【柴田秀並】国内生産量の約7割を占める九州の干しシイタケ農家が、取引価格の下落に苦しんでいる。原発事故後に産地がわからないシイタケから放射性物質が検出されるなどして需要が減り、「風評被害」を訴えている。離農の危機にある農家もいて、状況は深刻だ。
宮崎県諸塚村の山あいで祖父の代からシイタケを栽培する甲斐勝男さん(68)は5月、原木にたくさんのシイタケを残したまま今年の収穫を切り上げた。取引価格の下落と乾燥に使う機械の燃料代の高騰で採算が合わなくなったという。「このままでは続けていけないが、原木のクヌギを植えた山の手入れはしていきたい。でないと先祖に申し訳ない」と声を落とす。
宮崎県は、干しシイタケの生産量が全国2位。今年1〜7月の1キロ当たりの平均単価は前年同時期より617円低い2125円だった。2008年の年平均4707円から下落傾向だったが、11年の東京電力福島第一原発の事故後、拍車がかかった。売れずに在庫を抱えた卸売業者もいる。