2027年の開業をめざすリニア中央新幹線について、JR東海は29日、山梨県内の実験線を42・8キロに延伸し、営業車両の原型となるL0(エル・ゼロ)系で本格的な走行試験を始めた。秋には、くわしいルートや駅の場所を公表し、14年度の着工をめざす。
実験線はこれまで18・4キロだったが、延伸により、時速500キロでの大量輸送実験や長いトンネルでの走行など、営業に向けた試験ができるようになる。実験線42・8キロのうち、トンネルは35・1キロに及ぶ。
L0系は5両編成で試験を重ねるが、順次車両を製造し、最長12両で最終的な試験をする。試験は16年度までに終える予定だ。
この日の出発式には、JR東海の葛西敬之会長や太田昭宏国土交通相、横内正明山梨県知事らが出席。太田国交相は乗車後、「505キロを体感したが、決して不快ではなく、会話が普通にできた。振動はそれほどでもなかった」と話した。
リニア中央新幹線は、1962年に研究がスタート。延べ80万キロ以上の走行試験を重ねてきた。
2011年からは環境影響評価(アセスメント)を始めていて、今秋には、27年の開業をめざす品川―名古屋間(286キロ)について準備書を公表する。
神奈川、山梨、長野、岐阜の4県に一つずつ置く駅は直径5キロ、線路位置は幅3キロの範囲で示されているが、準備書ではよりくわしく示す予定だ。
一方、切符売り場や待合室を設けない駅など、同社が目指すシンプルな設備などをめぐっては「不便だ」などとする各自治体との見解に食い違いもみられるほか、京都駅を通るルートに変更を求める声もある。
45年の新大阪までの全線開業が目標で、品川と名古屋を40分、新大阪までを67分で結ぶ計画だ。
●車内は静か、外は騒音
この日は、報道陣にもL0系車両の走行が公開された。車内の時速表示が500キロに達したが、加速感はそれほどなく、浮上しているため振動も現在の新幹線よりも静かに感じた。
山梨実験線は今回、42・8キロに延伸。5両編成のL0系車両はここを片道約9分間で駆け抜けた。
飛行場のようなタラップをくぐり、車内に入ると、通路の両側に2席ずつ全17列配置された座席が並ぶ。前の座席にテーブルが取り付けられているなど、設備は新幹線と変わらない。
車両が四角くなったL0の内部は広々として、リクライニングできる座席にはシートベルトもない。500キロ走行中も通路を歩くことができた。
時速140キロに達すると浮上走行に入り、車輪の音が消えた。モニターの速度表示はみるみる上がり、発車から4・8キロ地点で時速500キロに達した。
実験線のほとんどはトンネルの中だが、実験センター付近を含めて、長い地上部分は3カ所ある。
従来の新幹線より一回り小さくなった窓は、航空機よりはやや大きい印象。あまりの速度に手前の景色は目で追えないが、奥に見える山梨県の深緑を楽しむ余裕はあった。
一方、リニアが走り抜ける様子を外から間近で見ると、突風のような衝撃があり、一瞬会話が出来ないくらいの騒音があった。実用化に向けた地元住民の理解と協力を得ることの重要性を感じた。(立松大和)
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