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2013年8月29日(木) 東奥日報 ニュース



■ 貨物船座礁半年、撤去めど立たず

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森山海岸に放置されたままの座礁船。事故から半年が過ぎるが撤去のめどは立っていない=22日
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 深浦町岩崎地区で3月1日に発生した貨物船「AN FENG8」の座礁事故は県、町と中国人船主との交渉が一向に進展しないまま、半年が過ぎようとしている。県や町はこれまで、船主に対し4度にわたり撤去要請を出したが、説明や謝罪などの反応はない。船体撤去のめどや、県や町が支払った流出油の処理費や船体固定作業費の回収の見込みが、全く見いだせない状態となっている。

 現在、船周辺の海岸には流木、ペットボトルなどのごみが漂着し、さびた船体とともに付近の景観を著しく損なっている。ほぼ毎日、この海岸を散歩しているという近所の男性(74)は「船が来て潮の流れが変わったのか、ごみが来るようになった」と渋い表情だ。

 座礁船は、中国が本社の「船体保険」と、英国が本部の「船主責任保険(PI保険)」に加入。船体保険は既に船主側に保険金を支払ったという。後の処理は船主の判断を受けて、船が加入するPI保険が対応することになる。

 海岸法に基づき船が放置されている森山海岸を管理する県は3、5、7月の3回、町も3月の1回、船主側に国際郵便や電子メールで即時撤去を要請してきたが、船主側からの連絡は一切ない。船主との交渉に当たっている弁護士事務所から県が受けている説明によると、座礁船は3人の中国人が共有しているという。そのうち2人は船体を別の場所にえい航して修理し、再度使うことを希望しているが、もう1人は廃船したいとの意向。3人の意思統一ができないため、手続きが前に進まない状態だという。

 深浦町の吉田満町長は「責任の所在があいまいになっている。最終的には国が動かなければ解決しないのでは」と懸念する。

 これまで流出油の処理や船体固定作業などの費用として県、町が支出した約2400万円の回収は、現時点では難しいという。

 燃料油は抜き取ったため海洋汚染の危険はないが、新深浦町漁協の福沢欣一岩崎支所長は「船の前が浮き、浸水した中央部分が沈んでいるような感じ。変な力が船体にかかりバランスが悪くなっているのでは」と心配する。県河川砂防課の田中克人総括主幹は「秋以降の台風で船体がどの程度持つか。船体が壊れて(流出し)被害が出ないとも限らない」と危惧する。

 PI保険側の委託で事故対応に当たってきた井林修身検査員は「浸水が進んでおり、船をえい航して移動するのは困難。あの場所で船体を切断するしかないが、作業に3カ月はかかる。仮に9月から作業を始めても11月には海がしけるので中断せざるを得ない。年を越して、また春以降に作業が持ち越しとなるのが最悪のシナリオ」と話している。

深浦の座礁船

 3月1日の深夜、強風、高波を受け岩崎地区の笹内川河口付近で座礁。乗組員12人にけがはなかった。その後の風と波で船は数百メートル南に移動した。現在は正道尻地区の海岸(森山海岸)に4本のワイヤと4本のロープで固定されている。さびが目立ち、舵(かじ)が脱落するなど船体の損傷は進行。町によると船底部に少なくとも長さ10〜15センチの亀裂が2カ所にあり、エンジンルームなどに浸水している。船体に残っていた重油と希釈用の灯油計95.5キロリットルの抜き取り作業は4月末に完了した。

座礁事故の処理

 国土交通省によると、座礁船の撤去は原因者である船舶所有者(船主)の責任で処理するのが原則。だが船主に資金力がなかったり、何らかの理由で撤去に動かないケースもあり、地方自治体が肩代わりしたケースはこれまでも多数ある。本県では2005年2月に小泊岬で木材運搬船が座礁した事故で、船体の撤去費用など約3億5千万円を国、県、中泊町が負担した。

 国は05年3月、保険未加入の外国船舶の入港阻止へ、100トン以上の外国籍の船舶に、事故で発生した漁業被害などを補償するPI保険(船主責任保険)への加入を義務付ける船舶油濁損害賠償保障法を制定した。

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