人の「記憶」はどこにあるか
       ―――――――――――――――――――――――


  人の「記憶」は果たして、どにあるのでしょう。たいていの人が脳の中にあると考えているようですが、本当に、それは脳の中にあるのでしょうか。
  もしそれが脳の中にあるとしたら、では、それはどのような形で残されているのでしょう。その人が体験した様々な出来事が、脳内に、何らかの化学物質の堆積物として残されているのでしょうか。人が亡くなった後で、脳の切片を電子顕微鏡で調べれば、その人の過去の記憶が見えるのでしょうか。残念ながら、これまでにそうしたものを発見した人はいません。

  ここでは実際に起きた幾つかの事例から、人の「記憶」が、次元を越えた別の領域に存在することを説明しておくことにします。つまり記憶は、三次元的な物質的存在ではないということです。この当たり前のことが広く認識されていないために、どうしても心の世界が理解しにくくなるのです。意識する脳や、思考する脳、記憶する脳は、次元を超えた領域との交信によって成り立っているのです。要するに脳の中にあるニューロンや、シナプスは、次元の壁を超える働きを持っているわけです。言い換えれば、十次元・二十六次元の世界とつながっているのです。それ故に一部の人たちには、三次元的には存在しないものが見えたり、聞こえたり、感じたりするのです。また、そこに働く力(法則・原理)によって、あるはずの記憶が思い出せなくなったり、或いは、記憶の中で象徴化という現象が起きたり、又は、互いに関連する出来事との勝手な連想が生じたりするのです。

  そして「記憶」が、次元を超えた別の領域に存在するということは、人が死んだ後も、その記憶は残されているということです。脳は物質的な存在ですから、人の死とともに機能が停止します。機能を停止した脳では、記憶がある領域とコンタクトすることが出来なくなるために、記憶そのものも無くなると考え勝ちです。
  しかし、その記憶が存在する領域とコンタクトする装置(別の脳)があれば、故人(死者)の記憶を引き出すことも可能です。従って、「前生の記憶」というものを、否定する必要がなくなります。また特殊な能力を持つ人によって、故人(死者)の記憶を辿ることも、不可能ではなくなります。或いは、本人の持ち物を通して、その人の過去の行動を遡ることも出来ます。つまり、超能力の一つである「透視」という現象が、なぜ可能なのかが説明できるわけです。

  いきなりこのようなことを申し上げても、俄かには信じがたいと思いますので、順次、具体的な事例を紹介しながら説明して行くことにします。


    ************  ○○  ************  ○○  **************


  【 事例 一 】 赤の他人に引き継がれた死者の記憶


  次に紹介するのは、例のテレビ番組「アンビリバボー」(フジTV) で、実際に起きた出来事として紹介されたものです。( 2000年 2月10日 放送分 より )

  この回の「恐怖のアンビリバボー」は、「現役の医師が語る病院の恐怖体験」の二回目でした。内容は“ 他人に引き継がれた死者の記憶 ”を扱ったものでした。

  ( ―― 補足説明 ――  この番組に出演した元田隆晴医師(仮名)は、首都圏の病院に勤務する現役の医者です。著書に、現役医師が語る『病院の怪奇 恐怖生体験』という本があります。 
  元田医師は前の回に引き続き、この回もテレビに顔が映らないように、マスクをして登場しました。医者が、こうした怪奇体験を語ることに、周囲の人々の偏見があるためです。 )


       ↓     ↓     ↓     ↓     ↓     ↓


  元田医師の先輩に当たる中村医師は、脳神経外科医であった。

  その中村医師が、ある時、老年期痴呆症の患者を診察した。その患者は中村医師と、同い年であった。
  しかも、その患者の父親は、20年以上も前(1975年)に、やはり老人性痴呆でこの病院に入院したが、治療の甲斐もなく死亡した。その際、患者の脳は、病理解剖されて、標本として取り出された。

  中村医師はその時、患者の脳を自らの手で取り出し、一部を薄く切り取って、顕微鏡で撮影した。また、残りの脳をホルマリンで保存する等の作業を行った。
  ( 痴呆症の原因については、生前に特定することが難しく、死後、病理解剖をすることが多い。)

  その当時、新任であった中村医師は、その患者の担当医でもなく、また面識さえも無かった。ただ単に、その解剖に立ち会っただけであった。しかし、その患者の名前は、ハッキリと覚えていた。
  今回の患者は、その亡くなった患者(山内悟郎さん)の息子さんであった。従って、親子二代の痴呆症患者ということになる。


  その数ヶ月後に、思わぬ展開が生じた。中村医師本人の脳に、萎縮が見られるようになったのである。還暦(60歳)を迎えた冬のことであった。
  その直後から中村医師に、異常な事態が発生した。何と!!。ある筈のない記憶が、突然、甦るようになったのである。

  中村医師は、自分の呆けの進み具合いをみるために、同じ病院の脳神経科医のカウンセリング受けていた。だがその時に、絶対にある筈の無い体験談を語り始めたのである。
  それは、自分は30歳の頃、満州国にいたというものであった。しかも、出来て間もない満州国であったという。これは絶対にあり得ないことであった。中村医師の出生は、1935年である。満州国は、1932年に独立した。従って、わずか三歳の時の出来事である。

  中村医師は、最初は鉄道を敷いたり、ダムの建設現場で働いたりしたと言う。そのうちに、戦争で、人を殺したという記憶を思い出した。上官の命令で、訓練のために捕虜を殺害したのであった。
  しかし、中村医師が満州に一度も行っていないことは、紛れもない事実であった。そもそも終戦当時、中村医師は、まだ10歳の子供だったからだ。つまり中村医師は、自分が体験してもいないことを、筋を通して詳細に話したことになる。

  ところがその後、驚くべき事実が判明した。
  現在の患者である山内さんの奥さんに、担当の看護婦がある時、中村医師の今の病状を話した。同時に、カウンセリングの中での不思議な出来事も説明した。
  するとその奥さんは、亡くなった舅から、同じ話を、幾度となく聞かされたと言うのであった。それは舅が、痴呆状態になる以前に、よく聞かされた話だったと言う。

  二人の接点は、例の病理解剖の時だけであった。
  《 中村医師はかつて病理解剖に立ち会って、死亡した患者(山内悟郎さん)から脳を取り出し、切片を作り、それを顕微鏡で撮影した。また、残りの脳をホルマリンで保存する等の作業を行った。ただし患者本人とは、面識さえも無かった。それなのに死者の記憶が、中村医師に引き継がれるという現象が発生したのである。》


