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中国の「角筆」刻まれた新資料、金沢文庫80周年記念展で特別公開/横浜

2011年1月4日

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称名寺に寄進された宋版一切経の一部。丸の中は、読経する際の音の長短、抑揚を指示しているとみられる符号(県立金沢文庫提供)

称名寺に寄進された宋版一切経の一部。丸の中は、読経する際の音の長短、抑揚を指示しているとみられる符号(県立金沢文庫提供)

 木や竹を削って先端をとがらせ、墨を用いず紙にくぼみをつけるだけの筆記具が、いにしえの東アジアに伝えられた。「角筆(かくひつ)」と呼ばれて早くは漢(中国)で使われた、この筆跡が称名寺(横浜市金沢区)の国指定重要文化財「宋版一切経」に刻まれていることが研究者らの調査で分かった。経典は1261(弘長元)年、同寺開基の北条実時が中国から取り寄せ、寄進した木版印刷。経典を読み解いた跡が角筆で表され、調査が進めば当時の中国における文法などが初めて明らかになるという。

 調査したのは広島大学名誉教授で角筆研究の第一人者、小林芳規さん。京都・醍醐寺の宋版一切経を5年にわたって調査し、角筆文字があることを発見、昨年10月に研究成果を公開したばかり。そこで、称名寺に伝わった同じ経典の調査を同11月末、保管する県立金沢文庫に申し入れた。

 両寺の文献で小林さんが注目するのは、これらが木版印刷により日本の各寺院に大量に伝わった宋版一切経である点だ。「各寺院に残された一切経の角筆文字を調べることで、中国の経典の読み方や文法が初めて明確になる。また、当時の言語文化の国際的交流をたどるきっかけとなります」と期待する。

 称名寺には、中国(宋)から取り寄せた七千帖(じょう)に及ぶ一切経のうち約3500帖が現存。小林さんが100帖ほどを調べたところ、読経の抑揚を指示する記号や各種の点が角筆で記されていた。

 興味深いのは、名詞や動詞の使い分けなどを傍点で指示する書き込み。こうした文法表記から小林さんは「当時の経典の読解方法や文法意識を知る貴重な資料となる」と話す。宋版一切経は国内20の寺院などに保管されており、さらに調査が必要と主張する。

 角筆文字は、1574(天正2)年に写された県立公文書館所蔵の「御成敗式目」にも確認されており、称名寺の文献は県内最古となる。金沢文庫では「国語学や仏教における新しい視点を得ることができる。さらに類例の発見に努めたい」と話している。

 角筆の書き入れがある宋版一切経は1月4日から16日まで、金沢文庫80周年を記念して開催中の企画展「仏典大図解」で特別公開。11日は休館。同館電話045(701)9069。


◆角筆
 源流は中国とみられる。経典を通し新羅(朝鮮半島)にも伝わって発達。奈良時代の日本にも影響し、かたかなの誕生に結びついた。日本最古の文献は749(天平勝宝元)年の正倉院文書。紙の劣化により文字が肉眼で認識できない例もあり、金沢文庫の宋版一切経も1997年、重要文化財指定の際の調査では、その痕跡は気付かれなかった。小林さんは紫外線や赤外線を遮断する特殊ライトで確認した。 

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