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争奪編 第一章 激動
第五十一話「女王蜂争い」
「さきほどは助かりました」

「いえ。お役に立てて幸いです」

 ウィルは船室にイングリッドを招いたのであった。
 かび臭く、おまけに肥料の臭いまで漂う船室であったが、女は気にした様子がない。
 テーブルの奥側の椅子にウィルは着席した。
 長身の女が、濃紺色のズボンに包まれた長い足を曲げて、しなやかに椅子に着席をする。
 狭い船室に押し込んでいる机と椅子なので、対面のイングリッドと膝頭が少し触れあってどきりとする。

(あ、思ったより、ちゃんと柔らかい)

 すると、イングリッドはわずかに身じろぎし、かつんと剣の鞘が床板に当たる音がした。
 女のテーブルの上に載せた手は、皮膚が少し分厚い感じがする。剣を扱う手であった。
 ちなみにウィルは銃ならそれなりに扱えるが、剣についてはさっぱり才能がない。

(せめてぼくも自分の身くらいは自分で守れると良いのだけど)

 ウィルはそう嘆息した。

(シャルロッテ女学院って剣術まで教えているのかな……)

 女性が通える最高の教育機関だと聞いているが、その具体的なカリキュラムまでは知らない。
 そこに通っているロゼからときどき手紙をもらうが、女学院での生活についてはあまり触れてくれないのだ。

「ねえ。どうしてぼくのことが、マルク伯爵家の人間だと分かったの?」

 すると、イングリッドは寝台に横たわって顔色を悪くしているソフィアのほうにちらりと視線を送った。

女中(メイド)服を見ればどこの貴族家か分かりますよ。ましてマルク家ほど有力な貴族家であれば」

「え? 女中服だけで?」

 かつてギュンガスは、ウィルの胸のシャツについた紋章一つで、ウィルの名前を言い当てたものだが、まさか貴族家の女中服から身元がばれるとは思わなかった。

「はい。シャルロッテ女学院の生徒の多くは大貴族の使用人になることを望んでいます。特に上級使用人として潜り込むにはどうすれば良いか、研究会が開かれていますよ」

 ウィルは、なるほどと頷いた。
 待遇の良さで知られているマルク家が、女学院の研究対象になっているのは、考えてみれば当たり前のことだ。

(ん……? 待てよ。もしかしてトリスが改訂した新給与制度まで知られているのかな。だとすると、ぼくは、とんだ色魔だと思われているのではなかろうか)

 おそるおそる様子を伺うようにイングリッドの黒い瞳を伺ってみたが、

「ちなみにマルク家の女中服は可愛いと評判ですよ」

黒髪の女性は、ウィルの懸念を知ってか知らずか、屈託なく微笑んだ。

「すみません。わたしのほうの質問にも答えていただけるとありがたいのですが。さきほど妹が通っていると仰っていましたが、妹というのはロゼのことですか? ロゼはマルク伯爵家の隠し子なのですか?」