  * 元田医師が行った分析。
   痴呆症の原因は幾つかある。その中に、感染性の痴呆症がある。
   スロー・バイラル・インフェクション(遅発性ウイルス感染症)というものがあるとされる。これは脳がウイルスに感染してから、20年〜30年もたってから発病するという説である。
  つまり、この説に従えば病理解剖に立ち会った中村医師が、その際、ウイルスに感染して、二十数年後に、脳の萎縮を引き起こし、老年期痴呆症を発症したと考えることができる。ただし、「記憶」が持ち込まれるということは考えられない。
  このケースで興味深いのは、ウイルスがベクター、つまり媒体として、患者の古い記憶を持ち込んだとしか言いようがなくなる点である。


  * 元田医師が語った恐るべき可能性。
   今回の事例では、人を殺したという後悔の念が他人の記憶の中に持ち込まれた。それと同様のメカニズムで、人格交替さえ引き起こす可能性があるのではないか。
  もし仮に、恨みなどの記憶や、凶暴な人格までもが、医者や或いは、病院内の他の人間に感染したとしたら、、、、。


        ****   ○ ○  **  ○ ○  ****


  一応、番組の中で紹介された元田医師の考え方も、上に紹介しておきましたが、それだけで説明しきれないのは勿論です。もしウィルスが媒体となって記憶までも伝染させるとしたら、風邪(インフルエンザ)が流行るたびに、同様のことが起きることになります。実際にそうしたことが起きていない以上、この考え方では、そもそも無理があります。

  さて、それでは、どのように考えたらよいのだろうかということですが、以前に紹介した“意味・内容”の実現現象が生じたと考えると、それなりに理解することが可能です。つまり、この世界そのものが超々巨大な“意味・内容”の集合体であり、その意味・内容を実現させるための“力”が、あらゆる場面、あらゆる局面でリアルタイムに機能しており、それにより引き起こされた現象であるということです

  具体的には、こういうことです。この事例では、20年以上も前(1975年)に亡くなった山内悟郎さんの記憶が、病理解剖の際に脳を取り出した中村医師の記憶の中に入り込んだわけですが、これは中村医師がその手で直接、山内さんの脳に触れたことが原因なのです。記憶そのものは脳の中に無いとは言え、脳が記憶を貯える装置であることは間違いありません。別の次元にある記憶と、本人とを結びつける機能を果たしているわけです。その記憶装置を取り出して、手にしたということは、その中身である記憶も手にしたことと同じ“意味・内容”を持ちます。そして、そうした意味・内容が現実化されたことによって中村医師は、山内さんの記憶までも手に入れてしまったのです。

  つまり、中村医師の脳が萎縮して呆けが進行し、かつて脳を取り出した患者(山内悟郎さん)と同じような状態になった時に、その“意味・内容”が実現される条件が整ったのです。この状況は、現在の患者(山内悟郎さんの息子)の奥さんがかつて、同じ話を幾度となく聞かされた時の状況と一致します。まさにそうした状況の一致が、“意味・内容”の実現現象を生じさせたと考えると、それなりに納得できるわけです。もちろんこれはあちら側の世界に働く、何らかの特殊なメカニズムが機能したために生じた現象です。いわゆる超常現象の一種です。

  そして、この事例から言えることは、すでに亡くなっている人の記憶も、あちら側の世界に、確かに存在しているということです。それ故に、すでに故人となっている人(山内悟郎さん)の記憶が、中村医師の記憶の中に入り込んだのです。

  従って、我々の前世の記憶も、前々世の記憶も、どこかに残っているに違いないということになります。さらには、お釈迦様が語った前世譚(ジャータカ)というものも、事実に基づくものであろうということになります。これについては、次の事例で、さらに分かりやすく説明されます。


    ************  ○○  ************  ○○  *************


  【 事例 二 】 退行催眠で甦った「前生の記憶」


  次に紹介するのは、精神障害の治療のために「退行催眠」を用いた時に発生した意外な出来事です。
  やはり例のテレビ番組「アンビリバボー」(フジTV)で、1998年11月26日(木)に放送されたものです。この回の「ミステリアス・アンビリバボー」は、“ 前世の記憶 ”を扱ったものでした。

  この事例によって我々は、「前生の記憶」というものの存在が、否定できなくなります。なぜならこの事例では、絶対に思い出すことの出来ない記憶、すなわち前生の記憶が、精神障害を創り出す原因になっていたからです。要するに今・現在の精神障害を創り出している原因が、前生まで遡る記憶であったということです。

  同時に、この事例により、古来より仏教思想が伝える「輪廻転生」の考え方が、納得できる形で示されることになります。つまりこれまでは、まったくの半信半疑であったものが、それなりの根拠を持つものとして浮かび上が来るのです。ほとんどの人が空想や、想像の産物のように思っているこの思想が、まったく別の方向から裏付けられるからです。従って、まさにかつ目すべき事例と言えます。


       ↓     ↓     ↓     ↓     ↓     ↓


  アメリカ、フロリダ州、マイアミに「ワイス研究所」がある。

  精神医学博士ブライアン・ワイスは、エール大学で博士号を取得し、「不眠症」「鬱病」「不安症」などの研究をして来た。しかし、今では『前世療法』の第一人者として、異才を放っている。


  Dr・ワイスの話。
  『 私は、前世などは、、けっして信じていませんでした。ところが一人の患者との出会いが、私の考えをすっかり変えてしまったのです、、、。』

  ☆ 第一部  
  それは、キャサリンという名の女性が、そこへ治療に来たことから始まった。
  キャサリンは、常に“ 死の恐怖 ”に脅かされていた。
  暗闇に対する恐怖、水に対する恐怖、喉が締め付けられ、呼吸が止まってしまいそうな恐怖で、睡眠もままならない状態であった。

  Dr・ワイスの話。
  『 こうした恐怖心の大半は、子供の頃の体験に原因があります。ボクはまず、キャサリンに子供の頃の記憶を思い出させ、根本の原因を探ってみることにしました』

  ○ 通常の精神分析の手法で分かったこと。
   キャサリンの父親はアルコール中毒であり、夫婦喧嘩が耐えなかった。それで母親は、性格が暗くなり、無口になった。
   現在のキャサリンは、ある男性と不倫の関係にある。だが、その相手の吐くウソに、いつも傷つけられている。

