。

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