中日新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 北陸中日新聞から > 北陸発 > 記事

ここから本文

【北陸発】

五輪招致 汚染水で混迷 森元首相 本紙インタビュー

東京五輪招致について話す森喜朗元首相=30日、石川県小松市で(河口貞史撮影)

写真

「日本の力 見せる時」

 九月七日の二〇二〇年夏季五輪の開催都市決定まであと一週間余り。東京招致に向け、政財界一体となった招致委の評議会議長を務める森喜朗元首相は三十日、本紙のインタビューに「(福島第一原発の汚染水漏れ事故の報道で)ますます分からなくなってきた」と情勢を分析。安倍晋三首相が出る最終プレゼンテーションでの対応が重要との認識を示した。(田嶋豊)

 一九年のラグビーワールドカップ(W杯)招致を成功させた森氏は、今回もきめ細かな采配(さいはい)を発揮。日本オリンピック委員会(JOC)が中心だった前回のコペンハーゲンの反省から「敗因分析も明確にない中、戦略を立て直した方がいい」と指示。招致委に外務省や文部科学省の人間を送り込み、あらゆる団体を網羅し、国民的運動として盛り上げてきた。

 マドリードと東京の決選投票をにらんだ情勢も一部伝えられるが、森氏は王室を巻き込んだスペインの動きを警戒。さらには「アンフェアだが、欧州における汚染問題のネガティブキャンペーンが痛手だ」と分析する。

 一方、その対応をめぐり、二十九日の出発直前まで竹田恒和理事長らと協議。森氏は国際オリンピック委員会(IOC)委員には欧州勢が多く「風で(票が)動くこともある」と警戒感を募らせ、プレゼンに臨む首相に「ネガティブキャンペーンをうまく打ち消す対応をしなきゃいけない」と注文する。

 戦後、国民に自信と希望を与えた一九六四(昭和三十九)年の東京五輪から半世紀。森氏は「東日本大震災もあった。復興と元気、世界中に日本の力を見せる時だ」と強調する。日本だけではない。「スポーツの世界で取り残されているアジアの存在感を示し、理解してもらう機会になる」と期待を込めた。

改憲「国民の意見聞いて」

 森元首相は本紙のインタビューで、改憲や集団的自衛権の解釈見直しなどに積極姿勢を打ち出す安倍政権に対し「そこまで踏み込んで良いのかという思いが正直ある」と述べ、慎重な対応を求めた。

 自民党の実力者だった古賀誠元幹事長(73)や野中広務元官房長官(87)らが、改憲発議要件を定めた九六条見直しに反対を表明するなど、政界でも安倍政権の姿勢に慎重な意見は少なくない。

 森氏は「僕らの世代には、そういう気持ちは少なからずある」と話し、実体験で戦争を知る世代として古賀氏らの考えを理解できると説明。その上で「もっと慎重に国民の意見を聞いて判断していくべきだ」と安倍政権に十分な議論をするよう求めた。

 (室木泰彦)

 

この記事を印刷する

PR情報

中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