  キャサリンはやがて、五歳の時に、誰かにプールに突き落とされた恐怖の体験を思い出した。しかし、この出来事が起きる以前からキャサリンは、水が怖かったような気がするという。


  ○ そこで、Dr・ワイスは、次に催眠療法を用いることにした。
   キャサリンの記憶は、三歳児まで溯った。
  酒臭い父親が、こちらに近づいてくる。キャサリンは、その父親に、口を押さえ付けられた時の恐怖の体験を思い出した。
  ワイスは、これが根本原因であると思った。ところが、、、

  Dr・ワイスの話。
  『 彼女は、いっこうによくならかったのです。普通は、原因となった過去の出来事を知ると、恐怖心が無くなり、苦しみから解放されるのですが、、、、』

  そこで、Dr・ワイスは、
  『 あなたの症状の原因となったところまで戻りなさい』 と、さらに記憶を溯るように指示を与えた。すると、意外なことが起きた。
  キャサリンの記憶は、何と、!。四千年前のエジプトまで溯ったのである。

  『私の名は、アロンダ。18歳です。ここは、不毛の地で、暑い。』
  そして、大きな波に呑み込まれた時の、死の瞬間の記憶が甦ってきた。
  その古代エジプト時代の恐怖の体験を思い出して以来、彼女は、水に対する恐怖心が無くなった。

  ○ これによってDr・ワイスは、人の記憶が、前世にまで溯ることを発見したのであった。

  キャサリンは、これ以外にも、十二もの前世の記憶を思い出した。そのうちの幾つかを書き出してみると、次のようになる。

  * アメリカ南部の黒人女性
  * スペインの売春婦。
  * 日本の学者(男)
  * ドイツの兵士(男)(一番近い前世)
  * 恐怖症の原因となっていた記憶。
    キャサリンは15世紀のオランダでは、ヨハンという名の兵士であった。ある夜、見回りをしていた時のこと、何者かに刃物で、喉を掻き切られた。
  ○ これこそが、キャサリンが喉を締め付けられるような、死の恐怖の原因になるものであった。
   しかも、その時の男の顔は、、、、何と、今もキャサリンを傷つけている男、、、、つまり現在の不倫の相手、スチュアートであった。二人の関係は、キャサリンを苦しめる人物として前世から結びつけられていたのである。


  Dr・ワイスの話。
  『 誰にでも、前世でつながりを持った人がいます。その人の姿・形、時には性別まで違ったりしますが、感覚で分かるようです。そして、その関係は、何度も繰り返されることが多いのです。たとえ悪い人間関係であったとしても、この人は知っている人だと分かると、惹かれてしまうからなのでしょう。』


  ワイスは、学会との関係に迷いながらも、『前世療法』という本を出版した。その治療法が、高い効果を上げることを確信したからであった。

  Dr・ワイスの話。
  『 学会で受け入れられる筈のない説を発表することは、私の学者生命に関わることです。キャサリンとの体験の後、四年間、私は迷い続けました。しかし、多くの人に試した結果、前世療法が高い効果をあげることは、間違いがないと確信したからです。』

  現在では、多くの人たちが前世療法を求めて、ワイスの許へ訪れている。

  Dr・ワイスの話。
  『 前世療法は、退行催眠の一種で、過去に溯り、心の傷を探すプロセスです。私はこれまでに、三千人以上の治療をして来ました。催眠にかかった人のうち七割近くが、前世の記憶を思い出しています。そうして前世を体験した人たちは、たとえ肉体は滅んでも、魂は不滅で、人は何度も甦ることを知り、死の恐怖から解放された穏やかな生活を手に入れているのです。』


      ******     ****    ******


  再現ドラマの途中の休憩時間で、司会役の佐藤藍子さんの説明。

  『 それで、あの、、現世で関係している人とは、前世でも、何らかの関わり、、性別も、変わるかも知れないし、、、或いは、人間でなく、、人間と動物かも知れないし、わかんないんですけども、、関わりを持っていると言っていましたが、、、、。続いては、ワイスさんが、そのことを実感したときの、VTRをみて頂きたいと思います、、、。』


      ******     ****    ******


  ☆ 第二部 
    ペドロとエリザベスの話。
  《 これは、Dr・ワイスの診察室を舞台にして起きた、何千年もの時を隔てた永遠の愛の物語である。》


  メキシコ人のペドロは、大企業のオーナー一族の家に育ち、兄の右腕として、家の事業を手伝っていた。しかし、その兄を事故で亡くした時の強い絶望感から、Dr・ワイスのところを訪れた。

  前世療法を受けた結果、その原因が過去世において、愛する者と常につらい別れを繰り返して来たことにあることが分かった。

  ○ 或る前世では、修道院に入るために、家族によって、むりやりに恋人と引き離された。
  ○ スペインの船乗りであった前世では、家族と引き離されたまま、船の上で病死した。


  ペドロは、また愛する人と引き離されるのではないかという不安を、前世から背負い続けていた。

  * ペドロがみた夢。
  “ 白い羽を持つ老婆 ”が、何かを訴え掛けていた。しきりにこう言っていた。
  『彼女の手を取りなさい。今に分かります。彼女の手を取りなさい。』


  同じころ、Dr・ワイスの許に、エリザベスという名の女性が訪れた。彼女は会計事務所を営むキャリアウーマンであったが、結婚に失敗していた。そうした時に、彼女は、最愛の母を亡くした。それと同時に、生きる気力も無くした。父親が厳格であったために、優しい母は、彼女の心の支えになっていたのである。

  エリザベスの望みは、その母親との結び付きを、前世で体験することであった。

  ○ 最初に戻った前世では、エリザベスは、船旅をする10代の少年であった。    その船は、嵐で沈没した。

  ○ インドに生まれた別の前世では、家畜の世話をする貧しい少女であった。
    貧困のために、わずか16歳で命を落とした。

  ○ 二千年前のエルサレムでは、彼女の父は、ローマの侵略者によって迫害を受けた。
    彼女の名は、ミリアムと言い、父の名は、エリであった。親子は、深い愛の絆で結ばれていた。

  Dr・ワイスは、その父が、前世での母の姿ではないかと考えた。しかし、エリザベスは、その人物に母の面影を見ることはなかった。


  一方のペドロは、、、、

  ○ モンゴルの戦士であった時のことであった。
    彼が狩りから戻ると、一族は、皆殺しにされていた。そして、白い大きな羽が、燃え残ったパオのてっぺんに立ててあった。それは、ペドロの夢の中に現れた“ 老婆 ”が、持っていた羽であった。