 イングリッドは真剣な表情でそう尋ねてきた。

「え、隠し子? ロゼとは幼なじみでつきあいが長いから、実の妹のように思っているだけなんだけど。うーん」

「本当ですか? 他言はいたしませんけど……」

 イングリッドがそう重ねて問いかけてきた。
 たとえ隠し子であっても、さきほど知り合った会ったばかりの人間に明かせる話ではないだろう。

「ロゼはうちの女中長の、たぶん妹で……、ぼくと血のつながりがないことは間違いない」

「たぶん?」

 イングリッドは怪訝な表情をする。また話がややこしくなった。

「なんでロゼの血の繋がりを疑うのか知らねーけど、ウィルとロゼが実の兄妹だったって話は聞いたことがない。なあ、ウィルお兄様?」
 赤毛の少女が横から口を挟んだ。

「やめて。マイヤにお兄様って言われるのはしっくりこない」

「ちぇっ」

 マイヤは本気で口を尖らせていた。

「なんかロゼだとしっくり来るんだよね。そういうことだから」

 だが、黒髪の女性はなおも心配そうにしている。

「さっき、助けてくれたし嘘は言わないよ」

 ウィルがそう頷くと、

「ああ。良かった」

イングリッドは椅子からずり落ちるようにため息をついた。イングリッドの柔らかい太ももがウィルの太ももと擦れ合う。

「おっと。失礼しました」

 女はそう言って姿勢を起こす。ちょっとムラムラきてしまった。

「なんだかよく分からないんだけど、説明してくれないかな」

「はい。ロゼがマルク家に連なるなら、女王蜂争いの勢力が大きく変わりますから」

「ええっと? たしかシャルロッテ女学院には生徒会長を決める選挙みたいなのがあるのだっけ?」

 マルク家は、シャルロッテ女学院の多額の出資をしている。
 影響力は大きいのだろう。

「ということはロゼがマルク家に助力を求めていないだけで、折り合いが悪いというわけではないのですか」

 イングリッドは、さも困ったなという感じで小首を傾げた。

「女王蜂争いの状況について詳しく教えてくれないかな。ぼくに何も知識がない前提で」

「は、はい」

 イングリッドは緊張したように姿勢を正して頷いた。
 細く白い喉がこくりと揺れる。

「いま、女学院では三つの勢力が競い合っています。最大派閥がメイベル派、二番目がわたしの所属するバーバラ派、そして三番目がロゼ派となります」

「ロゼは最小勢力なんだ……」

 意外だった。
 ロゼならば、トリスのように何でも上手くこなすイメージがある。

「学業の成績自体はロゼが一番なのですが、それはあくまで女王蜂争いの参加資格といった感じでして。ロゼ派は就職先を斡旋しないので勢力が伸び悩んでいます」

「あ、政治闘争なのか」

「はい。勢力比で言えば、四対三対二といったところでしょうか。メイベル派は中流階層に、バーバラ派は上流階層にコネクションが強いことを特徴としています」

「うわあ……思ったより生々しい争いなんだね」

「勝つためなら金や女の肉体までなんでも使います。明確に禁じられているのは対立派閥に対する直接的な暴力くらいでしょうか。女学院で自分たちに一番利益をもたらす絶対権力者を選出する争いですから」

 まるで王都の王兄派と王弟派の勢力争いのようである。

(ロゼも水臭いなあ。言ってくれたら喜んで後ろ盾についてあげるのに)

 どういうわけか、ロゼはそれを望んでいないのだろう。
 ウィルは少し寂しく思った。

「もしかして、イングリッドはぼくに接触するためにこの船に乗ったの?」

「この船に乗り合わせたのは本当に偶然です。王都からの帰り道、淡い期待をしてマルク領に立ち寄りましたが、お忙しいとのお返事をいただきましたので、そのまま諦めて帰るつもりでした」

(ああ……)

 ウィルは、申し訳なさそうにイングリッドのほうを見やった。
 この一週間ほど、旅の準備が大層忙しく、本当に必要な来客以外は断っていたのだ。

「王都にはどうして?」

「王妃親衛隊に入ることを希望していたからです」

「おお」

 ウィルはイングリッドが軍服に身を包んだ姿を想像してみせた。
 さぞ金糸の刺繍がさぞ黒髪に映えることであろう。

「残念ながら今年の試験は取りやめになってしまいましたが」

 イングリッドはそう言って残念そうに肩を落とした。
 王都はいまとてもゴタゴタしている。王兄派と王弟派が一触即発の勢力争いを繰り広げているのだ。
 王妃親衛隊の入隊試験どころではないだろう。
 戦争になるなら当然、新兵を募る必要があるのだが、しょせん王妃親衛隊など言っては悪いが平時のママゴトにすぎない。

(さっきの巨漢を制圧した手際、あれは鮮やかだったなあ)

 王妃親衛隊に入隊して、上流階層の余興の一つになるのが勿体ないように感じられた。
 かと言って、イングリッドのような女性にほかの適職があるかと言えば思いつかないのであるが。

