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政治
【主張】部隊運用の一元化 迅速な効率的活動目指せ
防衛省が、自衛隊の部隊運用(作戦用兵)に関する業務を、制服組(自衛官)による統合幕僚監部(統幕)へ一元化する方針を示した。
自衛隊の運用は現在、統幕と、文官(官僚)からなる内局の運用企画局とが重複して担っているが、一元化することによって、有事や災害時の出動で自衛隊の運用がより迅速化、効率化される。この方針を歓迎したい。
防衛省がまとめた組織改革案「省改革の方向性」で打ち出したものだが、実施時期については「中期」の課題としただけで、明記は避けている。具体的に定め早期の実現を目指すべきだ。
日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増している中で、抑止力強化をはかる上でも、自衛隊の作戦能力の向上が今ほど求められているときはない。
中国は毎年、大幅に軍事費を増やし続け、日本周辺海域でも海軍艦船が海上自衛隊の護衛艦に対して射撃管制用レーダーを照射するなど、挑発行為を繰り返している。北朝鮮はミサイル発射や核実験を強行している。
防衛省の文官は、法令面や政治行政の観点から防衛相を補佐する重要な役割を担うが、専門外の作戦や用兵まで介入すれば、深刻な判断ミスや意思決定の遅れを招きかねない。
実際の自衛隊の部隊運用については、首相、防衛相の下で、軍事専門家の制服組が担うことが世界標準ともいえる。
これまで内局に運用部門が存在してきた背景には、文民統制(シビリアンコントロール)は内局による「文官統制」のことだとする誤った考え方がある。
しかし、本来の文民統制は、国民から選挙で選ばれた政治家が主体となる考えを指すはずだ。
運用の一元化は、平成19年に首相官邸に設置された防衛省改革会議が、翌年7月、当時の福田康夫首相に提出した報告書でも提言していた。これを、民主党の鳩山由紀夫政権が21年10月、文民統制上議論の余地があるとして棚上げにした経緯がある。
文官と制服組の一体感を醸成するためにも、双方の人事異動を拡大、活発化すべきだ。
防衛省・自衛隊が、国の守りや災害派遣、国際貢献に一丸となって取り組めるよう、思い切った改革を進めてほしい。
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