【萬物相】鮮魚の国籍

【萬物相】鮮魚の国籍

 数年前「中国産のイシモチが韓国産と偽って売られている」というニュースが流れたことがあった。この時、中国の外交官は「悔しい」と言った。同じ西海(黄海)で捕れた魚なのに、なぜ韓国の船が捕った魚は高級品、中国の船が捕った魚は安物扱いされるのか、ということだった。この外交官は「中国の船が捕った魚を、海上で韓国の船がすぐに買っていくケースがあるが、これは中国産なのか韓国産なのか」というはっきりしない問題も提起した。

 2年前の冬、当時の農林水産食品部(省に相当)の次官が、会食で出すため知り合いの業者の所で生のスケトウダラを探したものの、たった12尾しか見つからなかった。かつてスケトウダラは東海(日本海)でよく捕れていたが、今では97%がロシアのオホーツク海産、残りの3%は北海道周辺海域で捕れるものだという。冷凍せずに韓国の水産市場に持ち込まれるスケトウダラを探すのは、骨が折れる。このように環境の変化に伴って魚が生息地を変えている中、鮮魚の国籍を問うことに何の意味があるのか、と思った。

 昨年5月、米国カリフォルニアの海域で捕れたマグロ15尾の細胞組織から、放射性セシウムが検出された。米国の科学者は、日本近海でふ化したマグロが、福島第一原子力発電所から流出した放射性物質に汚染されたオキアミやイカを食べて育ち、体内にセシウムが蓄積されたと推定した。魚が汚染されているか否かを決めるに当たっては、魚がどの国の海で捕れたかよりも、その魚がどこで生まれどこで育ったかという「履歴」の方が重要だというわけだ。

 とはいえ、韓国産のサバと日本産のサバでは、そもそも生息域が違うという。韓国産は済州島から東海・西海までしか泳いでいかない一方、日本産は九州の東沖で産卵し、太平洋側にしか行かないため、お互いに混じることはないという。韓国産のサバはそもそも放射能に汚染される可能性がほとんどなく、心配する必要はないというわけだ。

 米国人がつくり出した言葉に「アフガニスタン・シンドローム」というものがある。近くで起きた事件よりも、地球の反対側のような遠い場所で起こった事件の方に鋭く反応することを指している。韓国では、水産物の放射能汚染の可能性に神経質になっているが、日本人は意外と平気だという。食品医薬品安全処の説明では、福島第一原発事故の後、日本産の輸入水産物1万3000件を調査した結果、131件から2-5ベクレル程度の微量の放射能が検出されただけだったという。韓国の基準値(370ベクレル)や国際的な基準値(1000ベクレル)を大きく下回る水準だ。魚の放射能汚染は徹底して識別すべきだが、余計な心配は、漁師や刺身を出す店の悩みばかりを増やすことになる。

池海範(チ・へボム)論説委員
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