  ペドロは、さらに記憶を溯った。
   『 私は、横たわっています。ローマ兵が、私を拷問に、、、』

  ○ ペトロは、二千年前のローマで、瀕死の重傷を負っていた。
   『 私は、死にかけている。』
   『 娘が何か言っている。』
  ワイスは、この話に、聞き覚えがあった。

  Dr・ワイスの話。
   『 私は、その時、ペドロとエリザベスが、親子であったことを知ったのです。二人は、とても強い愛情で結びついた親子でした。』


  ある日のこと、エリザベスの記憶は、モンゴルの前世に溯った。
  その時、、、
  『 母です!!』
  『 母を見つけました』

  この時のエリザベスは、親を亡くした孤児の少女であった。そして、現世でのエリザベスの母親は、前世では幼なじみの男の子の母親であった。
  その母親は、ひとりぼっちであったエリザベスを引き取り、優しく育ててくれた。その男の子が、現世のペドロであり、その母親が、何度かペドロの夢に現れた白い羽の“ 老婆 ”であった。

  過去世の二人は、やがて成長して、そして結婚した。
  『 彼女の手を取りなさい。』
  これは、結婚を意味する言葉であった。
  その後は、ペドロが前世の記憶で辿ったように、一族は敵に襲われて、全てが失われてしまった。

  ○ ペドロとエリザベスは、何千年もの間、出会いと別れを繰り返して来た。恋人同士、父と娘、その形は、様々に変わった。

  * そして、現世で心の支えとなっていたエリザベスの母は、今も、その二人を結びつけようとしていた。しかし二人は、互いに必要としている相手が、すぐ近くにいることを知らないのであった。

  Dr・ワイスの話。
  『 二人の絆を知っていたのは、私だけでした。しかし、私はそのことを告げるわけにはいきませんでした。患者のプライバシーを他人に告げることは出来ないからです。』

  そこでワイスは、、、
  二人の診療のスケジュールを接近させて、お互いが顔を合わせるように細工した。そうすれば二人は待合室で、必ず顔を合わせる筈だったからである。だが、その時には、何事も起こらなかった。


  そして、二人が離ればなれになってから数ヶ月後、ニューヨークの空港で、奇跡の再会が待っていた。
  その日、ニューヨークでの仕事を終えたペドロは、ラガーディア空港で、次の予定地、ボストン行きの飛行機を待っていた。

  そこへマイアミから、仕事でニューヨークを訪れていたエリザベスが、偶然来合わせた。彼女の行き先も、同じボストンであった。何と!、同じ航空会社の、同じ便であった。
  二人は、互いに惹かれ合った。お互いに、もっと相手のことを知りたいと思った。二人は、互いに歩み寄った。
 
  Dr・ワイスの話。
  『 私は、エリザベスからの電話で、運命の再会が、果たされたことを知りました。私の企みなど、取るに足らないものでした。全ては、起こるべくして、起こるのです。』


        ****  ○○   ***  ○○  ****


  再現ドラマ終了後の、佐藤藍子さんの説明。
  『 ある時は、父と娘で、ある時は、恋人同士で、、。あの、、先生も、出会うべくして、出会った、、と。 、、で、、。そのエリザベスさんとペドロさんは、その後、結婚して、現在は一人娘とメキシコで、、、幸せに暮らしているということです。』


       ****   ○ ○  **  ○ ○  ****


  以前にも申し述べましたように、思い出すことの出来ない記憶が、様々な精神障害を創り出す原因になります。つまり「無意識」の領域にある記憶や、「三歳児以前」の記憶が、感情物質・感覚物質を創り出すプログラムと結合しており、そのプログラムが勝手に活動を開始してしまうために精神障害の症状が創り出されるのです。当時の状況が、自動的に“再現・復元”されてしまうからです。
  従って、そうした無意識界に隠蔽されている記憶を、思い出すことが出きる状態の記憶として復活させることができれば、精神障害は完治します。フロイトが開発した「精神分析」の技法は、この原理に基づくものです。自由連想法によって、関連する出来事から隠蔽された記憶を、芋づる式に引っ張り出して行くわけです。
  ただしこの自由連想法では、三歳時以前の記憶にまで遡ることは出来ません。ましてや前生の記憶にまで遡るなどということは、絶対にできません。

  今回の事例でもっとも注目すべき点は、障害を創り出す原因になっていた「前世」の出来事を思い出すことによって、障害を取り除くことが出来たという点です。キャサリンは、何と、四千年前の古代エジプトの時代まで溯って、大きな波に呑み込まれた時の記憶を甦えらせたのです。そして、その恐怖の体験を思い出して以来、彼女には、水に対する恐怖心が無くなったのです。また、15世紀のオランダでは何者かに、刃物で、喉を掻き切られた出来事を思い出しました。それが、喉を締め付けられるような死の恐怖の原因であったのです。
  これ等は、通常の方法で思い出せる現世の記憶ではなく、過去世である“前世の記憶”です。そして、このような幾つかの記憶を思い出すことによって、現在の障害が取り除かれたということは、それらの記憶が症状を創っていた原因と言えるわけです。つまり精神障害を創り出す原因は、現世の記憶だけではないということです。過去世の記憶も、精神障害の原因になり得るということです。

  この事例は、これまでは存在しないと考えられてきた「前世の記憶」が、確かに存在することを示す証拠と言えます。思い出すことが出来ない記憶によって、精神障害が創り出されているからです。
  そして、この事実を認識することにより、我々の記憶が、三次元的な物質的存在ではないことが確認できます。つまり人の記憶は、次元を超えた別の領域に存在しているということです。


  ところで我々の記憶が、前世まで溯ることは、けっこう以前から知られていました。過去の記憶を遡るのに催眠法を使った場合に、時として起きる現象だからです。以前に紹介した『誕生を記憶する子どもたち』(春秋社刊)の中でも、このことが取り上げられています。また、こうしたことを専門に取り扱った本も出版されています。
  しかし、そうした前世の記憶が、現在の我々の精神状態にまで影響を及ぼしていることを発見したのは、おそらくDr・ワイスが初めてではないでしょうか。
  そして、彼が著名な学者であり、以前にはそうしたことをまったく信じていなかった人物であるだけに、内容的にも信頼が持てるわけです。


