福島第１原発事故により放射性物質濃度が高まり、再利用できなくなった下水汚泥の減容化施設（焼却炉）が県中浄化センター（郡山市日和田町）に完成し、３０日に落成式が開かれた。順調に稼働すれば、センター内にある１キロ当たり８０００ベクレル超の下水汚泥約１万１０００トンと、それを覆う土壌約４０００トンの計１万５０００トンが来年３月末までに焼却される。だがセンターには同８０００ベクレル以下の汚泥１万３０００トンの引き取り手がなく、悪臭を放つ山積みの汚泥袋が消えるのはまだ先になりそうだ。

　施工・運営に当たる神戸製鋼所によると、今回落成した焼却炉は円筒形（直径５メートル、高さ２０メートル）。汚泥を８５０度の高熱で焼却して残った灰にする。排ガスに含まれる放射性セシウムは冷却器やバグフィルターでほぼ除去できるという。総工費は約５０億〜６０億円で、１万５０００トンを処理する来春までの運営費は約４０億円を要する。

　同センターでは、郡山、須賀川、本宮など５市町の生活排水と雨水を脱水し、１日当たり８０トンの汚泥が生じている。うち７０トンはもとからある焼却炉（溶融施設）で３０分の１に減量しているが、残りの１０トンは周辺の敷地（２万平方メートル）に袋詰めされたまま保管されている。

　落成式に出席した井上信治副環境相は、処理対象外の汚泥について「（管理者の）県と協議しているが、具体的な結論は出ていない。まずは今年度中に予定の汚泥を焼却する」と述べるにとどめた。【藤原章生】