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<韓国司法>日本側の理解超える判断繰り返し…摩擦の根に

毎日新聞 9月1日(日)14時39分配信

 【ソウル澤田克己、大貫智子】慰安婦問題での韓国政府の「不作為」を違憲だとする韓国憲法裁判所の決定から、8月30日で2年となった。韓国ではその後、日本から「理解しがたい」と批判の強い司法判断が相次いで出されており、今や日本側の対韓不信の中心は「韓国の司法」の様相だ。一方、韓国の朴槿恵(パククネ)政権は歴史認識問題での強硬姿勢を崩していない。安倍晋三首相と朴大統領は5日からロシアで開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議で顔を合わせるが、首脳会談は開催されない見込みだ。

 韓国憲法裁は2011年8月30日、「日本国によって行われた組織的かつ持続的な不法行為によって人間の尊厳と価値を深刻に傷つけられた自国民の賠償請求権を実現させ、保護すること」が憲法によって求められているとして、韓国政府が外交努力を講じなかったことを「違憲」とする決定を出した。

 韓国政府はその後、元慰安婦の賠償問題に関する政府間協議の開催を日本に求めた。

 日本側は、韓国との戦後補償問題の解決を図った1965年の日韓請求権協定で慰安婦問題などは「解決済み」という立場で、韓国側の求めに応じていない。11年末に京都で開かれた日韓首脳会談は、慰安婦問題を巡り首脳間の感情的対立に発展した。

 日本側をさらに驚かせたのは、韓国最高裁が昨年5月、元徴用工の個人請求権を認め、協定で「解決済み」という日韓両政府の一致した見解を覆したことだ。

 最高裁は、三菱重工業と新日本製鉄(現新日鉄住金)の2社を相手取った損害賠償請求訴訟で、植民地支配の合法性などについて日韓両国の合意がない中で締結されたことを理由に「協定で個人請求権は消滅していない」という判断を下した。審理はソウル、釜山の両高裁に差し戻され、今年7月に原告勝訴の逆転判決が出た。両社は最高裁に上告中だ。

 韓国政府は盧武鉉(ノムヒョン)政権だった05年、戦後補償問題が日韓請求権協定で解決されたかどうかを検討。慰安婦問題などは「未解決」としたが、元徴用工については「(解決したと)見なさざるをえない」としていた。それだけに「特に徴用工に関する司法判断には韓国政府も困惑しているようだ」(ソウルの日本大使館幹部)。

 今年に入ってからも、韓国司法は日本側の理解を超える判断を繰り返している。

 ソウル高裁は今年1月、靖国神社への放火を「政治犯罪」だとして、韓国で捕まった中国人容疑者の日本への引き渡しを拒否。さらに、2月には中部・大田地裁が、対馬から盗まれて韓国へ持ち込まれた後、韓国の仏教界から「もともとは韓国のものだ」という主張が出た仏像の日本への返還を当面差し止める仮処分決定を出した。

 一方、韓国の司法による特異な判断は日本関係に限らないとの指摘もある。

 憲法裁は今年3月、70年代の独裁下で政治的集会などを禁じた大統領緊急措置3件について「違憲」決定を出した。この時に判断基準とされたのは、87年の民主化で制定された現行憲法。当時は存在しなかった法律を遡及(そきゅう)適用したことになる。

 韓国事情に詳しい小此木政夫九州大特任教授は「日本との法文化の違い」が背景にあると指摘。「韓国では、道徳的に問題かどうかという国民の情緒が重視される。半世紀前に結んだ条約でも正義に反しているなら正すべきだという考えが出てくる」と話している。

 ◆「価値観の共有」遠く

 日本での対韓認識は、李明博(イミョンバク)前大統領の竹島上陸(昨年8月)で悪化した。だが、最近は日本政府内から「韓国も法治国家になったと思っていたが、違ったようだ」(法務省幹部)という声が出るほどだ。悪化した日韓関係を韓国の司法判断がさらにあおる結果となっている。

 対韓外交に関係する外務省幹部は、日韓関係の重要性を説明する際に必ず使われてきた「基本的な価値を共有している」という表現について「もう使うのをやめようという声が官邸内で出ている」と話す。「理解不能な判断を繰り返す韓国の司法を見ていると、法の支配という基本中の基本で違うという不満が強いから」だという。

 一方の朴大統領は「正しい歴史認識」を日本に求める「原則」姿勢を崩さない。さらに、大統領に近い韓国政府高官は「首脳会談に応じないことなどで、日本には強い圧迫を加えている」と話す。

 陳昌洙(チンチャンス)世宗研究所日本研究センター長は「10月の例大祭でも安倍首相が靖国神社を参拝しなければ、関係改善へ向けた水面下の協議は始まるだろう。だが、その時には集団的自衛権の解釈変更が問題となりそうだ」と、早くも懸念している。

最終更新:9月1日(日)15時23分

毎日新聞

 

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