  このキャサリンの事例を通して我々は、「記憶」の世界が、脳の活動とは別のものとして存在しており、しかも、次元を超えた別の領域からの影響によって、精神的な障害が起きることを知ったことになります。このことを別の角度から捉え直すと、我々の「思考や知覚・認識」というものは、次元を超えた領域で行われており、我々の脳というのは、その領域とコンタクトするための装置であることが認識できます。
  そして同時に、なぜ精神分裂病の人たちが、聞こえない声を聴き、見えないものを見るのかが、容易に理解できます。それ等は要するに「思考や知覚・認識」の世界に入り込んで来る実際の「声」であり、或いは、実際の「映像」であるからです。妄想についても、同様のことが言えます。それ等は、脳という次元を超える世界で起きている現実の出来事であるということです。


  ところでキャサリンは、それ以外に、十二もの前世を思い出したということでした。しかも司会役の佐藤藍子さんの説明にあったように、場合によっては前生が、人間ではなくて、動物の場合もあるということでした。
  このことに関連して思い出されるのが、釈迦の「前世譚(ぜんせいたん)」といわれるものです。正式には、「本生譚(ジャータカ)」と言われています。
  仏教の開祖であるお釈迦様は、その並外れた能力によって、前世での数々の出来事を思い出して、弟子達に語ったということです。そして、その話の中では、前世が、猿であったり、馬であったり、水牛であったりしたというのです。

  仏教宇宙論では、あらゆる生き物は、“ 悟り ”を開かない限りは、永遠に「六つの世界」を輪廻して回るということです。これが「六道輪廻」の思想です。それは、具体的には、次のようなものです。

   (1)天道
   (2)人道
   (3)阿修羅道
   (4)畜生道
   (5)餓鬼道
   (6)地獄道

  このうち、(2)の「人道」が、現在、我々のいる人間界を指します。そして、(4)の「畜生道」が、動物界です。ですから釈迦は、この動物界での記憶をも再生したことになります。


  要するに、Dr・ワイスは、この「六道輪廻」の思想を、まったく別の方法で確認したことになります。つまり、これまでは単なる宗教的な説話くらいにしか考えられてこなかった「輪廻転生」の考え方が、まったく別の方法によって裏付けられたわけです。
  このように考えると、かなり凄いことになって来ます。なぜならあちら側の世界には「地獄」もあれば、「極楽」もあるということになるわけでして、そうなれば、当然のことながら「八大地獄」もあることになります。物の本によると、なにやらここは、もの凄いところのようです。なかでも「無間地獄」というところについては、かなり凄い説明がしてあります。もし興味がありましたら、仏教関係の本を読んでみてください。


  さて、ところで、注目すべきは、Dr・ワイスの次の言葉です。

  『 誰にでも、前世でつながりを持った人がいます。その人の姿形、時には性別まで違ったりしますが、感覚で分かるようです。そして、その関係は、何度も繰り返されることが多いのです。たとえ悪い人間関係であったとしても、この人は知っている人だと分かると、惹かれてしまうからなのでしょう。』

   ここでは、仏教の教義で伝えられる「縁起の理法」といわれているものが、別の言葉で説明されています。それは次の部分です。
  『 誰にでも、前世でつながりを持った人がいます。ーーー そして、その関係は、何度も繰り返されることが多いのです。』

  つまり、お互いが、因果の糸で結ばれたまま、ワンセットで次の時代に移行して行くということです。それによって、前世での人間関係が、姿、形を変えて、現世でそのまま再現されることになるのです。
  ですから我々の人間関係は、見えない糸で結ばれているということであり、そして一度つながりの出来た人と人の関係は、互いの立場を変えて次の時代でも復活するのです。要するに、そうした見えない糸のネットワークごとに、何度も復活が繰り返えされるわけです。ペドロとエリザベスの関係は、その典型とも言えるものです。あの長いお話を書き留めたのは、このことを説明する具体的な資料となるからです。

  ただし、ここで一つ指摘しておくと、、、
  『 ーーー この人は知っている人だと分かると、惹かれてしまうからなのでしょう。』

  とあるのは、はっきり言って間違いです。
  現実の出来事は、さらに複雑です。なぜならそこには、前に申し述べましたように「運命と宿命」というものが関与して来るからです。
  簡単に言うと、この世界で実現される人と人の出会いは、過去世での人間関係が創り出した「宿命」によるものです。つまり、人と人の出会いを運命づける「宿命」というものが、見えない法則として作用しているのです。
  従って、ペドロとエリザベスの運命は、Dr・ワイスが行った小細工くらいでは変わらなかったのです。あちら側の世界に設定されている運命の糸が操作されなければ、何も変わりようがないからです。
  ですから、彼等二人がニューヨークの空港で偶然に再会し、その後、結婚し、子供に恵まれたというのも、かねてより定められていた「運命」であり、前生からの「宿命」であったのです。


    ************  ○○  ************  ○○  *************


  【 事例 三 】 死者の記憶で逮捕された殺人犯


  次に紹介するのは、やはり例のテレビ番組「アンビリバボー」(フジTV) で、放送されたものです。 < 1999年、12/16(木) 放送 より >

  この回の「ミステリアス・アンビリバボー」では、ある“ 霊媒師( Medium ) ”の不思議な能力が紹介されました。


  ( ―― 補足事項 ――
   この番組には、早稲田大学 理工学部 物理学科教授 大○義彦氏が、実名で出演しました。前の回に続いて、これで二度目です。本来であれば学者や研究者の紹介は、敬意と尊敬の念を込めてやや丁重に扱いたいところですが、なにしろ本人が実名で登場して、しかも番組の中で、派手なパフォーマンスまで演じています。番組の内容を正確に紹介するためには、この部分も削除することが出来ません。従って、事実をありのままに記しておきます。これは本人自らが招いた結果ですから、誰のせいでもありません。すべて本人の責任です。この人は科学者としての権威を、自ら踏みにじったのであり、また大学教授の肩書きを自ら貶めたのです。この人が本来の科学者、研究者、真理の探求者として尊敬するに値するかどうかは、これを読んだあとで各人が判断するところです。名前の部分に一部伏字を用いたのは、この人物を誹謗・中傷することが、ここでの目的ではないからです。一応、その旨、お断りしておきます。)