「ねえ。話の流れからすると、ぼくはバーバラの後ろ盾につくようにお願いされるんだよね。せっかく助けてもらったから恩には報いたいのだけど……」

 ウィルが心底困ったようにそう切り出すと、イングリッドは苦笑を浮かべた。

「わたしはレノスでバーバラと合流するつもりでして、もしよろしければバーバラに会ってやっていただけませんか? それでさきほどの一件は貸し借りなしで大丈夫です」

 うまく持ち出されてしまった。それで断れなくなった。

「うーん。色よい返事をできるとは限らないよ」

 ロゼからは何も求められていないが、ロゼに決定的に不利になる提案には応じられそうにない。

「それで構いません。会ってさえいただけるなら」

「一応、こちらも血の繋がった妹ではないと教えてあげたしね。重要な情報でしょ。あれ?」

 ウィルは、一応そう言い添える。
 それにイングリッドがいなくても最悪ソフィアがなんとかしていたはずなのだ。おそらくは。

「ならば、こちらの借りのほうが大きくなりますか。もしよろしければ、レノスに滞在中の護衛を務めさせていただきますが……? 失礼ながら、人手が不足しているご様子ですし」

「え! すごく助かるのだけど、本当にいいの?」

 ウィルは素直に破顔した。
 人手が増えるに越したことはない。
 それに、シャルロッテ女学院から女中をスカウトしてくるようトリスに言われているというのもある。
 ウィルの護衛が務まるほどの女は、喉から手が出るほど欲しい。人となりを観察するのも良いかもしれない。

「はい。マルク家ほどの大貴族に貸しを作れる機会を逃すはずがありません」

 イングリッドはそう言って微笑んだのであった。

          ☆

 女中たちの見送りに昔を思い出したのか、それとも船が揺り籠のように波に揺れていたためだろうか。
 護衛についたイングリッドに気をつかって一人で寝たせいもあるかもしれない。
 とにかく、その晩、幼いころの夢を見た。

「ウィル坊ちゃま。お誕生日にはなにが欲しいですか?」

 幼いウィルの頭を撫でながら、そう尋ねてきたのは乳母(ナニー)のトリスである。
 たしかこう答えた気がする。

「妹か弟がほしい」

 筋書きの決まった物語のように、夢の中でもウィルはそう言った。
 まだマイヤが屋敷に来ていないころだ。

「ようございますとも!」

 トリスは、ウィルの無茶な要求にあっさりと頷いた。
 乳母と言えば、幼児を甘やかして、周囲の使用人と軋轢を生むと相場が決まっている。
 周囲をどうやって説得したかは分からない。
 次の日、屋敷にロゼという名前の少女が連れてこられた。
 長い黒髪に円らな瞳。自分よりも小さな背。自分よりも細く短い四肢。愛らしい人形のようだった。
 そしてまだ刷り込みの完了していない動物のように、きょとんとウィルのことを見上げていた。

(か、かわいい!)

 ウィルは一発でロゼのことが気に入った。

「いいかい。今日からロゼはぼくの妹だよ」

 そう言って、ロゼのことをぎゅっと抱きしめた。
 抱きしめたとき、ウィルはロゼが震えていたことに気がついた。
 慣れない場所に連れてこられて怖かったのだろう。
 やがて少女の震えが止まると、少女の細い腕がウィルの背中に回された。

「お兄様。ウィルお兄様!」

 頭の良いロゼはたちどころに自分の役割を理解し、完璧に受け入れた。
 すぐにウィルとロゼは打ち解けた。

「ロゼって、両側で髪を結わえるのが一番可愛いよね」

 ロゼの両耳のうしろあたりで長い黒髪を結わえながら言うと、ロゼは瞳を輝かせた。
 小さな頭にぴんと張った黒髪の分け目の愛らしさがたまらない。
 以来、ずっとその髪型である。
 どこに行くのもロゼと一緒だった。

