04年10月21日 木曜日
■アレクサンドル・グロタンディーク
数学者の孤独な冒険―数学と自己の発見への旅 (収穫と蒔いた種と)
- 作者: アレクサンドルグロタンディーク,辻雄一
- 出版社/メーカー: 現代数学社
- 発売日: 1989/02
- メディア: 単行本
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「新しい観点」をお披露目中のアレクサンドル君と途方に暮れる天才諸氏(→)。
数学者グロタンディークの浩瀚な自分史『収穫と蒔いた種と(原題)』は、以前
この日記で「ラケットをもたない構え」を比喩に私が提唱した「悪あがき美学」
のひとつの達成だろうと思う。
自分がどれだけ偉大なことを成し遂げたかを分かってもらおうと、自らが築い
た「作品」の描写に言葉を尽くす。そのあがきっぷりが滑稽としかいいようが
なく、あまりに必死なので、こちらもきっとすごいことをやったんだろうと軽
信し、なんとかわかってあげたいと好意を抱き、一生懸命字面を追う。
>私の人生のこの長い時期(1950〜1969)、私の時間とエネルギーのほとんど
>すべては、「部分部分にわたる仕事」と呼ばれるものに投入されていました。
私の人生も、ただ不徹底であるという意味において、万事が部分的な遊行です。
>つまり仕事が進むにつれて、私の中にある声(あるいは守り神・・・)が私
>にささやく筋書きにしたがって、建てることを厳命された家のすべての部屋
>の建設のために必要とされる、加工、組み立て、すり合わせといった細かい
>仕事に没頭していたのでした。
えーと、職業は大工さん?。
>量の面で言えば、これらの激しい生産の年月のあいだの私の仕事は、とくに、
>論文、モノグラフ、セミナーの形での一万二千ページほどの発表によって、
>また数千とは言わないまでも数百の新しい概念によって具体化されました。
>数学において私がもたらせた最良のものは、まずはじめに私が「かいま見る」
>ことができ、ついで忍耐づよく「引き出し」、多少とも発展させることが出
>来た「新しい観点」です。
ここまでアバウトな説明で、自らの業績を「最良」と言い切るところがうける。
とにかく面白い本なのに、絶版なんだなあ。