     ↓     ↓     ↓     ↓     ↓     ↓


  『ウイークリー・ピープル誌』は、『タイム』『ライフ』に並ぶアメリカで最も信頼の高い雑誌である。
  そのウイークリー・ピープル誌、1998年3月9日号に、「究極の降霊術師」として一人の人物が紹介された。それが、ジェームズ・ヴァン・プラグ氏である。

  彼の体験をまとめた著書は、発売と同時に11週連続で、ノンフィクション部門のトップになった。このことは、ニューヨークタイムズ紙(1998年2月8日付)にも紹介されている。日本語版は『天国との会話』ジェームズ・ヴァン・プラグ著(光文社刊)である。

  彼は、16年間にわたって、世界中の霊たちと接してきたということである。

  ジェームズ・ヴァン・プラグが、その特異な能力に気付いたのは、7歳の時であった。1964年、アメリカ、ニューヨーク州でのこと。
  ある日、昼休みの教室に、担任のワインリック先生があらわれた。その先生と目があった瞬間、ジェームズ・ヴァン・プラグにはある情景が見えた。
  何と、ジェームズ・ヴァン・プラグには、先生の息子のジョンが交通事故で、足の骨を折っていることが分かったのである。


      −−−−−−  ○  ***  ○  −−−−−−−


  ○ ラスキン夫婦とのセッション(交霊の儀式) 当時37歳
   1995年6月、老夫婦、ドンとスウの突然の訪問を受けた。
   彼は、この時点では、夫婦の訪問の理由を一切知らなかった。

  セッションが開始された。
  すると、彼らの息子の、ダグ・ラスキンの生前の記憶が、ジェームズ・ヴァン・プラグの意識に侵入して来た。

  見えた場面 ―→ 若い男(ダグ)が、険しい山に登っている。滑落事故によって、命を落とす場面。岩が崩れ落ちたのであった。
  ( 実際に、この夫妻の息子であるダグ・ラスキンは、登山中の事故で亡くなっていた。)

  ジェームズ・ヴァン・プラグは、ダグから様々なメッセージを受け取る。
  夫婦がソファーで、息子の写真を見ている場面。リビングには、多くの写真が飾ってある。ダグから、父が、睡眠薬を飲んでいることが知らされた。また、ダグは、両親を誇りに思っていると伝えて欲しい、と依頼する。

  そして、ダグからのもう一つの伝言。
  『ボクが一番気に入っているのは、富士山で撮った写真である。ぜひ二人に見て欲しい。』
  だが、その写真は、夫婦の手許に存在しなかった。( この時点では、不可解なメッセージであった。)

  * その2ヶ月後。
  ダグの友達から届いた郵便物の中から、富士山をバックにして写したダグの写真が出てきた。


        −−−−−−  ○  ***  ○  −−−−−−−


  ○ 老夫婦、アランとサンドラとのセッション(交霊の儀式)
   この夫婦の息子、スティーブンは、麻薬中毒で錯乱状態になり、父親の銃を使って自殺していた。だがスティーブンの死には、驚くべき真実が隠されていた。

  セッションによって見えたもの ―→ 若者が、麻薬を使っている。鉄の味のするものが、口の中に差し込まれる。同時に、頭部に焼け付くような鋭い痛みが走る。それにより、スティーブンが拳銃で自殺したことが分かった。

  夫妻からの説明によって、息子のスティーブンは夫婦の留守の間に、父親の拳銃で自殺をしていたことが明かになった。
  ( 警察の検死結果では、スティーブンは麻薬中毒で錯乱し、父親の拳銃で自殺したものと判断されていた。)

  ところが、ジェームズ・ヴァン・プラグの脳裏には、さらに次のようなイメージが浮かんだ。
  「シヤッターがあるガレージ」
  そこでの息子のスティーブンからのメッセージとして、“ 金の腕時計 ”を探して欲しいという伝言を託される。
  それは息子の誕生日に、夫婦がプレゼントしたものであった。だが、その時計は、事件以後、見つかっていなかった。

  さらに、その時に一緒にいた相手の人物の名前が、息子の友達のロニーであったことが分かった。
  警察の再捜査によって、友人であったロニーの自宅から、ヘロインと一緒に、スティーブンの腕時計が発見された。
  ロニーの自供により、真相が分かった。
  代金の支払いを巡って、スティーブンは麻薬の密売をしていたロニーと口論になり、父親の拳銃を持ち出した。ところがその拳銃をロニーに奪い取られて、射殺された。

  現在、ロニーは終身刑で服役している。


       ***   **  ○○  **    ***


  ○ 司会役の佐藤藍子さんが実験台となって、降霊術体験が行われた。

    おじいちゃんを呼び出してもらうことにする。おじいちゃんは、彼女が生まれる前に、すでに亡くなっていた。

   おじいさんからのメッセージ。
  プラグ 「雑誌は整理して捨てた方がいいと言っている。」
  佐藤  「・・・なんで、・・分かるの・・・??。。。そう、、捨てられないんですよ、、。物を、、」
  プラグ 「コマーシャルをいろいろやっていますか??」
  佐藤  「そうですね。いろんな種類を、やってます」
  プラグ 「踊っているコマーシャルが好きなようです。。。何か踊りましたか?」
  佐藤  「あります!!。あの、サンバやりました。」
  プラグ 「また、踊るコマーシャルをやることになるでしょう」
  佐藤  「またーぁ!!!」
  プラグ 「おばあさんの誕生日が近づいてますね」
  佐藤  「おばあちゃんの誕生日は、、、私は、、覚えていないんですよ」
  プラグ 「おばあさんが、最近、薬を、新しいものに変えましたね」
  佐藤  「変えました。ハイ!!」
  プラグ 「おばあさんの写真の中で、まわりに花飾りがあるものはないか。竹で出来た額縁に見えるような・・」
  佐藤  「おばあちゃんの部屋は、、ぜんぜん分からない。」

  セッション後の佐藤藍子さんの感想。
  (おばあちゃんは年とっているから) ま、、薬を飲んでいるというのは、年からして、ある程度は分かるとしても、その薬を、新しく変えたというのを、知っているっていうのは、、、なぜ知っているんねん、という感じですね。。

  その後、出演者一同の雑談の場で分かったこと。
  佐藤 「竹の額縁の写真については確認していない。」
  佐藤  (おばあちゃんの誕生日は、3月であるという。)
      「現在が、12月であることからすれば、近いとも言える。」
  佐藤 「もっといろいろと言われた。」
      「車を変えたことも、言い当てられた。それは三ヶ月くらい前だった。」