「お兄様、お散歩に行きましょう」

「うん。いいよ」

「お兄様、お医者様ごっごをしましょう」

「うん。いいよ」

「お兄様、一緒にお風呂に入りましょう」

「うん。いいよ」

「お兄様、一緒にお布団に入りましょう。ちょっと! トリスお姉様、どうしてわたしの邪魔をするの!」

「いい加減になさい! ウィル坊ちゃまに添い寝をするのは乳母の仕事です」

 ウィルは、実の妹以上にロゼを可愛がり、ロゼは実の兄以上にウィルを慕い続けた。
 幼い時分に、ロゼがウィルのことをどこまで異性として意識していたかは分からない。
 だが、ウィルのほうはロゼのことを血を分けた妹であると思い込もうとしていた。
 血の繋がった伯爵はずっと王都にいるし、実の母親はすでに死産している。
 ロゼの「お兄様」という呼びかけが何よりも心地よかった。
 血の繋がりに代わるものが欲しかったのだ。
 その思い込みは、育児室(ナーサリー・ルーム)にいる間は、完璧に機能した。
 今度はウィルが「友だちがほしい」とねだり、マイヤがやってくるまで、ロゼはウィルのたった一人の同年代の遊び相手だった。
 マイヤが来て以降も、ロゼはウィルの妹の地位を保ち続けた。
 やがて、屋敷に来た女家庭教師(ガヴァネス)が、ロゼが乳母の妹でしかない事実を指摘する。

「わたくしはお坊ちゃまの指導をするために雇われたのです。乳母の妹の面倒まで見ることはできません。ふん。十五も歳の離れた乳母の妹とはね」

 余計な憶測まで口にしかけていたが、正論ではあった。
 家庭教師は、知識、情熱ともに申し分のない、三十半ばの独身女性であった。
 だが、惜しむらくは乳母のトリスにとって目障りな存在であり、トリスの能力と政治力が家庭教師を完全に凌駕していたのである。

「あまりウィル坊ちゃまに間違った知識を教えないようにしてください」

 ほんのささいな知識の重箱の隅を毎日きっちり突つかれ、

「あの家庭教師、またトリス様に間違いを指摘されていたわよ」

ときには容赦なく女中たちのまえで晒し者にされた。
 シャルロッテ女学院で、政治闘争を勝ち抜き、女王蜂として君臨したトリスの敵ではなかった。
 家庭教師は一年も保たずノイローゼになり、退職した。
 それは、ちょうどトリスの乳母として任期が切れる頃合いで、ウィルの乳母は、気がついたときには家庭教師へと立場を変えていた。

          ☆

 翌朝、レノスの港についた

「おお! 大地が揺れないのは素晴らしい」

 ソフィアはしゃがみ込んで、船着き場の石畳をぺたぺたと触っている。

「大げさだなあ」

 ウィルはそう苦笑をした。
 よほどソフィアと船は相性が悪いらしい。

「運べなくはないが、こ、これは随分と重いですね」

 イングリッドは布に包まれた長い棒状のものを天秤のように肩に担いでいる。

「あ、ごめん。イングリッド。一人で重い荷物を持たせてしまって」

「それは構いませんが……。これは六尺棒(クォータースタッフ)ですか?」

 長身のイングリッドが不思議そうに首を傾げた。
 たしかに長さ的には六尺棒くらいだろう。
 イングリッドが両手を左右に伸ばしたくらいの長さがある。

「すまん。もう回復した。それはわたしの得物だ」

 ソフィアはすくっと立ち上がった。
 軽やかな足取りでイングリッドの担いだ棒の端を掴むと、そのまま手首で持ち上げた。
 そのまま釣り竿でも振るように、ひゅんと半回転させて自分の肩の上に担ぎ直したのだ。

