アルコール依存症をはじめ、深酔いによる交通事故や暴力−。過度な飲酒による影響は本人だけでなく家族や社会に広くおよび、社会的損失は年間4兆円を超えるとされる中、関係機関の連携や総合的な対策を促す法律制定に向けた動きが活発化している。大阪でも9月1日に堺市南区の国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)で集会が開かれる。法制化の意義を追った。
「アルコール依存症が病気であることを知ってほしい」と訴える府断酒会の河合事務局長 |
「アルコール依存症は病気だと医師から言われ、ほっとした」
同依存症の当事者らが、酒をやめ続けるための活動を展開する「大阪府断酒会」の河合敏行事務局長はこう振り返る。
「飲んだくれ」「意志が弱い」などの偏見が強い同依存症。精神科医の麻生克郎・垂水病院副院長は「アルコールなどの依存性薬物は、使えばよりいっそうその薬物を使いたいと感じるように、人の脳を変化させる力がある。これが繰り返された結果、非常に強い欲求が脳の中に生まれている状態」と説明する。
回復するためには、やめるしかなく、適度に飲む状態には戻れない。一人でやめ続けるのは容易ではなく、医療機関や断酒会の活用を勧める。
治療につながっていない同依存症者も多いとみられ、河合事務局長は「病気によって症状が引き起こされていることを多くの人に知ってほしい」と呼び掛ける。
男性で1日平均純アルコール40グラム(日本酒2合)以上の飲酒習慣や、深酔いなどの不適切な飲酒について、アルコール薬物問題全国市民協会(ASK)の今成知美代表は「本人だけでなく家族や社会に深刻な影響をもたらす」と指摘する。
厚生労働省研究班の推計では、何らかのアルコール関連問題がある人は国内で654万人、飲酒の強要や深酔いでの暴力暴言、セクハラなどの被害者数は3千万人超という。治療費や事故、犯罪などによる社会的損失は、見積もれる範囲だけで年間4兆1483億円に達する。
不適切な飲酒との関連が指摘される自殺や虐待など、各分野で対策は展開されているが「ばらばらに対応せず、有機的に連携して動けば効果はもっと上がる」と今成代表。その動き方の「根拠」をつくろうというのが法制化の動きだ。
2010年に世界保健機関(WHO)が「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」を採択したのを機に、日本の関連団体らが「アルコール関連問題基本法推進ネット」を立ち上げ、超党派の議員連盟らとともにアルコール健康障害対策基本法案を練り上げてきた。行政や事業者、国民らの責務を明確化。今秋の臨時国会上程を目指す。
同ネット幹事の麻生副院長は「飲酒によって引き起こされる病気やそれに付随する事故や損失は大きな問題。飲酒者本人の責任として片付けず、社会の課題として取り組む必要がある」と指摘。「医者としては過量飲酒者が治療を受けやすいシステムの構築を期待するが、一方で啓発・教育や製造・販売まで視野に入れた幅広い対策も必要」と強調する。
同ネットらの共催で基本法制定の意図を伝える堺市での集会は正午〜午後2時、参加無料。問い合わせは電話072(949)1229、府断酒会へ。
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