  ( 紹介事項。
    ジェームズ・ヴァン・プラグの許には、16年間で、20万人が訪れているという。そのうち約8割の人が、会いたい人に会えたという。)


  さて、ここに踊る科学捜査官、早稲田大学 理工学部 物理学科教授 大○義彦氏が、マントを翻して、音楽に合わせて踊りながら登場した。
  そして、踊り終わってから、声を高らかに、次のように言った。
  『事件は、奇跡で起きてるんじゃない。科学で説明できるんだ!!』

  さらに、こう述べた。
  「 交霊術とか口寄せとか、霊を呼ぶというものには、主に、三つのトリックとい  うか、いわゆる仕掛けがあると思う。」

  ボードを使っての説明。
   * 交霊術のトリック
     (1)スタッフとグルになってのやらせ。
     (2)事前調査・リサーチ
     (3)巧妙な誘導尋問

  大○教授は、これらを一切排除するために、番組のスタッフに内緒で、知り合いのある男性を呼んでいた。
  市山登さん(俳優)という男性。

  ○ 市山登さんは、七年前に他界した母親と、もう一度会いたいと願っている。舞台に出ていたために、死に目にも会えず、葬式にも出ることもできなかった。

  * ジェームズ・ヴァン・プラグには、事前の説明は一切なされていない。

  プラグ「お母さんは、あなたの靴が、足を圧迫していることを気にしています」
  プラグ「晩年に、目の手術をするかどうかで悩んでいたと言っています。」
  市山登「すごい当たっています。それは、、。ものすごく、、、目のことは、気にしていました」

  この市山登さんの件に関する大○教授の分析
   「 彼は仕事があって、死に目に会えなかったことは重大なことであり、母親にとっては、なんとも気がかりであったにも拘わらず、そのことは当てられなかった。 目の手術のことは、よく当てたと思いますが、日本の人たちが目が悪いと言うことは、アメリカの人たちもよく知っていることで、日本人はみんなが眼鏡を掛けている。これもそれほど不思議なことではない。」


  ○ 次に、大○教授本人の降霊術体験。
    * 大○教授の恩師である金沢秀夫教授は、14年前に他界している。
      「 彼に、もう一度会って、お話をしたい。」

   * ジェームズ・ヴァン・プラグに大○教授に関する説明は、一切なされていない。

  プラグ 「人に教える仕事をしていますね、大学で、、」
  プラグ 「物理学ですか?」
  大○  「ともかく、金沢秀夫という人に対して、私はあの、すごい、あの、、、、(ここで映像の切り替え)、もう一度会って、お話をしたいと、、。」
  プラグ 「彼の本を持っていますか?」
  大○  「イエス」
  プラグ 「彼は教室以外でも、いろんなことを教えてくれた、立派な人であった」
  大○  「はい、そのとおりです。」
  プラグ 「そして、ブックエンド( Bookend=本立て)を持っていますね。」と、両手を広げてその大きさ、形状を示した。(両手の幅は、約一メートル)
  大○  「イエス」
  プラグ 「アンダースタンド?。ブックエンド、ツウハウス。」と、念を押す。
  大○  「イエス、イエス、イエス」と、何度もうなづきながら答えた。
  プラグ 「それは私(金沢)からのプレゼントです。(とても気に入っている)」
  大○  「あーぁ。ハハハハ」と、声を挙げ、一度大きくのけ反った後で、前屈みなりながら大きくうなずく。
  プラグ 「あなたは私の仕事を受け継いでいく人です」
  大○  「うーむ、そう、かもしれない、、。イエス、オア、ノウ」

  実験終了後の大○教授の分析
   大きな身振り、手振りを交えながら、声高に次のように述べた。
   「 この超能力者は、霊能者は、ですね、、、正しく私が希望する金沢教授の霊を呼び出すことには、成功しませんでした。せめてですね、本棚、、、最近買った本棚が、金沢先生、気に入っていると、こう言ったところですね、実は、私、曖昧に、ウンウンと言っていましたけど、実は、本棚なんてのは、私は、買っていません。。あー、、部屋一面の本棚を、作って貰いましたけども、、。とても金沢先生が感心して、好きになるとは、とても思えない、、そういう本棚を作っただけの話でありまして、、、、とてもとても、そこまで含めて、合っておりませんでした。ですから、金沢先生の霊と、語ったという気は、毛頭ありません。」


       ↑     ↑     ↑     ↑     ↑     ↑ 


   以上が、この番組の内容です。

  《 最初にお断りしたように、ここで事実関係を指摘すると同時に、少々苦言を呈しておくことにします。
  上の「実験終了後の大○教授の分析」をもう一度、よく読んでみてください。ここで大○教授は「ブックエンド」の話を、「本棚」にすり替えてしまっています。ジェームズ・ヴァン・プラグ氏は、はっきりとブックエンド( Bookend = 本立て)と、手でその大きさ、形状を示しながら説明したのです。大○教授が言うところの本棚(Bookshelf = 書棚・本棚)とは、まったくの別物です。
  しかもジェームズ・ヴァン・プラグ氏が『アンダースタンド?』と確認までしていることは、絶対に見逃せません。彼はわざわざこう言って、大○教授に確認を取り付けたのです。大○教授が自分の話の内容を、本当に理解しているかどうかを確かめたわけです。従って『曖昧に、ウンウンといってーーー そういう本棚を作っただけの話でありまして、、』というのでは、まるで説明になっていません。なぜならその時点で、きっぱりと「あなたが言うブックエンドなるものは、私は持っていない」と否定すべきだったからです。
  大○教授が何度もうなづいて『イエス、イエス、イエス』と言った時点で、ジェームズ・ヴァン・プラグ氏は、そのことが認証されたものと判断しました。少なくともジェームズ・ヴァン・プラグ氏は、『ブックエンド、ツウハウス』と尋ねた中味の確認が取れたものと判断したのです。また大○教授が自分の言っていることを、肯定したと解釈したのです。それ故にこの話を打ち切って、次の段階へと進んだのです。
  つまり有り体に言えば、ジェームズ・ヴァン・プラグ氏に対して、早稲田大学 理工学部 物理学科教授 大○義彦氏は、ウソの態度を示したということです。端的にウソを吐いたとは言わないまでも、「誤魔化し」をしたことは事実です。この『曖昧に、ウンウンといってーーー 』という大○教授の言葉は、そのことを自らが認めているわけです。「彼の確認に対して私は、適当に誤魔化しました」と言っているのと同じです。
  これは相手を愚弄し、またテレビの前にいる多くの視聴者をないがしろにする不遜な態度です。なによりも“ 真理 ”を探究する科学者、或いは、研究者が取るべき態度ではありません。そこで起きている“ 事実 ”が確認できないからです。真理を探究する際に不可欠な、事実の確認が出来ないからです。
  こうしたことがある以上は、早稲田大学 理工学部 物理学科教授 大○義彦氏の前では、科学的な検証などはとうてい望めないということです。だいいちこれでは、何のための立ち会い実験か分かりません。「私は大学教授で科学者だ」と言っている人物が、ウソの態度を示して科学的検証を妨害しているのです。未熟な現代科学の万能性を盲信して、心霊現象や超常現象の存在を頭から否定するためだけに登場するのでは、科学的な検証などは出来るはずがありません。
  もう少し明確に申し上げておくと、視聴者に「事実」が知らされないのであれば、この人をテレビに出演させることは、益よりも害の方が遥かに大きいと言えます。テレビの前の視聴者を何んだと思っているのでしょう。しかも「大学教授・科学者」という肩書きや権威が、世間の人の目をたぶらかします。マスコミ関係者も、事の重要性を知るべきです。因みにこの後、この人が番組に登場することは、二度とありませんでした。踊る科学捜査官は、シリーズ化されずに、二回だけで頓挫しました。
  一応、この番組の中身の正確性を確保するために、この事実を指摘しておきます。超常現象や心霊現象といったものは、だだでさえ捉え難い現象ですから、一方的に偏った見方が生じるのを防ぐためです。真実を探るうえで、トリックや偽装や誤魔化しは、すべて排除する必要があるからです。 》