「うそ!」

 イングリッドが目を丸くしていた。
 少女の細腕が、大の男を何人もなぎ倒せそうな動きをしたのである。

「あっ。昨日の……」

 そのとき、こちらを向いていたマイヤが大きく瞳を見開いた。
 ウィルが後ろを振り向くと、熊のような巨漢の大男がのっしのっしとこちらに歩いてくるところであった。
 腰には大木でも切り倒せそうな大きな斧を下げている。
 昨日の仕返しであろうか。
 すぐさまイングリッドが盾になるようウィルのまえに立つ。

「まあ、待て。ここはわたしに花をもたせろ」

 ソフィアはそう笑って、片手で長い六尺棒をぎゅっと握りしめ、獰猛な笑みを浮かべた。

「船の上では、迷惑ばかりかけていたからな。護衛失格だ」

 一応、その自覚はあったらしい。
 大男は、ついにソフィアの目の前までやってきた。
 こうして見比べると、体格差が凄まじい。
 ソフィアは男の鳩尾の高さくらいまでしかない。

「何用だ?」

 ソフィアは顎を上げて、大して動揺した様子も見せずにそう問いかけた。
 ウィルは、そんなソフィアに信頼をおいている。すぐにソフィアが大男をたたき伏せるだろうなと想像した。
 瞬きをするかしないかの次の瞬間、大男の巨体が前のめりになってばたりと地面に倒れた伏していた。

(あれ……? もう決着がついたの?)

 まったく何をしたか分からなかった。
 動きが速すぎて、ウィルの動体視力では捉え切れなかったのか。

「昨日は迷惑をかけてすんませんでした!」

「おわっ!」

 突如、地を這うような大声が響いてきて、びっくりした。
 大男が、地面に両手をついて、大きな身体を精一杯縮こまらせて、土下座をしているのだ。

(あ、自分から両手をついたのね……)

「昨日は、せがれが迷惑をかけたそうで悪かったね」

 ソフィアとそう体格の変わらない枯れ木のような老婆が大男の後ろから現れ、ぴしゃりと大男の頭を叩いた。
 最初から大男の後ろについて歩いていたらしい。

「普段は真面目な木こりなんだけど、酔っぱらったときだけはどうにも手に負えなくてね」

「オラ、昨日何をしたかも記憶がなくて」

 木こりはそう言って顔を上げる。
 だが、ソフィアと目が合うと、すぐに泳がせるように視線を外した。

「せがれは女とまともに目を合わせることもできないくらい内気でね。こんなんでも嫁を捕まえられるといいのだけど」

 老婆は白髪を掻きながら、愚痴るようにそう言った。

「早くオラにも嫁が見つかるといいなあ」

 土下座をしながら、大男がのんびりとした口調でそう言った。
 ウィルは、ふと気になった素朴な疑問を発した。

「嫁? 昨日、尻を貸せって言われたのだけど、あれは冗談……」

 すると、傍目に分かるくらい木こりの表情が真っ青に変わった。

「お、おまえ! 女に相手にされないからって、こんないたいけな男の子にまで……」

(さすがにいたいけな男の子という表現は傷つくなあ)

 ちょっとウィルはそんなふうに思った。

「お、男の子もいいかな、なんて……はは」

「情けない。母ちゃん、こんな情けない思いをしたのは初めてだよ。もうおまえなんか死ね。いますぐ死ね。死んでしまえ!」

「痛い。痛い。ゴメン! 本当にごめんよ!」

 木こりの顔を老婆ががつがつと容赦なく蹴りつけている。

「行こっか」

 マイヤがそう声をかけた。
 ウィルも同意だった。

「戦士の出番はないのか!?」

 ソフィアが哀しそうに言う。

「バーバラのもとにご案内します」

 長身のイングリッドがこちらを振り向いて、そう声をかけてきた。
 ウィルも同意であった。
 少しだけ寄り道をしなければならない。
 木こりの家庭事情にはこれ以上関わっていられない。

「ソフィア? 可哀想だから、もう痛めつけたらダメだよ」 

 活躍の機会を奪われたソフィアが、あうあうと名残惜しそうに大男のほうを指さしていた。


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