       ****   ○ ○  **  ○ ○  ****


  この“ 霊媒師( Medium ) ”というものについては、以前にもこの番組で、アイリーン・ギャレットという女性のことが紹介されました。イギリスの飛行船、R101の処女航海で起きた悲劇が、アイリーン・ギャレットの能力によって、その真相が知られることになったというものです。
  ただし同じ霊媒師でも、今回のジェームズ・ヴァン・プラグ氏とアイリーン・ギャレットとでは、決定的に異なる部分があります。アイリーン・ギャレットの場合は一時的に自分自身の意識が消えて、完全に別の人格に取って代わられる状態になりました。しかし、今回のジェームズ・ヴァン・プラグ氏の場合は、はっきりと自分自身の意識状態を保ったまま、別の意識主体との交信が可能になるという点です。ですから見た目には、普通の人が、ごく普通の会話をしているようにしか見えないわけです。ただし、その語られている内容は、実は死者本人でなければ分からないような事実であるということです。この点は、日本人の霊能者として知られている、宜保愛子さんの能力と同じ種類といえるでしょう。

  さて、この事例で絶対に見逃してはならないのは、ジェームズ・ヴァン・プラグ氏を通して語られた「死者からのメッセージ」によって、殺人事件の真犯人が捕まったという点です。
  老夫婦、アランとサンドラの息子は、警察の調べでは自殺として処理されており、誰も殺人の真犯人がいることを知らなかったわけです。従って、ジェームズ・ヴァン・プラグ氏は、目の前にいるその老夫婦の深層心理を読み取ったり、その時の情況からの推測で勝手な作り話をしたわけではないということが分かります。つまりジェームズ・ヴァン・プラグ氏は、死者の霊(意識主体)との交信によって、そうした隠された真実を知らされたのです。

  従って、この事実から我々は、霊魂(意識主体)というものの存在を、認める必要性が生じるわけです。つまり、人は、死んだからといって完全に無になってしまうわけではないということです。霊体(意識主体)として、あちら側の世界に、いつまでも存在し続けるということです。
  こう書いている自分自身が、いまだに半信半疑ながらも、ジェームズ・ヴァン・プラグ氏のセッションによって、80パーセントの人たちが、死者との交流が出来たという事実がある以上は、やはりそのことを認めなければならないように思うわけです。我々自身が実は幽霊さんであったというのは、やはり正しい考え方のようです。


  それともう一つ、ジェームズ・ヴァン・プラグ氏が自分の意識の中に入り込んで来た「死者の記憶」を感知することによって、そうした出来事を知ることが出来たという点に注目する必要があります。これは、これまでに述べたように、我々の記憶が死後も、別の世界に残されていることの証拠となります。つまり、人の記憶は、次元を超えた別の領域に残されているのです。それ故に、第三者が、死者の記憶を感知することが可能になるのです。


  ところで、これも以前に申し上げたことですが、仏教思想には「阿頼耶識(あらやしき)」という概念があります。再度ここに、広辞苑(岩波書店 CDロム版)から引用しておきます。

           ↓

  「〔仏〕(梵語 laya vij na) 人間存在の根底をなす意識の流れ。経験を蓄積して個性を形成し、またすべての心的活動のよりどころとなる。唯識派で説く。八識の中の第8識。旧訳クヤクでは阿梨耶識。略して阿頼耶・頼耶・阿梨耶・梨耶とも。」


  これから見ると、どうやら釈迦を始めとするかつての偉人たちには、記憶の所在地も含めて、心のありかが分かっていたようです。科学の進歩によって、宗教上の思想を迷信のように扱ってしまったことから、何がなんだかわからない世界になってしまったのです。つまり、様々な宗教の教義の根底には、この世界の真理が述べられているということです。そのことに我々は、気がつかなかったのです。
  ですから、もし「人の記憶はどこにあるのか」という問いに即答するならば、まさしく「阿頼耶識」にあると言ってよいでしょう。つまりそれは、次元を超えた別の領域にあるということです。


  ただし、霊(意識主体)というものについては、もう少し詳しく検討する必要があります。たとえば解離性同一性障害(多重人格)の人は、幾つもの人格を持っています。大人の男性、女性に限らずに、小さな子どもの人格に変わってしまうことがあります。そして、持っている記憶も、その人格ごとに異なります。
  そこに出現する人格と、 霊媒師(Medium)による降霊実験で出現する人格とでは、何がどのように違うのでしょう。また、霊の憑依現象とでは、何が違うのでしょうか。こうした点に関して、もう少し深く追求する必要があります。それでなくとも霊については、分からないことが多すぎます。従って、ここでの結論は差し控えて、またの機会に譲ることにします。



                             2002.  6. 28.        店主記す





  




 もとの場所に戻る。